相続税はいくらからかかるの?知っておきたい相続税の基礎知識について
“家族”に関するねだんのこと
2022.02.24
遺産を相続する際に課税される相続税。仕組みや計算方法を正しく理解できている方は少ないのではないでしょうか。
平成27年の相続税の基礎控除の改正により、相続税の課税対象となる方が増加しています。
ここでは、相続財産の考え方、相続税の計算方法など、相続税の基礎についてご紹介していきます。
この記事を読むと分かること
- 相続税と贈与税の違い
- 相続税の対象となる財産、ならない財産
- 相続税の計算方法や納付方法
見出し
相続税とは
相続税とは、亡くなった方(被相続人)から相続人が受取る遺産が一定額以上の場合に発生する税金のことをいいます。一定額に満たない場合、相続税の課税対象にはなりません。
相続税が発生するかどうかは、相続税の基礎控除額を基準として判断されます。平成27年には相続税の基礎控除額が改正され、相続税がかかる金額の基準が引き下げられました。
そのため、相続税の課税対象となる人の数が平成26年までの約5.6万人から、約10.3万人へと約84%増加しました。令和元年時点では約11.5万人となっています。
贈与税との違い
相続税に似ているものとして贈与税がありますが、その違いについてご紹介します。
贈与税とは、贈与する方から財産をもらったときにかかる税金のことをいいます。相続税と贈与税の違いは、相続税が被相続人の死亡によって発生するものに対して、贈与税は贈与する方と受取る方の合意によって発生する違いがあります。
また相続は、配偶者や血縁関係がある方の間でおこなうのが基本で、贈与は特に関係ありません。さらに税率は、相続税よりも贈与税の方が高いという違いがあります。
相続税はどんなときにかかる?
相続税の基礎控除額の改正によって課税対象者が増えたことはお伝えしました。ではとのようなときに相続税がかかるのかと、気になる方も多いと思います。
相続税の対象となる財産とならない財産、それにともなって相続税申告が必要となるケースについてご紹介していきます。
相続税の対象となる財産、ならない財産
相続税には相続税の対象となる財産とならない財産があります。
相続税の対象となる財産には、本来の相続財産に加えて、みなし相続財産も対象です。
みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上の相続財産とみなして課税する財産のことをいいます。民法上の相続財産と相続税法上の相続財産の違いがあるため注意しましょう。
相続税の対象となる主な財産は次のとおりです。
本来の相続財産 例 | |
---|---|
不動産 | 土地、家屋、建物、店舗、借地権、借家権、農地 など |
動産 | 自動車、家財、宝石、美術品 など |
金融資産 | 現金、預貯金、株、貸付金、売掛金 など |
権利 | ゴルフ会員権、特許権、著作権 など |
負債 | 借入金、住宅ローン、買掛金 など |
未払金 | 所得税、住民税、水道光熱費、家賃、医療費、葬儀費用 など |
本来の相続財産 例 | |
---|---|
不動産 | 土地、家屋、建物、店舗、借地権、借家権、農地 など |
動産 | 自動車、家財、宝石、美術品 など |
金融資産 | 現金、預貯金、株、貸付金、売掛金 など |
権利 | ゴルフ会員権、特許権、著作権 など |
負債 | 借入金、住宅ローン、買掛金 など |
未払金 | 所得税、住民税、水道光熱費、家賃、医療費、葬儀費用 など |
みなし相続財産 例 | |
---|---|
死亡退職金 | 就業規則によって相続人受取り対象の退職金 |
死亡保険金 | 生命保険の契約者と被保険者が被相続人の場合の死亡保険金 |
贈与財産 | 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産 被相続人が亡くなる前3年以内の贈与財産 など |
みなし相続財産 例 | |
---|---|
死亡退職金 | 就業規則によって相続人受取り対象の退職金 |
死亡保険金 | 生命保険の契約者と被保険者が被相続人の場合の死亡保険金 |
贈与財産 | 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産 被相続人が亡くなる前3年以内の贈与財産 など |
相続税の対象とならない主な財産は次のとおりです。
非課税相続財産 例 | |
---|---|
礼拝対象財産 | 墓地、仏壇、仏具、祭壇 など (純金製など高価なものは課税対象の可能性あり) |
死亡退職金の一部 | 死亡退職金のうち非課税枠分 |
死亡保険金の一部 | 死亡保険金のうち非課税枠分 |
その他 | 国や地方公共団体へ寄付した財産 公益目的事業用財産 など |
非課税相続財産 例 | |
---|---|
礼拝対象財産 | 墓地、仏壇、仏具、祭壇 など (純金製など高価なものは課税対象の可能性あり) |
死亡退職金の一部 | 死亡退職金のうち非課税枠分 |
死亡保険金の一部 | 死亡保険金のうち非課税枠分 |
その他 | 国や地方公共団体へ寄付した財産 公益目的事業用財産 など |
相続税申告が必要となるケース
相続税申告が必要となるケースの基準は、相続税の基礎控除額です。
