介護保険制度とは?対象となる疾病や受けられるサービスについて
“家族”に関するねだんのこと
2022.01.21
医療の目覚ましい進歩、少子高齢化の進展、或いは核家族化等の社会の変革が進み、介護問題はもはや家族だけでは解決できない問題です。
社会が一体となり支えるあうために、社会保障制度の一環として介護保険制度は制定されました。
40歳になったら加入義務がある介護保険制度ですが、40歳であればまだ働き盛りで介護の実感がないと思う人もいるかもしれません。
決して他人ごととは言えない介護、ここでは国の介護保険制度の仕組みやサービスについてご紹介していきます。
この記事を読むと分かること
- 介護保険の概要と介護保険制度の目的
- 介護保険の被保険者の種類
- 介護保険の自己負担額(支給限度額)と受けられるサービス
見出し
介護保険とは
介護保険とは、介護状態になったときに受けることができる保障です。介護保険というと、国の公的介護保険の他に民間の介護保険があります。一般的に介護保険という言葉が使われる場合、国の公的介護保険制度を指していることが多いようです。
では、公的介護保険がどのような目的から作られた制度なのか、そして40歳から加入する意味の2つについてお伝えしていきます。
介護保険制度の目的
介護保険制度の目的は、家族の介護に対する負担を減らし、介護を社会全体で支えていくことです。この目的の背景には、高齢化の進行による介護人口の増加や介護期間の長期化、介護を原因とした離職者の増加などがあります。
この問題を解決するために、2000年に介護保険制度が創設されました。
介護保険料の支払いは40歳から
介護保険制度は40歳から加入が義務づけられ、公的医療保険や公的年金などに加えて新たに介護保険料を支払うことになります。
40歳ぐらいから認知症や脳卒中などによって要介護状態になるリスクがあります。
そのため、40歳から介護保険制度の加入が義務づけられています。
介護保険の被保険者とは?介護保険被保険者証の受け取り方法
介護保険の被保険者は2つに分けられ、介護保険被保険者証の受け取り方法も変わります。
65歳以上(第1号被保険者)
65歳以上の第1号被保険者は、介護原因を問わず介護状態になったら介護保険の保障を受けることができます。
介護保険料は、市区町村が徴収し、原則として給付される年金から天引きされます。介護保険料の算定は、第1号被保険者の合計所得金額に応じて金額が変わることになります。
介護保険の被保険者証は、65歳になる月に市区町村より交付されます。
40歳以上65歳未満(第2号被保険者)
40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、第1号被保険者とは異なり介護原因が限定されます。介護状態になった場合に次の老化に起因する病気(特定疾病)のみを対象として介護保険の保障を受けることができます。
老化に起因する病気(特定疾病) | |||
---|---|---|---|
1 | がん(医師が一般に認められている知見にもとづき 回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。) |
9 | 脊柱管狭窄症 |
2 | 関節リウマチ | 10 | 早老症 |
3 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 11 | 多系統萎縮症 |
4 | 後縦靱帯骨化症 | 12 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症 および糖尿病性網膜症 |
5 | 骨折を伴う骨粗しょう症 | 13 | 脳血管疾患 |
6 | 初老期における認知症 | 14 | 閉塞性動脈硬化症 |
7 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症 およびパーキンソン病 |
15 | 慢性閉塞性肺疾患 |
8 | 脊髄小脳変性症 | 16 | 両側の膝関節または股関節に 著しい変形を伴う変形性関節症 |
老化に起因する病気(特定疾病) | |||
---|---|---|---|
1 | がん(医師が一般に認められている知見にもとづき 回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。) |
9 | 脊柱管狭窄症 |
2 | 関節リウマチ | 10 | 早老症 |
3 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 11 | 多系統萎縮症 |
4 | 後縦靱帯骨化症 | 12 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症 および糖尿病性網膜症 |
5 | 骨折を伴う骨粗しょう症 | 13 | 脳血管疾患 |
6 | 初老期における認知症 | 14 | 閉塞性動脈硬化症 |
7 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症 およびパーキンソン病 |
15 | 慢性閉塞性肺疾患 |
8 | 脊髄小脳変性症 | 16 | 両側の膝関節または股関節に 著しい変形を伴う変形性関節症 |
介護保険料は、加入している健康保険または国民健康保険の保険料と一緒に徴収されます。65歳になった時点で第1号被保険者になり、徴収方法が切り替わります。
健康保険に加入している場合、その年の月収と賞与などに応じて保険料率が計算され、それを被保険者と事業主で負担しますが、介護保険も同様です。
国民健康保険に加入している場合は、前年の所得から保険料率が計算され、それを被保険者または世帯主が負担しますが、介護保険も同様となります。
介護保険の被保険者証は、要介護や要支援認定を受けた場合、市区町村に交付申請することで交付されます。
介護保険の被保険者のまとめ
介護保険の被保険者についてまとめると次の表になります。
65歳以上 (第1号被保険者) |
40歳以上65歳未満 (第2号被保険者) |
|
---|---|---|
受給要件 | 要介護・要支援状態 | 要介護・要支援状態が老化に起因する 病気(特定疾病)による場合 |
