先進医療特約はいらない?必要性や対象の治療について
“病気”に関するねだんのこと
2024.12.23
先進医療特約とは、公的医療保険の対象外である先進医療を受けた際に、治療費や検査費などの費用を保障する特約です。先進医療の費用は全額自己負担であり、高額な技術料がかかる治療もあるため、生命保険への先進医療特約の付帯を考えている方もいるのではないでしょうか。
今回は、先進医療特約の概要や、先進医療特約の必要性の有無、先進医療でかかる費用の例などを解説します。先進医療特約の付帯を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
本内容は、令和6年10月の制度等に基づき、記載しています。 本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問合せください。
見出し
先進医療特約とは?
先進医療とは、厚生労働省が認めた高度な医療技術であり、公的医療保険の対象にするかを評価する段階にある治療・手術のことです。
先進医療は公的医療保険の対象外であるため、治療や手術などに必要な費用は全額自己負担となります。
厚生労働省の「先進医療の各技術の概要」によると、令和6年9月1日時点で76種類の医療技術が先進医療の対象となっており、高額な費用がかかる治療もあります。
先進医療を受ける際の金銭面の負担を抑えるためには、先進医療特約を利用することが効果的です。先進医療特約は、生命保険に任意で追加することで、先進医療を受けた場合に保障を受けられるオプションです。特約を付帯することで、先進医療における技術料の自己負担額を軽減できます。
ただし、先進医療特約はあくまで医療保険やがん保険に付帯する商品のため、単体での契約はできない点に注意してください。
先進医療特約がいらないとされる理由
先進医療特約は、先進医療を受ける際の自己負担額を軽減できますが、不要といわれる側面もあります。ここでは、先進医療特約がいらないとされる理由を紹介します。
先進医療を受ける可能性が低いから
先進医療特約がいらないといわれる理由として、先進医療を受ける可能性が低いことが挙げられます。
例えば、厚生労働省の「令和5年6月30日時点における先進医療に係る費用」によると、令和5年度(令和4年7月1日〜令和5年6月30日)に、がん治療で使用される先進医療の「重粒子治療」が実施された件数は年間462件、「陽子線治療」は年間824件です。がん患者数は約100万人といわれており、どちらの先進治療においても実施率は0.1%にも満たない割合となっています。
このように、先進医療を受ける割合が低いことから、先進医療特約を付帯しても活用する可能性が限りなく低いことが考えられます。
先進医療を受けるハードルが高いから
先進医療を受けるハードルが高いことも、先進医療特約が不要といわれる理由として挙げられます。なぜなら、先進医療はすべての医療機関で実施できるわけではなく、治療方法ごとに定められた一定の基準に達している医療機関でしかおこなえないからです。
例えば、厚生労働省の「先進医療を実施している医療機関の一覧」によると、令和6年10月1日時点で、重粒子治療が実施可能な医療機関は7箇所、陽子線治療をおこなえる医療機関は20箇所に限られています。
そのため、お住まいの地域によっては、治療を受ける際の時間や交通費の負担が大きくなるため、気軽に先進医療を受けられない場合があります。
先進医療特約が必要な理由
次に、先進医療特約が必要といわれる理由を紹介します。
先進医療の治療費は全額自己負担だから
先進医療の技術料は公的医療保険の対象外であり、全額自己負担となることが先進医療特約が必要といわれる理由として挙げられます。
例えば、陽子線治療では治療1回あたり約300万円が必要ですが、すぐに高額な費用を支払えない方も多いことでしょう。その際に、先進医療特約を付帯しておくことで先進医療の治療費が保障されるため、負担を軽減しながら治療を受けられます。
先進医療の実施件数は増加傾向にあるから
先進医療の実施件数が増加傾向にあることも、先進医療特約が必要とされる理由として挙げられます。厚生労働省の「令和5年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、過去5年間の先進医療の実施件数の推移は、以下のとおりです。
年度 | 実施報告対象期間 | 全患者数 |
---|---|---|
令和元年度 | 平成30年7月1日〜令和元年6月30日 | 39,178人 |
令和2年度 | 令和元年7月1日〜令和2年6月30日 | 5,459人 |