相続税申告を確認するうえで、本来の相続財産とみなし相続財産すべてを加算した遺産総額と相続税の基礎控除額を比較して、基礎控除額以内であれば申告の必要がありません。しかし、遺産総額が基礎控除額を超えるようであれば相続税の課税対象となるため、相続税の申告をしなければいけません。
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除とは、相続税の申告をおこなううえでの納税ラインであり、非課税枠になります。相続税の基礎控除額の計算式は次のとおりです。
3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) = 相続税の基礎控除額
基礎控除額の計算方法
相続税の基礎控除額の計算式をお伝えしたので、実際に計算をしてみましょう。
法定相続人が1名の場合
3000万円 + (600万円 × 1名) = 3600万円
この3600万円が相続税の基礎控除額の最低金額となるため、遺産総額が3600万円を超える方が相続税の課税対象となります。
法定相続人が3名の場合
3000万円 + (600万円 × 3名) = 4800万円
このように法定相続人の数によって相続税の基礎控除額が変わります。
法定相続人とは
法定相続人とは、民法で定められた相続する権利のある人です。法定相続人は、配偶者が必ず相続人となり、続いて血縁者です。
相続人の範囲
相続人の範囲は次の順位で配偶者とともに相続人となります。
第1順位:配偶者と子ども
もし子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもの直系卑属つまり孫が相続人です。
第2順位:配偶者と父母
もし父母が先に亡くなっており、その父母の直系尊属つまり祖父母がいれば相続人です。
第3順位:配偶者と兄弟姉妹
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、甥や姪が相続人です。
相続人の範囲は、第1順位から始まり、第1順位がいなければ第2順位、第2順位がいなければ第3順位となります。
また相続放棄した方は初めから相続人ではなかったものとされます。
法定相続分
法定相続分とは、民法上に定められた相続の取り分です。相続の順位によって取り分が変わります。
第1順位:配偶者と子ども
配偶者 1/2
子ども 1/2(2人以上のときは全員で均等割)
第2順位:配偶者と父母
配偶者 2/3
父母 1/3(2人のときは全員で均等割)
第3順位:配偶者と兄弟姉妹
配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4(2人以上のときは全員で均等割)
相続人の間で遺産分割の合意ができれば必ずしも法定相続分で遺産分割しなければならないわけではありません。
遺留分
遺留分とは、一定範囲の法定相続人に認められた遺産の一定割合の留保分をいいます。もし遺言書において、法定相続人とは関係ない別の人に遺産のすべてを渡すと作成していた場合、法定相続人から遺留分として一定割合の遺産分を請求されることがあります。これを遺留分侵害額請求といいます。なお令和元年7月1日より前は、遺留分減殺請求と呼ばれていました。
遺留分は、法定相続人のうち第3順位が対象外です。
第1順位:配偶者と子ども
配偶者 1/4
子ども 1/4(2人以上のときは全員で均等割)
第2順位:配偶者と父母
配偶者 1/3
父母 1/6(2人のときは全員で均等割)
なお相続放棄などした場合、遺留分の権利は認められません。
相続税額の計算方法
各相続人の相続税額は以下の計算式で算出されます。
相続税額 = 相続税の総額 × (各相続人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額)
それぞれの算出方法について詳しく見ていきましょう。
今回の算出例における、故人の財産と財産評価額は次のとおりです。
故人の財産 | 財産評価額 |
---|---|
現金 | 200万円 |
預貯金 | 1000万円 |
不動産 | 6000万円 |
死亡保険金 | 3000万円 |
死亡退職金 | 500万円 |
借金 | 800万円 |
葬儀費用 | 200万円 |
故人の財産 | 財産評価額 |
---|---|
現金 | 200万円 |
預貯金 | 1000万円 |
不動産 | 6000万円 |
死亡保険金 | 3000万円 |
死亡退職金 | 500万円 |
借金 | 800万円 |
葬儀費用 | 200万円 |
遺産分割内容としては次のとおりです。
各相続人 | 遺産分割内容 |
---|---|
配偶者 | 不動産:6000万円 × 2/3 = 4000万円 預貯金:500万円 借金・葬儀費用:1000万円 |
長男 | 不動産:6000万円 × 1/3 = 2000万円 |
次男 | 死亡保険金:3000万円 |
長女 | 現金:200万円 預貯金:500万円 死亡退職金:500万円 |
各相続人 | 遺産分割内容 |
---|---|
配偶者 | 不動産:6000万円 × 2/3 = 4000万円 預貯金:500万円 借金・葬儀費用:1000万円 |
長男 | 不動産:6000万円 × 1/3 = 2000万円 |
次男 | 死亡保険金:3000万円 |