保険料の徴収方法 | 原則として給付される年金から 市区町村が徴収 65歳になる月から徴収 |
健康保険または国民健康保険の保険料と一体的に徴収 (健康保険加入者は、原則、事業主が1/2を負担) 40歳になる月から徴収 |
介護保険被保険者証の 交付方法 |
65歳になる月に市区町村より公布 | 要介護・要支援認定を受け、 市区町村に交付申請することで交付 |
65歳以上 (第1号被保険者) |
40歳以上65歳未満 (第2号被保険者) |
|
---|---|---|
受給要件 | 要介護・要支援状態 | 要介護・要支援状態が老化に起因する 病気(特定疾病)による場合 |
保険料の徴収方法 | 原則として給付される年金から 市区町村が徴収 65歳になる月から徴収 |
健康保険または国民健康保険の保険料と一体的に徴収 (健康保険加入者は、原則、事業主が1/2を負担) 40歳になる月から徴収 |
介護保険被保険者証の 交付方法 |
65歳になる月に市区町村より公布 | 要介護・要支援認定を受け、 市区町村に交付申請することで交付 |
第2号被保険者の場合、老化に起因する病気(特定疾病)のみが受給要件の対象となるため注意が必要です。
要介護認定の申請方法
介護保険サービスの利用までの流れについて順を追って説明します。
-
- STEP
1 -
要介護・要支援認定の申請
介護保険のサービスを受けるためには、市区町村の窓口で要支援・要介護の認定の申請をおこなう必要があります。65歳以上の方であれば介護保険被保険者証が必要で、40歳以上65歳未満の方であれば、保険証が必要です。
利用者本人の状況によって、家族、地域包括支援センター、介護保険施設などに申請を代行することができます。
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-
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2 -
認定調査・主治医意見書の依頼
市区町村の職員などの認定調査員が自宅や施設などに訪問して、心身の状況や家族の聞き取り調査などをおこなって認定調査をします。また、市区町村から主治医に直接依頼し、医学的見地からの心身の状況などの意見書を作成してもらいます。
- STEP
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3 -
審査判定
認定調査の結果と主治医意見書をもとにして、コンピューターを使った全国一律の判定方法である一次判定と介護認定審査会による二次判定がおこなわれます。
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4 -
認定
認定は、市区町村が介護認定審査会の判定結果に基づき、結果を通知します。申請から認定の通知までは、原則として30日以内におこないます。
認定は、介護保険制度における要支援1、2から要介護1~5または非該当のいずれかになります。
認定に際しての介護度はおおむね次のような状態が考えられます。
介護度 おおむね次のような状態 要支援1 日常生活上の基本的動作は、ほぼ自分で行うことが可能。
しかし、現状を改善し、要介護状態にならないように予防としての支援を要する状態要支援2 日常生活上の基本的動作を自分で行うことが困難であり、
何らかの介護を要する状態要介護1 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、
部分的な介護を要する状態要介護2 要介護1の状態に加え、日常生活動作について部分的な介護を要する状態 要介護3 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び
手段的日常生活動作の両方が著しく低下し、ほぼ全面的な介護を要する状態要介護4 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、
介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態要介護5 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、
介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態介護度 おおむね次のような状態 要支援1 日常生活上の基本的動作は、ほぼ自分で行うことが可能。
しかし、現状を改善し、要介護状態にならないように予防としての支援を要する状態要支援2 日常生活上の基本的動作を自分で行うことが困難であり、
何らかの介護を要する状態要介護1 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、
部分的な介護を要する状態要介護2 要介護1の状態に加え、日常生活動作について部分的な介護を要する状態 要介護3 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び
手段的日常生活動作の両方が著しく低下し、ほぼ全面的な介護を要する状態要介護4 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、
介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態要介護5 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、
介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態
要介護認定には次のように有効期限があります。
● 新規、変更申請の場合:原則6ヵ月(状態に応じ3~12ヵ月まで設定)
● 更新申請の場合:原則12ヵ月(状態に応じ3~48ヵ月まで設定)
有効期限を過ぎると介護サービスが利用できなくなるため、期限満了前までに認定の更新申請をおこなう必要があります。また心身の状況に変化が生じたときは、有効期限の途中でも認定の変更申請ができます。
