自動車保険(共済)の等級引継ぎの方法や引継ぎ可能な条件について

自動車保険(共済)の等級引継ぎの方法や引継ぎ可能な条件について

自動車保険(共済)の等級とは、保険料の割引率を定めるために設けられた区分です。保険加入時には原則として6等級からスタートし、1年間無事故なら1等級上がる仕組みになっています。等級の上限は20等級ですが、等級が上がるほど保険料の割引率が大きくなり、負担が軽くなります。


ところで、自動車保険(共済)の等級は、家族間で引き継いだり、他の保険会社との契約へ引き継いだりできることをご存じでしょうか?家族が新しく自動車保険(共済)に入るとき、等級引継ぎをすれば、年間の保険料を抑えられる可能性もあります。


ここでは、自動車保険(共済)の等級引継ぎについて説明します。どのような場合に引継ぎができるのかを知っておき、家族が新車を購入するときなどに役立ててください。


本内容は、令和4年10月の制度等にもとづき、記載しています。

本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。


家族間で等級の引継ぎが可能な続柄例

自動車保険(共済)の等級は、記名被保険者を基準に決まります。記名被保険者とは保険契約の対象となる人で、自動車を主に運転する人です。記名被保険者の家族が新たに自動車保険(共済)に入る場合には、記名被保険者の等級を引継ぐことができます。まずは、等級引継ぎが可能な家族とは、記名被保険者から見てどのような続柄の人かをみてみましょう。

同居の親族

自動車保険(共済)の等級は、記名被保険者と同居している親族に引継ぎできます。ここでいう親族とは、6親等以内の血族と3親等以内の姻族です(※法律上は配偶者も親族に含まれますが、配偶者については次の項で説明します)。

血族とは血のつながりがある人で、父母(1親等)、祖父母(2親等)、子(1親等)、孫(2親等)、兄弟姉妹(2親等)、おじ・おば(3親等)、いとこ(4親等)などが親族に該当します。姻族とは配偶者の血族または血族の配偶者です。義父母(1親等)や義理の息子・娘(1親等)、兄弟姉妹の配偶者(2親等)などは親族になります。

親族(配偶者以外)については、等級引継ぎのために同居の要件があります。親子間や兄弟姉妹間では、同居していれば等級引継ぎが可能ですが、別居している場合、等級引継ぎは不可能です。つまり親から同居の子供に等級引継ぎはできますが、一人暮らしをしている子供への等級引継ぎはできません。同居・別居の判定に住民票は関係なく、同居の実態があれば等級引継ぎは可能です。

なお、たとえ同居していても、友人や知人など親族でない人への等級引継ぎはできません。

配偶者

記名被保険者の配偶者には、同居かどうかは関係なく、等級の引継ぎができます。別居している夫や妻であっても、等級引継ぎは可能です。

配偶者と同居の親族

自動車保険(共済)の等級は、記名被保険者の配偶者と同居している親族にも引継ぎ可能です。例えば、記名被保険者である夫が妻と別居しており、妻と子供が一緒に住んでいる場合、夫から子供へ等級を引継げます。

親の等級を子に引継ぐことで保険料を抑えられる

親と同居している子供が免許を取得し、親の車とは別の車を購入するケースはよくあるでしょう。この場合、家族で2台分の自動車保険(共済)料を支払わなければなりません。子供が新規で自動車保険(共済)に入ると、6等級からのスタートとなります。免許証の色もグリーン、年齢区分も全年齢補償となり、保険料の負担が大きくなってしまいます。

親から子供へ等級を引継げば、保険料を抑えられる可能性があります。ここでは、親(55歳)と同居の子供(20歳)が免許を取得して新しく車を購入したケースを想定し、等級引継ぎをする場合としない場合の保険料を比較してみます。親のほうは20等級を持っていると仮定します。

まず、等級引継ぎをせずに子供が新規で自動車保険(共済)に入ったと仮定して、保険料を試算してみましょう。

【例1】子が新規で自動車保険(共済)に加入する場合


等級 主な条件 保険料
親(55歳) 20等級 ゴールド免許
普通乗用車
主に通勤に利用
14,700円
子(20歳) 6等級 新規加入
小型乗用車
主に買物・レジャーに利用
125,860円
合 計 140,560円
等級 主な条件 保険料
親(55歳) 20等級 ゴールド免許
普通乗用車
主に通勤に利用
14,700円
子(20歳) 6等級 新規加入
小型乗用車
主に買物・レジャーに利用
125,860円
合 計 140,560円

20等級の親の保険料は年間で1万5,000円程度なので、負担は大きくありません。一方、6等級の子供の保険料は年間で12万円を超えます。子供が新規で自動車保険(共済)に入ると、家族単位での支出はかなり増えてしまいます。

次に、子供が親の等級を引き継いだ場合をみてみましょう。親が子供に等級を引継ぐと、親が新規で自動車保険(共済)に入らなければなりません。この場合、子供の等級は20等級となり、親は6等級に戻ります。その他は【例1】と同じ条件で試算した結果は次のとおりです。


