地震保険料控除とは?受け取れる条件や金額の計算方法について

地震保険料控除とは?受け取れる条件や金額の計算方法について

地震保険料控除とは、地震保険料を支払った場合に、一定額の所得控除を受けられる制度です。地震保険に加入して日が浅い方や、地震保険の加入を検討している方は、地震保険料控除でどのくらい所得税等(復興特別所得税を含みます。以下同じ)や住民税の負担を減らせるのか気になるのではないでしょうか。


今回は、地震保険料控除の概要や、所得税等と住民税の控除額の計算方法、控除を受けるために必要な手続きなどを解説します。地震保険料控除を申請する予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。


本内容は、令和6年10月の制度等に基づき、記載しています。 本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問合せください。



地震保険料控除とは

地震保険料控除は、地震保険料または掛金を支払った場合に、一定の所得控除を受けられる制度です。地震保険料控除が適用されることで、所得税等と住民税の負担を軽減できます。


地震保険は火災保険と付帯して契約しますが、地震保険料控除が適用されるのは、地震保険に関する保険料のみである点にご注意ください。

知っておきたい旧長期損害保険の経過措置

旧長期損害保険とは、1996年以前に販売された長期契約型の損害保険のことです。主に傷害保険や火災保険などで、保険期間が長期間にわたる契約を指します。

ただし、旧長期損害保険は2006年の税制改正により、2007年から損害保険料控除が廃止されました。


損害保険料控除の廃止にともなう経過措置として、以下の条件を満たしている「一定の長期損害保険契約等に係る損害保険料(旧長期損害保険料)」に関しては、地震保険料控除の対象にできます。


  • 2006年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の開始が2007年1月1日以後のものは除く)
  • 満期返戻金などのあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
  • 2007年1月1日以後にその損害保険などの変更をしていない契約

上記の条件を満たした旧長期損害保険料に関しては、地震保険料控除を受けられます。しかし、地震保険料とは控除額の計算方法が異なるため、支払保険料が同額の場合でも控除額に差が生じます。

地震保険料控除を受け取れる条件

地震保険料控除は、すべての地震保険に適用されるわけではありません。控除を受けるには以下のいずれかの条件に該当する必要があります。


  • 保険契約者が所有する建物や家財を対象とする地震保険契約
  • 保険契約者と生計をともにする配偶者と、その他の親族が所有する建物や家財を対象とする地震保険契約

また、地震保険料控除の適用は居住用の建物に限定されており、常時住居として使用していない別荘や、空き家で契約している地震保険は控除の対象となりません。


住居に店舗や事務所などを併設している場合は、居住用に使用している範囲のみが控除の対象です。なお、例外として居住用に使用している面積が全体の90%以上を占める店舗併用住宅などでは、地震保険料の全額を控除の対象にできます。

地震保険料控除の計算方法

地震保険料控除を利用することで、所得税等と住民税の納税額を軽減できます。ここでは、所得税等と住民税における地震保険料控除の計算方法を解説します。

所得税

国税庁タックスアンサーの「No.1145 地震保険料控除」によると、所得税の控除額の計算では、地震保険料の支払額が50,000円以下か50,000円超であるかが基準となります。また、それぞれ控除金額は以下の通りです。


  • 地震保険料の年間支払額が50,000円以下:支払保険料の金額が控除
  • 地震保険料の年間支払額が50,000円超:一律50,000円の控除

例えば、地震保険料の年間支払額が30,000円の場合は、30,000円が控除されます。一方、地震保険料の年間支払額が60,000円の場合は、60,000円が控除されるのではなく、控除額は50,000円です。


複数年分の保険料を一括で支払った方は、「一括払保険料÷保険期間(年)」の計算式で導き出した保険料を、1年間の支払保険料として申請します。一括払保険料が100,000円で、保険期間が5年の地震保険では、1年あたりの保険料が20,000円となるので、控除額は20,000円です。


なお、「一定の長期損害保険等に係る損害保険料(旧長期損害保険料)」の要件を満たしている場合も地震保険料控除の対象となりますが、計算方法が異なります。それぞれの保険ごとの計算方法をまとめると以下のとおりです。

