「国民年金基金」のメリット・デメリットは?シミュレーションを用いて解説

「国民年金基金」のメリット・デメリットは?シミュレーションを用いて解説

「老後は年金だけで生活できるの?」「仕事を辞めた後の生活費が不安……」など「老後の生活資金」に対する不安をもつ方は少なくないはず。そんな方のために、国民年金に上乗せして給付される「国民年金基金」があるのをご存じでしょうか。自営業の方が加入できる、この年金制度について、加入のメリットとデメリットをご紹介します。

本内容は、令和4年5月の制度等にもとづき、記載しています。

この記事を読むと分かること

  • 国民年金基金のメリット
  • 国民年金基金のデメリット
  • 国民年金基金の給付金額の目安

そもそも「国民年金基金」って?

そもそも「国民年金基金」って?

国民年金基金とは、自営業やフリーランスで働いている人がより豊かな老後を過ごせるように、国民年金に上乗せして年金を受け取るための公的な年金制度のことです。
ここでは国民年金基金の概要や加入対象者について解説します。

国民年金との違い

そもそも、日本の年金制度では、国民年金は会社員、自営業に関わらず、すべての人が加入することになっています。会社員の場合は、それに加えて厚生年金や厚生年金基金に加入することによって、より多くの年金を受給できます。厚生年金と厚生年金基金は、名前も似ていることから、同じ制度だと思われる方も少なくありません。しかし、前者は国が運営する「公的年金」であるのに対し、後者は企業が運営する「企業年金」です。会社が厚生年金基金に加入していれば、従業員も自動的に加入することになり、老後は国からの年金に上乗せされた年金給付がおこなわれます。


一方、自営業などの第1号被保険者の場合は国民年金のみの加入であるため、厚生年金加入者に比べて将来受け取る年金額に大きな差が生じてしまいます。令和2年度末時点での厚生年金加入者の平均的な年金月額は146,145円であるのに対して、国民年金のみ加入している場合は56,358円です。この差を埋めるため平成3年4月に創設されたのが、国民年金基金です。


国民年金基金には、住んでいる都道府県ごとに加入する「地域型」と税理士・公認会計士・左官業などの該当職業ごとに加入する「職能型」の2つの形態が設けられていますが、それぞれの基金がおこなう事業内容は同じ。なお、加入する場合はいずれか一つの基金にしか加入できないので、加入する人が選択することになります。

国民年金基金の加入対象者

以下の条件を満たした方は、国民年金基金に加入できます。

  • 20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、学生、自由業の方など、国民年金の第1号被保険者となる方
  • 60歳以上65歳未満の方
  • 海外に居住しており、国民年金に任意加入している方

一方、以下に該当する場合、国民年金基金には加入できません。

  • 厚生年金に加入している会社員の方(国民年金の第2号被保険者)
  • 厚生年金加入者の扶養に入っている配偶者の方(国民年金の第3号被保険者)
  • 国民年金の保険料を免除されている方
  • 農業者年金の被保険者となっている方

ただし、国民年金の保険料を免除されている方であっても、次のようなケースでは加入対象です。

  • 障害基礎年金の受給者のような「法定免除」の対象となっている方が、国民年金保険料の納付を申し出た場合
  • 産前産後期間の免除制度の適用を受けている場合

国民年金基金のメリットって?

 国民年金基金のメリットって?