長女 | 現金:200万円 預貯金:500万円 死亡退職金:500万円 |
課税価格の合計額の計算
課税価格の合計額を計算していきましょう。
項目 | 合計額 |
---|---|
現金・預貯金・不動産の合計額 | 200万円 + 1000万円 + 6000万円 = 7200万円 |
+ | |
死亡保険金の課税価格 | 死亡保険金:3000万円 – 非課税枠:2000万円 = 1000万円 |
+ | |
死亡退職金の課税価格 | 死亡保険金:500万円 – 非課税枠:2000万円 = 0円 |
– | |
マイナス財産の合計価格 | 800万円 + 200万円 = 1000万円 |
= | |
課税価格の合計額 | 7200万円 |
項目 | 合計額 |
---|---|
現金・預貯金・不動産の合計額 | 200万円 + 1000万円 + 6000万円 = 7200万円 |
+ | |
死亡保険金の課税価格 | 死亡保険金:3000万円 – 非課税枠:2000万円 = 1000万円 |
+ | |
死亡退職金の課税価格 | 死亡保険金:500万円 – 非課税枠:2000万円 = 0円 |
– | |
マイナス財産の合計価格 | 800万円 + 200万円 = 1000万円 |
= | |
課税価格の合計額 | 7200万円 |
非課税枠の計算
死亡保険金の非課税枠:500万円×法定相続人4人=2000万円
死亡退職金は非課税枠以下のため課税されません。
マイナス財産
債務や葬儀費用といったものをマイナス財産といいます。マイナス財産は課税価格から差引くことができます。
各人の課税価格
課税価格の合計額と合わせて各人の課税価格も計算しておきましょう。
各相続人 | 各人の課税価格 |
---|---|
配偶者 | 不動産:4000万円 + 預貯金:500万円 – 借金・葬儀費用:1000万円 = 3500万円 |
長男 | 不動産:2000万円 = 2000万円 |
次男 | 死亡保険金:3000万円 – 非課税枠:2000万円 = 1000万円 |
長女 | 現金:200万円 + 預貯金:500万円 + (死亡退職金:500万円 – 非課税枠:500万円) = 700万円 |
各相続人 | 各人の課税価格 |
---|---|
配偶者 | 不動産:4000万円 + 預貯金:500万円 – 借金・葬儀費用:1000万円 = 3500万円 |
長男 | 不動産:2000万円 = 2000万円 |
次男 | 死亡保険金:3000万円 – 非課税枠:2000万円 = 1000万円 |
長女 | 現金:200万円 + 預貯金:500万円 + (死亡退職金:500万円 – 非課税枠:500万円) = 700万円 |
課税遺産総額の計算
課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を引いて課税遺産総額を計算していきます。
項目 | 合計額 |
---|---|
課税価格の合計額 | 7200万円 |
– | |
相続税の基礎控除額 | 3000万円 + (600万円 × 法定相続人4人) = 5400万円 |
= | |
課税遺産総額 | 1800万円 |
項目 | 合計額 |
---|---|
課税価格の合計額 | 7200万円 |
– | |
相続税の基礎控除額 | 3000万円 + (600万円 × 法定相続人4人) = 5400万円 |
= | |
課税遺産総額 | 1800万円 |
相続税の総額の計算
課税遺産総額を算出しました。続いて相続税の総額を計算していきましょう。
課税遺産総額が1800万円となるため、その総額から各人の法定相続分を算出します。その後相続税の税率を掛けて計算します。
法定相続分 | 仮の相続税額 |
---|---|
配偶者 1/2 900万円 | 900万円 × 10% = 90万円 |
+ | |
長男 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
+ | |
次男 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
+ | |
長女 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
= | |
相続税の総額 | 180万円 |
法定相続分 | 仮の相続税額 |
---|---|
配偶者 1/2 900万円 | 900万円 × 10% = 90万円 |
+ | |
長男 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
+ | |
次男 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
+ | |
長女 1/6 300万円 | 300万円 × 10% = 30万円 |
= | |
相続税の総額 | 180万円 |
相続税の税率と控除額
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | – |
1000万円超~3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超~ | 55% | 7200万円 |