区分 年間支払保険料 控除額
①地震保険料 50,000円以下 年間支払保険料の全額
50,000円超 一律50,000円
②旧長期損害保険料 10,000円以下 年間支払保険料の全額
10,000円超〜20,000円以下 年間支払保険料×1/2+5,000円
20,000円超 一律15,000円
①②の両方がある場合 ①②の控除額の合計(最高50,000円)
区分 年間支払保険料 控除額
①地震保険料 50,000円以下 年間支払保険料の全額
50,000円超 一律50,000円
②旧長期損害保険料 10,000円以下 年間支払保険料の全額
10,000円超〜20,000円以下 年間支払保険料×1/2+5,000円
20,000円超 一律15,000円
①②の両方がある場合 ①②の控除額の合計(最高50,000円)

上記のように、契約している保険の区分や年間支払保険料によって、控除額の計算式が異なる点にご注意ください。

住民税

所得税等と同様に、住民税の場合も地震保険料の支払額が50,000円以下か50,000円超であるかが基準となり、それぞれ以下のように控除されます。


  • 地震保険料の年間支払額が50,000円以下:支払保険料の1/2が控除
  • 地震保険料の年間支払額が50,000円超:一律25,000円の控除

例えば、地震保険料の年間支払額が30,000円の場合は、その半分の15,000円が控除されます。一方、地震保険料の年間支払額が60,000円の場合は、60,000円が控除されるのではなく、控除額は25,000円までです。


一括払保険料が100,000円で保険期間が5年の地震保険では、1年あたりの保険料が20,000円となるため、控除額は10,000円となります。


「一定の長期損害保険等に係る損害保険料(旧長期損害保険料)」については地震保険料控除の対象となりますが、計算方法が異なります。それぞれの区分ごとの計算方法をまとめると以下のとおりです。

区分 年間支払保険料 控除額
①地震保険料 50,000円以下 年間支払保険料×1/2
50,000円超 一律25,000円
②旧長期損害保険料 5,000円以下 年間支払保険料の全額
5,000円超〜15,000円以下 年間支払保険料×1/2+2,500円
15,000円超 一律10,000円
①②の両方がある場合 ①②の控除額の合計(最高25,000円)
区分 年間支払保険料 控除額
①地震保険料 50,000円以下 年間支払保険料×1/2
50,000円超 一律25,000円
②旧長期損害保険料 5,000円以下 年間支払保険料の全額
5,000円超〜15,000円以下 年間支払保険料×1/2+2,500円
15,000円超 一律10,000円
①②の両方がある場合 ①②の控除額の合計(最高25,000円)

上記のように、所得税とは控除額の計算方法が異なるため、混同しないように注意しましょう。

地震保険料控除の手続き方法

地震保険料控除を受けるには、年末調整や確定申告で控除の手続きをする必要があります。ここでは、それぞれの手続き方法を解説します。

年末調整

一般的に会社員や公務員などの給与所得者は、勤務先で年末調整の手続きをおこないます。その際に、「地震保険料控除証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付し、勤務先に提出することで、地震保険料控除の手続きは完了する場合が多いです。


地震保険の契約を結んでいる保険会社によって異なりますが、「地震保険料控除証明書」の届く時期は毎年10月以降になることが一般的です。地震保険を契約した最初の年に関しては、保険証券に同封されている場合があります。


「給与所得者の保険料控除申告書」は、年末調整の時期が近づくと勤務先から配布されます。「給与所得者の保険料控除申告書」の地震保険料控除の記入欄に、保険会社や年間支払保険料などを記入しなければなりません。