では、国民年金基金に加入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

もらえる年金額が増える

令和3年家計調査報告(総務省統計局)によると、無職の高齢者夫婦(夫・妻ともに65歳以上)世帯の支出は月額約25.5万円。これに、65歳からの男性の平均余命である20年間を単純計算すると、老後には約6,120万円の生活費が必要となります。


一方、20年間で支給される国民年金は夫婦で満額約2,700万円。つまり、国民年金にしか加入していない場合、生活費の約半分しか賄うことができません。


国民年金基金に加入すれば、もらえる年金額が増加します。

税制面での優遇が受けられる

公的年金制度である国民年金基金の場合には、掛金を支払うときおよび年金を受けるときの両方で税制面での優遇を受けることができます。国民年金基金の掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。

自分にあった給付パターンを選べる

国民年金基金の掛金の支払い期間は60歳までで、その後はパターンによって60歳、または65歳から給付されます。 終身年金だけの国民年金とは違い、国民年金基金には7種類の受け取り方があります。


  • 終身年金A型…65歳支給開始(15年保証付)
  • 終身年金B型…65歳支給開始(保証期間なし)
  • 確定年金I型…65歳~80歳支給(15年保証付)
  • 確定年金Ⅱ型…65歳~75歳支給(10年保証付)
  • 確定年金Ⅲ型…60歳~75歳支給(15年保証付)
  • 確定年金Ⅳ型…60歳~70歳支給(10年保証付)
  • 確定年金Ⅴ型…60歳~65歳支給(5年保証付)

終身年金は生きている限り年金を受け取れる仕組みです。一方、確定年金はあらかじめ決められた期間だけ年金を受け取れます。


保証期間が設けられているパターンでは、年金受給前または保証期間内に亡くなった場合、遺族に一時金が支払われます。仕事を辞めてから受給するのか、できるだけ長い期間受給するのかなど、自分の老後のライフプランに合わせた受け取り方ができるのも特徴です。

一生涯受け取りが可能

「終身年金」のプランを選ぶと、一生涯にわたって年金が受け取れるため、長生きするほど受け取れる総額は大きくなります。例えば、毎月5万円の年金を65歳から受け取るケースでは、85歳までに受け取る年金の総額は1,200万円、100歳までであれば2,100万円です。


長生きをすれば、そのぶん多くの生活資金が必要になります。国民年金基金は「人生100年時代」にぴったりの年金制度といえるでしょう。

年金額があらかじめ確定する

国民年金基金は、加入時の年齢と加入する口数によって、受け取れる年金額が決まります。給付される金額が固定されるため、生活設計が立てやすいことがメリットです。また、将来受け取れる金額を確認したうえで加入できるため、老後資金の不足額から逆算して掛金を決められます。

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国民年金基金に加入するデメリットって?

国民年金基金に加入することはよいことばかりではありません。ここでは、2つのデメリットをご紹介します。

物価スライド制に対応していない

国民年金基金の最大のデメリットが「物価スライド制」に対応していないという点です。物価スライド制とは、物価の変動に応じて支給額を変えること。国民年金基金では、掛金も受け取る年金額もあらかじめ決まっています。そのため、年金をもらうまでの間に物価が大きく上昇してしまった場合には、実質的に受け取れる年金額は下がってしまうことに。

途中で脱退(解約)できない

国民年金基金は任意加入ではありますが、いったん加入すると途中脱退をすることは基本的にできません。


ただし、会社員になるなど、国民年金の第1号被保険者でなくなった場合は、国民年金基金への加入資格を失います。この場合、脱退するまでに支払った掛金は将来年金として給付されます。

国民年金基金でいくらもらえる?

国民年金基金では、加入時の年齢と加入する口数に応じて受け取れる年金額が決定されます。拠出できる掛金の額は最大68,000円です。一口目は終身年金のタイプを選ばなければなりませんが、2口目以降は確定年金のタイプを含めた7種類の給付の型から選べます。


85歳まで年金を受け取るものとした場合、国民年金基金に加入するといくらもらえるのでしょうか。


終身年金A型に1口のみ加入するケースでは、次のようになります。


男性

加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額(年額) 掛金の総支払額 もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 7,110円 240,000円 3,412,800円 4,800,000円
30歳0ヶ月 10,300円 240,000円 3,708,000円 4,800,000円
40歳0ヶ月 12,555円 180,000円 3,013,200円 3,600,000円
50歳0ヶ月 18,150円 120,000円 2,178,000円 2,400,000円
加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額
(年額)
掛金の
総支払額
もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 7,110円 240,000円 3,412,800円 4,800,000円
30歳0ヶ月 10,300円 240,000円 3,708,000円 4,800,000円
40歳0ヶ月 12,555円 180,000円 3,013,200円 3,600,000円
50歳0ヶ月 18,150円 120,000円 2,178,000円 2,400,000円