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | – |
1000万円超~3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超~ | 55% | 7200万円 |
各人の納付税額の計算
相続税総額を算出しました。続いて各人の相続税額を計算していきましょう。
各相続人の相続税額を計算していくには、
相続税総額×各人の課税価格÷課税価格の合計額で計算をします。
各相続人 | 各人の相続税額 |
---|---|
配偶者 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:3500万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 87.5万円 |
長男 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:2000万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 50万円 |
次男 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:1000万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 25万円 |
長女 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:700万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 17.5万円 |
各相続人 | 各人の相続税額 |
---|---|
配偶者 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:3500万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 87.5万円 |
長男 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:2000万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 50万円 |
次男 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:1000万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 25万円 |
長女 | 相続税総額:180万円 × 各人の課税価格:700万円 ÷ 課税価格の合計額:7200万円 = 17.5万円 |
配偶者には、配偶者控除という相続税の税額控除があります。配偶者控除は、法定相続分または1億6000万円までは相続税がかかりません。そのため納付税額は、87.5万円が0円になります。
長男、次男、長女の納付税額は変わりません。
相続税額から控除されるもの
相続税には税額控除があります。税額控除は6つあるためそれぞれご紹介します。
配偶者控除
配偶者控除とは、配偶者が取得した正味遺産額のうち次の金額の多いほうの金額分を控除します。
配偶者控除額(1億6000万円)または配偶者の法定相続分相当額
未成年者控除
未成年者控除とは、相続人が未成年者の場合、相続税額から一定の金額を控除します。
未成年者控除額 = 10万円 × 未成年者が満20歳になるまでの年数
令和4年4月1日以降は20歳を18歳に変更して計算することになります。
障害者控除
障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者の場合、相続税額から一定の金額を控除します。
障害者控除額 = (85歳 – 相続開始日の年齢) × 10万円(特別障害者は20万円)
その他の控除
その他の控除として相似相続控除、贈与税額控除、外国税額控除があります。
相似相続控除
相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合、相続税額から一定の金額を控除します。
贈与税額控除
贈与には、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの課税方法があります。どちらの場合も相続を受ける以前に贈与を受け、贈与税を支払っていた場合、その贈与分を控除できます。
外国税額控除
国外にある財産を相続で取得し、すでに外国で相続税などを支払っている場合、相続税額から一定の金額を控除します。
相続税の納付方法
相続税の納付方法は、現金一括納付が原則です。現金で支払えない場合、延納や物納の要件を満たすことで利用ができます。
延納・物納
相続税の納付を現金で納付できない場合に、延納と物納の方法があります。
相続税の延納とは、相続税を分割して支払う制度です。相続財産に不動産などが多く現金が少ない場合で、不動産売却に時間がかかる際に延納制度を検討することになります。
相続税の延納をするには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 相続税の金額が10万円を超えている
- 現金納付が難しい理由
