介護離職を防ぐために。介護サービスの上手な活用法を調べてみた

医療の進歩とともに寿命が延びる一方、健康なまま一生を過ごせるとは限りません。両親に介護が必要になり、仕事との両立が難しいためにやむをえず退職する「介護離職」の増加が問題となっています。家族だけでの介護に限界がある場合には、第三者による介護サービスの利用を検討する必要があります。一体、どのようなサービスがあるのでしょうか?

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介護離職が進む理由

2020年の調査によると、介護を理由に離職した人の数は2017年時点で約10万人と、過去10年間と比較しても減少傾向はみられません。未婚や核家族化、さらに共働き世帯が増えており、家庭の中で人手が不足していることも原因と考えられています。


ある人に介護が必要な場合、その度合いによって在宅での介護が可能か、施設への入居が必要かを判断します。「要支援」や「要介護」といった等級があり、さらにそれぞれを1から5のランクに分類します。


施設への入居が認められるのは、基本的に「要介護」の場合。最も手厚い介護が受けられる特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の人が対象です。そのほかの人は、自宅での介護や施設の一時利用による介護サービスを受けることができます。


要介護者が自宅で過ごす場合、誰がその介護にあたるかが問題です。通所介護や訪問介護を活用しても、24時間体制での見守りは難しいのが現実。家族の誰かがそれを担う必要が出てきます。そのため、やむをえず仕事の量を減らすか、退職するなどして家族の介護にあたることとなり、これが「介護離職」増加の大きな要因です。

まずは働き方を見直す

家族に介護が必要になったとき、いきなり仕事を辞めてしまうのは考えものです。自宅での介護にはバリアフリー化などの整備も必要になり、費用がかかることも多く、収入を失ってしまうのはその後の生活にも大きな影響を及ぼします。まずは「働きながら介護をする」という選択を。そのために、現在の働き方を変えることも選択肢のひとつです。


  • 在宅で働く

新型コロナウイルスの影響もあり、在宅ワークしやすい環境が整備されつつあります。在宅ワークの流れは介護する上でもメリットです。家の中に一緒にいられることで食事や排せつの介助、日中の見守りも可能になります。さらにほかの家族も在宅ワークが可能であれば、交代で介護にあたることもでき、一人の負担を減らせるでしょう。


  • 介護休業制度の活用

企業の大半が「介護休業制度」を設けています。本人の配偶者やその親、本人の兄弟、両親、祖父母、子、孫の介護のために最大3回、通算93日まで休むことが可能とされています。長期間におよぶ介護のために、この休業期間を利用してケアマネージャーとのケアプランの相談や介護用品の手配など、体制を整えることも重要です。


また、介護休業制度の使用期間を終えてからも仕事を続けながら介護をしていくために、介護サービスの利用を検討しましょう。

介護と仕事を両立するために介護サービスを活用する

介護と仕事を両立するために、介護サービスをうまく活用することもひとつの手です。介護サービスには、公的介護保険で利用できるものと自費で受けるもの、そして訪問や通所によって受けるものと施設に入居して受けるものがあります。


  • 公的介護保険で訪問介護を受ける

「居宅療養管理指導」や「訪問看護」、「訪問リハビリテーション」「訪問入浴介護」といった内容のサービスがあり、自宅へヘルパーが訪問して健康指導や介助、介護を行います。


  • 公的介護保険で施設に通う

日中や、あらかじめ決まった期間を自宅以外の施設で過ごします。食事や入浴などの介護、リハビリテーションを行う「デイサービス」、介護老人保健施設や病院などで機能訓練や栄養改善といった指導を受ける「デイケア」、さらに最大30日間の滞在が可能な「ショートステイ」も利用できます。送迎も施設にお願いできることが多く、また夜間対応が可能な施設もあるため、利用を検討している場合は市区町村や施設に確認してみましょう。



  • 公的介護保険で施設に入居する

要介護者の状況に合わせて、「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」、「介護療養型医療施設」といった施設に入居して介護を受ける方法もあります。


原則として要介護の認定を受けている人が利用でき、特別養護老人ホームは要介護3以上の認定が必要です。施設に入居すると身のまわりの世話を全てヘルパーに任せられるため、介護する側にとっては負担を大きく減らすことができます。


公的介護保険を利用した介護サービスは所得に応じて費用に上限が設定されているため、自費で受けるサービスと比較して経済負担が安くすむ場合も。ただし、介護度によって利用できる金額が決められており、それを超えると自費負担が必要になるため、費用を抑えたい場合は範囲内でケアプランを作ってもらう必要があります。


また、同居の家族がいる場合には、まず家族による介護を求められるため、「食事や排せつの介助(身体介護)はするが、料理や掃除、洗濯、散歩の付き添い(生活援助)はNG」といったように、お願いできる内容に制限があります。


  • 自費で受ける介護サービス

「身体介護以外のお世話もお願いしたい」「施設入居に必要な基準を満たしてないけれども自宅介護が難しい」といった場合には、介護保険の適用外で民間の介護サービスなどを利用する方法もあります。


事業者が提供している介護サービスを、基準より低い介護度でも受けることが可能に。身のまわりの世話以外の生活援助も受けられ、お願いできることの範囲が広くなります。ただし、費用は全額自己負担となるため、割高になります。


また、「食事の用意に手がまわらない」という場合には配食サービス、「平日、車を動かせる人がいない」という場合には介護タクシーなどの移送サービス……といったように、お願いしたい内容がピンポイントな場合は、民間業者の利用もおすすめ。介護度が低く、自宅で過ごす場合には、どんなことなら家族が助けられるか、第三者や業者には何をお願いしたいかを明確にしておくのがよいでしょう。


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将来の介護のために備えておくことも必要

寿命が長くなっている分、介護が必要な期間は延びつつあるのが現状です。同居・別居を問わず、働き盛りの世代にとって親の介護問題は重くのしかかり、その結果、離職という判断を迫られることも少なくありません。そうならないためにも、日ごろから家族間でのコミュニケーションを密に行い、介護が必要になった場合には、まず誰がどのように手助けをするかを考えておくことが大切です。


さらに、介護にかかる負担を減らすためには、保険や共済などでしっかりと備えておくのも重要。自己負担の必要な介護保険適用外のサービスを受ける場合にも、これらの保険金(共済金)を使うことで、自身の仕事や資産を守りながら介護を行えるようになります。


男女ともに長寿である日本。寿命が延びると同時に介護が必要な人は増え、その期間も長くなり、家族の介護をきっかけに離職せざるをえなくなるケースも起きています。


介護離職を防ぐためには、公的介護保険の範囲で利用できるサービスを活用するのが基本。ただし、より負担を減らし快適な生活を守るには、公的介護保険の適用外で自己負担による介護サービスの利用もひとつの方法かもしれません。


その際に余分にかかる費用をカバーするのにおすすめなのが、民間介護保険(共済)。親世代の備えだけでなく、将来的に自分自身が介護を受ける側になったときに家族への負担を減らすためにも、公的介護保険以外の民間保険(共済)についてリサーチしておき、必要に応じて利用を検討するのがおすすめです。

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