女性

加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額(年額) 掛金の総支払額 もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 8,280円 240,000円 3,974,400円 4,800,000円
30歳0ヶ月 11,990円 240,000円 4,316,400円 4,800,000円
40歳0ヶ月 14,610円 180,000円 3,506,400円 3,600,000円
50歳0ヶ月 21,100円 120,000円 2,532,000円 2,400,000円
加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額
(年額)
掛金の
総支払額
もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 8,280円 240,000円 3,974,400円 4,800,000円
30歳0ヶ月 11,990円 240,000円 4,316,400円 4,800,000円
40歳0ヶ月 14,610円 180,000円 3,506,400円 3,600,000円
50歳0ヶ月 21,100円 120,000円 2,532,000円 2,400,000円

終身年金A型と確定年金Ⅰ型に1口ずつ加入するケースでは、次のとおりです。


男性

加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額(年額) 掛金の総支払額 もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 9,625円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
4,620,000円 6,600,000円
30歳0ヶ月 13,935円 65〜80歳:36万円
80歳〜85歳:24万円
5,016,600円 6,600,000円
40歳0ヶ月 15,505円 65〜80歳:24万円
80〜85歳:18万円
3,721,200円 4,500,000円
50歳0ヶ月 24,525円 65〜80歳:18万円
80〜85歳:12万円
2,943,000円 3,300,000円
加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額
(年額)
掛金の
総支払額
もらえる年金の
総額
20歳0ヶ月 9,625円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
4,620,000円 6,600,000円
30歳0ヶ月 13,935円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
5,016,600円 6,600,000円
40歳0ヶ月 15,505円 65〜80歳:24万円
80〜85歳:18万円
3,721,200円 4,500,000円
50歳0ヶ月 24,525円 65〜80歳:18万円
80〜85歳:12万円
2,943,000円 3,300,000円

女性

加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額(年額) 掛金の総支払額 もらえる年金の総額
20歳0ヶ月 10,795円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
5,181,600円 6,600,000円
30歳0ヶ月 15,625円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
5,625,000円 6,600,000円
40歳0ヶ月 17,560円 65〜80歳:24万円
80〜85歳:18万円
4,214,400円 4,500,000円
50歳0ヶ月 27,475円 65~80歳:18万円
80〜85歳:12万円
3,297,000円 3,300,000円
加入時の年齢 掛金月額 もらえる年金額
(年額)
掛金の
総支払額
もらえる年金の
総額
20歳0ヶ月 10,795円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
5,181,600円 6,600,000円
30歳0ヶ月 15,625円 65〜80歳:36万円
80〜85歳:24万円
5,625,000円 6,600,000円
40歳0ヶ月 17,560円 65〜80歳:24万円
80〜85歳:18万円
4,214,400円 4,500,000円
50歳0ヶ月 27,475円 65~80歳:18万円
80〜85歳:12万円
3,297,000円 3,300,000円

出典:国民年金基金「年金額シュミレーション」


まとめ

国民年金基金の仕組みやメリット・デメリットについて解説しました。基礎年金に対しての不安が高まってきている昨今では、国民年金基金への加入は老後の暮らしを支える有力な選択肢の1つです。特に、国民年金だけしか受給できない自営業やフリーランスの方にとっては心強い制度といえるでしょう。メリットとデメリットをよく理解したうえで、加入を検討してみてはいかがでしょうか。


参考:
国民年金基金HP
https://www.npfa.or.jp/
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106808_1.html

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