- 相続財産の現金納付が難しい金額であること
- 相続税納付期限までに必要書類の提出
- 延納税額や利子税税額に相当する担保の提供
相続税の物納とは、延納によっても現金納付が難しく、その現金納付が難しい金額である場合、一定の相続財産による物納が認められています。その場合は、相続税納付期限までに必要書類を提出しなければいけません。
物納できる財産の順位が定められており納税者で選択ができるわけではなく次のような順位になっています。
第1順位:国債、地方債、上場株式等、不動産、船舶
第2順位:非上場株式等
第3順位:動産
このように延納や物納について、納税者が選択できるわけではありません。現在不動産を多く持っており、現金が少ない場合、相続人のために生前のうちから現金を用意できるとよいでしょう。
相続税の申告・納付期間
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。また相続税の納付期限も申告期限と同様となります。
例えば、1月10日に家族が亡くなり、そのことをその日に知った場合、11月10日までです。
相続税の申告期限ぎりぎりに申告すると納付までおこなうのが難しくなってしまいます。もし相続財産が多いようであれば生前のうちに財産目録の作成をおこなっておくとよいでしょう。また申告期限や納付期限を超えてしまうと無申告加算税や延滞税といった罰金が発生するため、注意が必要です。
相続税に関して押さえておきたいポイント
相続税に関して押さえておきたいポイントとして4つご紹介します。
生命保険(共済)の非課税枠
生命保険の死亡保険金は、民法では相続財産ではありませんが、相続税法ではみなし相続財産として相続税の課税対象となります。しかし非課税枠があります。
生命保険の死亡保険金の非課税枠の計算式
500万円 × 法定相続人の数 = 死亡保険金の非課税枠
法定相続人の数が3人で、死亡保険金が3000万円の場合を計算すると、
500万円 × 3名 = 1500万円(死亡保険金の非課税枠)
3000万円(死亡保険金) – 1500万円(死亡保険金の非課税枠) = 1500万円
みなし相続財産として課税対象になる金額は1500万円です。
もし死亡保険金ではなく現金3000万円だった場合、3000万円が課税対象の相続財産となります。非課税枠を利用することで課税対象額を減額することができるため相続税の節税対策として活用するとよいでしょう。
死亡退職金の非課税枠
会社において死亡退職金が支給される場合、生命保険と同様に民法上の相続財産ではありませんが、相続税法のみなし相続財産として相続税の課税対象となります。しかし非課税枠があります。
死亡退職金の非課税枠の計算式
500万円 × 法定相続人の数 = 死亡退職金の非課税枠
法定相続人の数が2人で、死亡退職金が1500万円の場合を計算すると、
500万円 × 2名 = 1000万円(死亡退職金の非課税枠)
1500万円(死亡退職金) – 1000万円(死亡退職金の非課税枠) = 500万円
みなし相続財産として課税対象になる金額は500万円です。
会社において死亡退職金がある場合、非課税枠があることを覚えておくとよいでしょう。
小規模宅地の特例
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすことで土地の相続税評価額を最大80%まで減額ができる制度です。特例の対象となる土地は、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等の3種類です。
● 特定居住用宅地等
住宅として使われていた土地のことです。
● 特定事業用宅地等
事業で使われていた土地のことです。
● 貸付事業用宅地等
土地を第三者に貸すなど不動産貸付業や駐車場などに使われていた土地のことです。
以上のご紹介した土地を保有することで、相続税評価額の減額になるため節税効果があります。
生前贈与の活用
生前贈与の活用方法として、暦年課税制度と相続時精算課税制度を活用した相続税の軽減対策があります。
暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に受取った財産の合計額が110万円を超えた場合、その超えた分に贈与税が課税されるという制度です。ただし、被相続人が亡くなる前3年以内の贈与に関しては、みなし相続財産とされ、相続税が課税されてしまいます。
相続時精算課税制度は、60歳以上の親などから20歳以上の子どもなどへ贈与する場合に選択ができます。相続時精算課税を選択すると合計2500万円までの贈与に対して贈与税がかかりません。ただし、相続時に贈与された分に対して相続税が課税されることになります。
まとめ
相続税が発生する金額の目安や相続税の基礎、押さえておきたいポイントなどを解説してきました。
相続税の基礎控除額の改正によって多くの方が相続税を支払う対象になりました。特に一般の家庭で持ち家を持っている方も対象となる可能性があります。
生前のうちに、自分自身が亡くなったときに実際に相続税がかかるかを確認し、あらかじめ財産目録を作成して、相続税の計算などをおこなってみましょう。またもし相続税が発生することがわかったら、生命保険の非課税枠の活用や生前贈与を用いた方法など、相続税対策をおこなっておくとよいでしょう。