令和3年度 | 令和2年7月1日〜令和3年6月30日 | 5,843人 |
令和4年度 | 令和3年7月1日〜令和4年6月30日 | 26,556人 |
令和5年度 | 令和4年7月1日〜令和5年6月30日 | 144,282人 |
年度 | 実施報告対象期間 | 全患者数 |
---|---|---|
令和元年度 | 平成30年7月1日〜令和元年6月30日 | 39,178人 |
令和2年度 | 令和元年7月1日〜令和2年6月30日 | 5,459人 |
令和3年度 | 令和2年7月1日〜令和3年6月30日 | 5,843人 |
令和4年度 | 令和3年7月1日〜令和4年6月30日 | 26,556人 |
令和5年度 | 令和4年7月1日〜令和5年6月30日 | 144,282人 |
先進医療を受けた患者数は、令和元年度の39,178人から令和2年度・令和3年度は5,000人台と低下しています。しかし、令和4年度は2万人を超え、令和5年度は15万人近くの方が先進医療による治療や検査などを受けており、大幅に実施件数が伸びていることがわかるでしょう。
これには、不妊治療関連技術が先進医療に加わったことが大きく影響していると考えられます。例えば、厚生労働省の「先進医療の実績」によると、令和5年度の「タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養」の実施件数は79,700件でした。これは、先進医療の実施数の半分以上の割合です。
先進医療の対象は随時見直されているため、今後、不妊治療関連技術以外にも新たに先進医療の対象が広がる可能性があります。そのため、現時点で先進医療を受ける可能性が低い方でも、先進医療を利用することが考えられ、先進医療特約が将来的に役立つ場面があるでしょう。
治療方法の選択肢を広げられるから
先進医療特約を付帯することで治療費が保障されるため、費用が高くてあきらめざるを得なかった治療でも受けやすくなります。
医療費の備えが心もとなく、もしもの病気に備えて治療方法の選択肢を広げておきたい方にとっては、先進医療特約の付帯が大きなメリットとなるでしょう。
先進医療特約の治療例とかかる費用の例
厚生労働省の「令和5年6月30日時点における先進医療に係る費用」によると、令和5年度(令和4年7月1日〜令和5年6月30日)に先進医療を受けた患者数は、国内で144,282人でした。
先進医療の治療例とそれぞれの必要な費用は、以下のとおりです。
技術名 | 対象 | 先進医療費総額 | 年間実施件数 | 1件あたりの技術料の平均額 |
---|---|---|---|---|
陽子線治療 | がん | 2,191,024,100円 | 824件 | 2,659,010円 |
重粒子治療 | がん | 1,448,673,000円 | 462件 | 3,135,656円 |
抗悪性腫瘍剤治療における 薬剤耐性遺伝子検査 |
がん | 845,267,482円 | 202件 | 4,184,492円 |
ウイルスに起因する難治性の 眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) |
眼前部疾患眼底疾患 | 23,750,337円 | 844件 | 28,140円 |
細胞診検体を用いた 遺伝子検査 |
がん | 22,707,204円 | 282件 | 80,522円 |
多項目迅速ウイルスPCR法による ウイルス感染症の早期診断 |
ウイルス感染症が疑われるもの | 2,219,923円 | 54件 | 41,109円 |
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び 十二指腸空腸バイパス術 |
重症肥満症 | 12,296,855円 | 17件 | 723,344円 |
子宮内膜刺激術 | 不妊症 | 703,775,157円 | 152件 | 4,630,100円 |
技術名 | 対象 | 先進医療費総額 | 年間実施件数 | 1件あたりの技術料の平均額 |
---|---|---|---|---|
陽子線治療 | がん | 2,191,024,100円 | 824件 | 2,659,010円 |
重粒子治療 | がん | 1,448,673,000円 | 462件 | 3,135,656円 |
抗悪性腫瘍剤治療における 薬剤耐性遺伝子検査 |
がん | 845,267,482円 | 202件 | 4,184,492円 |
ウイルスに起因する難治性の 眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) |