【例2】親から子へ等級引継ぎをした場合


等級 主な条件 保険料
親(55歳) 6等級 ゴールド免許
普通乗用車
主に通勤に利用
35,880円
子(20歳) 20等級 新規加入
小型乗用車
主に買物・レジャーに利用
39,530円
合 計 75,410円
等級 主な条件 保険料
親(55歳) 6等級 ゴールド免許
普通乗用車
主に通勤に利用
35,880円
子(20歳) 20等級 新規加入
小型乗用車
主に買物・レジャーに利用
39,530円
合 計 75,410円

【例1】と比べると、【例2】では親の保険料は2倍以上になりますが、子の保険料は3分の1程度です。家族単位の保険料合計額は約7万5,000円となり、半分近くまで下がっています。

上でも説明したとおり、親子間で等級引継ぎをする際には、同居が必須要件です。進学や就職で実家を離れる予定の子供が車を購入する場合、同居のうちに引継ぎ手続きを済ませておくようにしましょう。

子供が車を購入した際の引継ぎ方

親の車とは別に同居の子供が新車を購入した場合に、親の等級を子供へ引継ぐ方法について説明します。

両入替をおこない被保険者を子供に変更

まず親が自動車保険(共済)に入っている状態で、契約中の車両を変更する「車両入替」の手続きをおこないます。車両入替は新車の納車前にできるので、納車日が決まったら保険会社に連絡しましょう。

車両入替の手続きをする際には、車検証が必要になります。納車前で手元にない場合には、販売店等にコピーをもらうか、売買契約書で型式や番号などの情報を確認しましょう。契約変更日を納車日に設定しておけば、納車日から新車に保険を適用できます。

車両入替が完了したら、自動車保険(共済)の記名被保険者を親から子供に変更します。親から同居の子供へ記名被保険者を変更する場合には、等級をそのまま引継げます。

親が新たな自動車保険を契約する

車両入替をおこなったら、親が元々乗っていた車の保険がなくなってしまいます。親の車には、新たな自動車保険(共済)を契約しなければなりません。親は新規で自動車保険(共済)に加入することになるため、等級は6等級となります。

なお、親の元々の等級が11等級以上の場合、一定の条件を満たせばセカンドカー割引(複数所有新規割引)が受けられます。セカンドカー割引が適用される場合、親の等級は7等級からスタートします。

保険会社の乗り換え時も引継ぎ可能

保険料が高かったり、事故対応が悪かったりしたときには、他の保険会社に乗り換えたいと考えることもあるでしょう。保険会社を変更しても等級は引き継がれるため、安心です。また、保険会社から共済にも等級引継ぎは可能ですが、一部引継ぎ不可能な共済があるため、保険会社で確認しましょう。

1年間無事故の人が期間満了後に別の保険会社の自動車保険(共済)に乗り換える場合には、等級が1つ上がります。一方、契約期間の途中で解約して他社に乗り換える場合には、等級は上がらずそのままなので注意しておきましょう。

他の保険会社に等級を引継ぐには、前の保険契約の満期日(または中途解約日)の翌日から7日以内に、次の保険契約の始期日がなければなりません。前の保険契約と次の保険契約の間に8日以上の空白期間がある場合には、等級がリセットされてしまいます。

契約期間満了後、車を手放す、廃車にする、海外赴任するなどの理由で、しばらく車に乗らないケースもあるでしょう。このような場合には、直前に契約していた保険会社に「中断証明書」を発行してもらう方法があります。

中断証明書があれば、中断日の翌日から最長10年、等級の引継ぎが可能です。車に乗らなくなったけれど、再び乗る可能性がある場合には、中断証明書を取得しておくのがおすすめです。中断証明書を取得するには、次のような条件を満たす必要があります(※細かな条件は保険会社によって異なることがあります)。

1. 中断後の契約の等級が7等級以上

中断する前の契約の保険期間中に事故があった場合、それによって下がる等級が7等級以上でなければなりません。

2. 中断証明書発行の申出が満期日から5年以内

中断日から5年以内に保険会社に申し出なければなりません。なお、中断証明書の有効期限は、申出日ではなく、中断日から10年です。

※JA共済では内容が異なる場合がございます。

3. 中断日(満期日または解約日)以前に次のいずれかの事由が発生


  • 廃車、譲渡(売却)、リース会社へ返却
  • 車両の盗難
  • 車両入替により他の保険契約の対象となった
  • 車検切れ
  • ナンバープレート返納(一時抹消登録)
  • 災害による滅失
  • 海外渡航(中断日が出国日の6ヵ月前の日以降)

まとめ

自動車保険(共済)の等級は、配偶者や同居の親族に引継げます。保険会社を乗り換えるときにも、等級の引継ぎは可能です。長期間乗らない場合にも、中断証明書を取っておけば等級をリセットされずにすむことがあります。

家族間の等級引継ぎには保険料を抑える効果も期待できるため、家族が車を購入するときには、車両入替をして等級を交換できないか検討してみましょう。

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