退職したら国民年金への切り替えが必要! 手続きをまとめてみた

20歳以上60歳未満の日本国民全員の加入が法律で定められている「年金」。ただ、年金には種別があり、「厚生年金」に加入している会社員が退職した際は、自身で「国民年金」へ切り替えなければなりません。いつどこでどのような手続きを行えばいいのか?もし切り替え忘れたらどうなるのか?失業時の年金の切り替えについてまとめてみました。


本内容は、令和4年11月の制度等にもとづき、記載しています。

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会社を退職したら14日以内に国民年金への切り替えを

年金制度では次のいずれかに分類され、月末時点の状況に応じて保険料が課せられます。


第1号被保険者(国民年金)

日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満で、第2被保険者・第3被保険者に該当しない人が加入


第2号被保険者(厚生年金)

会社員や公務員など厚生年金被保険者が加入


第3号被保険者

20歳以上60歳未満である第2号被保険者の被扶養配偶者で、年収130万円未満の人が加入


民間企業勤務の正社員や所定の要件を満たす短時間労働者は「厚生年金」の加入者となりますが、会社を退職するとその資格を失います。しばらく再就職をしない場合や個人で事業を起こす場合などで、第3号被保険者に該当しない人は、自営業者や学生、無職の人などが属する「国民年金」への切り替えが必要です。

厚生年金から国民年金へ切り替える方法

国民年金に切り替える手続きは、退職した日から14日以内に、住民登録している市区町村役場の国民年金担当窓口でおこないます。その際、以下の書類が必要となります。


〈国民年金への切り替え時に必要な書類〉

  • 年金手帳
  • 退職時に会社から発行される「離職票」や「健康保険資格喪失証明書」、「退職証明書」など、退職日が確認できる書類
  • 運転免許証やパスポートなどの身分証明書
  • 印鑑

なお、国民年金の保険料の支払い方法は、納付書、口座振替、クレジット払いのいずれかとなります。もし口座振替やクレジット払いを希望する場合は、通帳や印鑑、クレジットカードなども持参しておくとスムーズです。

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退職後すぐに別の会社に入社する場合は?

離職期間がない場合や、離職期間があっても退職月と同じ月に転職先に入社する場合は、国民年金への切り替え手続きをする必要は原則ありません。なぜなら、年金の保険料は月末時点に在籍している会社が支払うからです。


例えば、3月15日にA社を退職、3月20日にB社に入社する場合を見てみましょう。年金保険料は月末時点に在籍している会社が支払うため、3月分は月末在籍先のB社が支払うことになります。


2月 3月 4月
在籍企業 A社 〜15日:A社
16日〜19日:離職
20日〜:B社
B社
当月分の年金保険料支払者 A社 B社(月末在籍企業) B社
2月 3月 4月
在籍企業 A社 〜15日:A社
16日〜19日:離職
20日〜:B社
B社
当月分の年金保険料支払者 A社 B社(月末在籍企業) B社

つまり、月末時点に離職していなければ、年金保険料は企業が納めてくれるため自身での納付は不要です。仮にB社への入社が4月以降になる場合は、3月末時点にはどの企業にも在籍していないことになるため、自身で国民年金への切り替え手続きを行ったうえで3月分の年金保険料を納めなければなりません。

国民年金への切り替え手続きを怠ると、財産を差し押さえられることも

退職後、14日以内に切り替えが必要となる国民年金。では、もし手続き期限を過ぎてしまったり、切り替えを忘れたりしていた場合はどうなるのでしょうか?


厚生年金の資格を失ったのち、次の会社で新たに厚生年金に加入したり、配偶者の被扶養者になったりする人以外は、手続きの有無に関係なく、退職日の翌日付で国民年金加入者となります。そのため、どの年金制度にも属さなくなる心配はありません。しかし、手続きを行わないと保険料の納付ができない可能性があり、「年金未納期間」が発生してしまうことも。後々手続きをおこなった際に、それまでの保険料をまとめて請求されることもあります。


年金に未納期間がある場合、その期間は老齢基礎年金の計算に反映されずに受給できる年金額が減額されるほか、障害年金や遺族年金がもらえない場合もあります。また、一定の所得があり、保険料を長期に渡り滞納している人は強制徴収の対象者となり、日本年金機構から督促がおこなわれます。平成30年度においては、控除後の所得が300万円以上かつ未納月数7か月以上の滞納者に督促を実施するとしています。督促をしても保険料が支払われないと、最終的には財産を差し押さえられることもあります。


保険料は納付期限から2年以内であれば遅れて納めることができますが、その期間も過ぎてしまった場合は時効となり、後納できなくなってしまうので、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで、自身の納付状況を確認しておきましょう。

退職や失業で国民年金の支払いが難しいときは免除・猶予制度を利用しよう

国民年金の平成30年度の保険料は月額16,340円。いくら義務とはいえ、退職や失業による収入減などで経済的に支払いが困難な場合もあり得ます。そのようなときは「保険料免除制度・納付猶予制度」を利用することができます。


「保険料免除制度・納付猶予制度」は、年金の受給資格期間に算入されながら、保険料を免除または減額されたり、納付が猶予されたりする制度で、次のようなケースで申請が可能です。


  • 保険料免除制度

本人、世帯主、配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合などで国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合、申請後に承認されると保険料の納付が「全額、4分の3、半額、4分の1」のいずれかで免除される。


  • 保険料納付猶予制度

20歳から50歳未満で、本人、配偶者の前年所得が一定額以下の場合、申請後に承認されると保険料の納付が猶予される。


申請は、住民登録している市区町村役場の国民年金担当窓口に「申請書」と「年金手帳」を提出する必要があります。なお、失業した場合には「雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し」、そのほかのケースでも「前年度の所得を証明する書類」や「所得の申立書」が必要になることもあります。


免除を受けると、老齢基礎年金を受け取る際の年金額が免除額と期間に応じて少なくなりますが、10年以内であればあとから追納することで受給額を満額に近づけることも可能なので、支払えるゆとりができた場合には検討してみるといいでしょう。

離職期間が終わり転職したあとの厚生年金の手続きは?

国民年金から厚生年金への切り替えの際に自身で役所に出向いて手続きをおこなう必要はありません。なぜなら、厚生年金への加入手続きは事業主が年金事務所と手続きを進めてくれるからです。手続きには、年金手帳(基礎年金番号通知書)またはマイナンバーカードが必要となるため、準備をしておきましょう。また、厚生年金の保険料は、給与から差し引かれることになっているため、納付に関わる手続きも不要です。

まとめ

会社を退職後すぐに他の会社に再就職せず第1号被保険者に該当する場合は、お住まいの市区役所にて退職日の翌日から14日以内に国民年金への切り替え手続きが必要です。手続きをせずに保険料未納の状態が続くと、将来の年金受給額が減額されるだけでなく、財産を差し押さえられる可能性もあります。収入の減少や失業などによって年金保険料の支払いが経済的に難しい場合は、保険料の免除・減額や納付を猶予してもらえる制度の活用を検討してみることをおすすめします。

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