眼前部疾患眼底疾患 | 23,750,337円 | 844件 | 28,140円 |
細胞診検体を用いた 遺伝子検査 |
がん | 22,707,204円 | 282件 | 80,522円 |
多項目迅速ウイルスPCR法による ウイルス感染症の早期診断 |
ウイルス感染症が疑われるもの | 2,219,923円 | 54件 | 41,109円 |
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び 十二指腸空腸バイパス術 |
重症肥満症 | 12,296,855円 | 17件 | 723,344円 |
子宮内膜刺激術 | 不妊症 | 703,775,157円 | 152件 | 4,630,100円 |
先進医療の種類によって技術料は大きな違いがありますが、「陽子線治療」「重粒子治療」「抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査」のように、100万円以上の費用がかかる治療や検査もあります。
先進医療特約は月額数百円程度で付帯できるため、保険料を少額追加するだけで、このような高額な技術料の支払いを抑えられるメリットは大きいといえます。
先進医療特約の注意点
ここでは、先進医療特約の注意点を紹介します。注意点を十分に理解したうえで、先進医療特約の付帯の有無を考えましょう。
給付金に上限額がある
多くの保険会社では、先進医療特約の給付金の上限額が定められており、1,000万円または2,000万円が限度となっていることが一般的です。受け取った給付金が上限額に達すると特約は消滅するため、それ以降に先進医療を受けたとしても先進医療特約の保障はありません。
特に、高額な先進医療を複数受ける可能性がある方は、給付金の上限がいくらに設定されているかを十分に理解しておきましょう。
保障範囲が変更される可能性がある
先進医療として認定されている医療技術や医療機関は随時見直されており、保障範囲が変更される可能性があります。先進医療特約の保障対象となるのは、実際に治療や検査などを受けた時点で先進医療に該当している場合のみです。
そのため、先進医療特約を契約した時点で先進医療の対象となっている治療や検査でも、その後対象外となることで、給付金が受け取れなくなる可能性があります。
終身型と更新型がある
先進医療特約には、同一の保険料で一生涯保障が継続される「終身型」と、定期的に保険料が見直される「更新型」の2つがあります。
終身型は、契約時の特約保険料が変わらないため、負担が増えないことがメリットです。一方、更新型は10年おきに年齢や保険料率によって、医療保険特約の保険料が変更される可能性があります。
更新型が終身型の保険料を上回るか下回るかは予測できず、どちらの契約がお得になるかはわかりません。そのため、保険料を一定額で支払いたい方は終身型、定期的に料金を見直してほしい方は更新型といったように、自分に合った契約を選ぶことが重要です。
重複加入できない
先進医療特約は、一つの保険会社で重複加入できないことが一般的です。例えば、同じ保険会社で医療保険とがん保険に加入しており、先進医療特約を付帯したい場合は、どちらの保険に特約を付けるかを選ぶ必要があります。
なお、複数の保険会社を利用している方は、それぞれの保険会社ごとに先進医療特約を付帯できます。
ただし、先進医療を受けた際に、それぞれの保険会社に保険金を請求した場合は、保険金を2社からは受け取れないことが多いです。保険会社によって対応は異なりますので、先進医療特約を付帯する前に給付金の支払い条件などを確認しておきましょう。
先進医療保障付きのJA共済の医療共済
先進医療保障を付帯した医療保険(共済)への加入を検討しているものの、どの保険(共済)を利用すべきか迷われている方もいるのではないでしょうか。そのような方は、JA共済の「医療共済 メディフル」の利用がおすすめです。
「医療共済 メディフル」は、日帰り入院から一時金が受け取れるなど、保障の充実した医療保険(共済)です。一時金は、入院費用の備えとしてだけでなく、その前後の通院・在宅医療などにも活用できます。
先進医療の付帯にも対応しており、先進医療を受けた際に以下のような保障を提供しています。
- 先進医療共済金:1回あたり技術料相当額(通算2,000万円まで)
- 先進医療一時金:1回あたり先進医療共済金の額×10%(上限30万円)
また、健康祝金支払特則を付加することで、健康を維持した場合に健康祝金を受け取れるメリットもあります。JA共済の医療共済 「メディフル」について、詳しくはお近くのJAにご相談いただくか、または、下記の「メディフル」のバナーからご確認ください。