- STEP
-
- STEP
5 -
介護(介護予防)サービス計画書の作成
介護認定された方は、介護サービスを利用するために介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要となります。介護度によってケアプランを作成する依頼先が変わります。
要介護1~5の方の場合、介護支援専門員(ケアマネジャー)のいる都道府県知事の指定を受けた居宅介護支援事業者へ依頼します。そして依頼を受けたケアマネジャーは、サービスをどのように利用するか、本人や家族の希望、心身の状態を考慮して、介護サービス計画書を作成します。
要支援1、2の方の場合、地域包括支援センターに相談して介護予防サービス計画書を作成することになります。
- STEP
-
- STEP
6 -
サービス利用の開始
介護サービスは、介護サービスをおこなう事業者に介護保険被保険者証と介護保険負担割合証を提示して、作成したケアプランに基づいた利用ができます。
要支援・要介護までの認定にはお伝えした手順が必要です。しかし1人ですべておこなうわけではなく、市区町村の担当者やケアマネジャー、地域包括支援センターなどの方たちと相談をしながら手続きを進めることができます。
- STEP
介護保険の自己負担額(支給限度額)と受けられるサービス
介護サービスの利用にあたって、介護認定を受けると原則1割の自己負担額で利用ができます。ただし、自己負担額は所得金額に応じて変わります。
介護保険の自己担割合
介護保険の自己負担割合は、第1号被保険者の場合は費用の1割から3割、第2号被保険者の場合は1割となっています。
第1号被保険者の場合 | |
---|---|
3割負担者 | 年金収入などの金額が340万円以上、 2人以上世帯の場合463万円以上 |
2割負担者 | 年金収入などの金額が280万円以上340万円未満、 2人以上世帯の場合346万円以上463万円未満 |
1割負担者 | 年金収入等の金額が280万円未満、 2人以上世帯の場合346万円未満 |
第1号被保険者の場合 | |
---|---|
3割負担者 | 年金収入などの金額が340万円以上、 2人以上世帯の場合463万円以上 |
2割負担者 | 年金収入などの金額が280万円以上340万円未満、 2人以上世帯の場合346万円以上463万円未満 |
1割負担者 | 年金収入等の金額が280万円未満、 2人以上世帯の場合346万円未満 |
このように第1号被保険者では、所得金額によって最大3割の自己負担に変わるのが特徴です。
介護保険の支給限度額
介護サービスには、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3つがあります。
居宅サービスとは、訪問介護や訪問看護、車いすやベッドなどの福祉用具の貸与といったものがあります。これらの居宅サービスを利用する場合、介護度に応じた支給限度額が定められています。
居宅サービスの1か月あたりの利用限度額 | |
---|---|
介護度 | 月額支給限度額 |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
居宅サービスの1か月あたりの利用限度額 | |
---|---|
介護度 | 月額支給限度額 |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
月額支給限度額の範囲内で介護サービスを利用した場合は、介護保険の自己負担割合に応じた金額です。しかしこの限度額を超えると、超えた分の全額が自己負担となります。
施設サービスには、介護老人保健施設や有料老人ホームなどの施設で生活する際の費用が含まれます。
地域密着型サービスには、自宅周辺にあるデイサービスやデイケアの利用といったものが当てはまります。
3つの介護サービスのうち居宅サービスには利用限度額があるため注意が必要です。
万が一に備えて民間の介護保険(共済)への加入を検討
公的介護保険制度の概要についてお伝えしてきました。介護保険は介護が必要な方に、その費用を給付してくれる保険ですが、介護保険だけで介護費用を賄えるか不安に思う人もいます。
またこれまでお伝えしてきたように介護サービスの費用は原則1割負担(所得に応じて3割負担まで)で、居宅サービスに関しては利用限度額が定められています。しかし原則1割負担とはいえ、長く払い続けるとなると負担額が大きくなります。
公的介護保険制度は、介護をするうえでのベースとなります。しかし、原則1割負担の部分を備えるとしたら民間介護保険(共済)の役割となります。
民間介護保険(共済)の保険金(共済金)の支払は、公的介護保険制度の介護度に連動するものや保険会社(共済組合)独自の介護度を基準とするものと様々です。
また受取り方法は、一時金、年金、一時金と年金の併用の3種類があります。
一時金
一時金の用途としては、介護するにあたって自宅の改修などの初期費用がかかる場合に使うことができます。保険金を一括で受取ることになるため契約は消滅します。
年金
年金の用途としては、公的介護保険における毎月の原則1割負担分を賄うために使うことができます。年金の受取り方には、期間を定めてその間に受取る確定年金タイプや支給開始から一定期間は受給者の生死に関わらず受取ることができる保証期間付終身年金などがあります。
一時金と年金の併用
一時金と年金の併用の用途としては、介護状態になって初期費用がかかるため、保険金の一部を一時金として受取り、残りは年金として公的介護保険の毎月の費用に充てた使い方などになります。
まとめ
公的介護保険制度は、40歳から加入義務があります。
40歳以上65歳未満の場合、特定疾病にかかった場合に介護申請をすることができ、65歳以上の場合、要介護、要支援状態が必要となった際に介護申請ができます。
介護状態になった場合の介護サービスの利用が、一部利用限度額があるものの原則として1割負担で利用ができるのが特徴であることをお伝えしてきました。
しかし1割(原則)負担も介護の継続によって払い続けるのが難しいと不安に思う人がいます。そのため万が一、介護状態になった場合の対策として民間の介護保険(共済)加入を検討することをおすすめします。