地震保険料控除の記入方法は以下のとおりです。


【地震保険料控除の記入方法】

番号 項目 記入内容
1 保険会社等の名称 控除証明書に記載されている
保険会社名(略称可)を記入
例)〇〇損保
2 保険等の種類(目的) 控除証明書に記載されている
保険の種類を記入
例)地震
※1つの契約が地震保険料と旧長期損害保険料の両方に該当する場合、
一般的に控除額が大きくなる地震保険料の金額を記入する
3 保険期間 控除証明書に記載されている
保険期間を記入
例)5年
4 保険等の契約者の氏名 控除証明書に記載されている
契約者の氏名を記入
例)田中一郎
5 保険等の対象となった家屋等に居住又は家財を利用している者等の氏名 保険の対象になっている建物や家財を
利用している方の氏名を記入
例)田中一郎
6 地震保険料又は
旧長期損害保険料区分
控除証明書に記載されている「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の区分に◯
例)地震
7 A:あなたが本年中に支払った保険料等のうち、
左欄の区分に係る金額
(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
控除証明書に記載されている
控除対象保険料を記入
※証明額ではなく、
差引本年度控除対象予定額を記入する
8 B:Aのうち地震保険料の金額の合計額 地震保険料の「申告額」の
合計額を記入
9 C:Aのうち旧長期損害保険料の金額の合計額 旧長期損害保険料の「申告額」の
合計額を記入
10 地震保険料控除額(Bの金額) 8の金額を記入(最高50,000円)
11 地震保険料控除額(Cの金額) 9の金額を記入
  • 10,000円を超える場合
  • 旧長期損害保険料の合計額×1/2+5,000円
  • 15,000円を超える場合:15,000円
12 地震保険料控除額 10と11の合計額を記入(最高50,000円)
番号 項目 記入内容
1 保険会社等の名称 控除証明書に記載されている
保険会社名(略称可)を記入
例)〇〇損保
2 保険等の種類(目的) 控除証明書に記載されている
保険の種類を記入
例)地震
※1つの契約が地震保険料と旧長期損害保険料の
両方に該当する場合、
一般的に控除額が大きくなる地震保険料の金額を記入する
3 保険期間 控除証明書に記載されている
保険期間を記入
例)5年
4 保険等の契約者の氏名 控除証明書に記載されている
契約者の氏名を記入
例)田中一郎
5 保険等の対象となった家屋等に
居住又は家財を利用している者等の氏名
保険の対象になっている建物や家財を
利用している方の氏名を記入
例)田中一郎
6 地震保険料又は
旧長期損害保険料区分
控除証明書に記載されている「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の区分に◯
例)地震
7 A:あなたが本年中に支払った保険料等のうち、
左欄の区分に係る金額
(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
控除証明書に記載されている
控除対象保険料を記入
※証明額ではなく、
差引本年度控除対象予定額を記入する
8 B:Aのうち地震保険料の金額の合計額 地震保険料の「申告額」の
合計額を記入
9 C:Aのうち旧長期損害保険料の金額の合計額 旧長期損害保険料の「申告額」の
合計額を記入
10 地震保険料控除額(Bの金額) 8の金額を記入(最高50,000円)
11 地震保険料控除額(Cの金額) 9の金額を記入
  • 10,000円を超える場合
  • 旧長期損害保険料の合計額×1/2+5,000円
  • 15,000円を超える場合:15,000円
12 地震保険料控除額 10と11の合計額を記入(最高50,000円)

国税庁「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」を元に作成


こちらの記入方法を参考にしながら、ご自身の「地震保険料控除証明書」をもとに地震保険料控除欄を記入してみてください。

確定申告

自営業やフリーランスなどの個人事業主の場合は、年末調整ではなく、自分で確定申告をおこないます。


地震保険料控除を受けるには、まず、確定申告書の地震保険料控除の欄に必要な事項を記入します。その際に、支払金額や控除を受けられることを証明する書類あるいは、電磁的記録印刷書面を添付する必要があります。


または、支払金額や控除を受けられることを証明する書類を、申告の際に提示する方法でも地震保険料控除の申請手続きが可能です。

地震保険料の控除についてのまとめ

地震保険料控除を受けることで、所得税等と住民税の支払額が軽減されます。ただし、控除が適用されるには、年末調整や確定申告での保険料控除の手続きが必要です。地震保険に加入した際は、控除の申請を忘れないように注意しましょう。


また、これから地震保険への加入を検討している方は、火災への備えに加えて、地震や台風などの自然災害による損害もしっかり保障するJA共済の「建物更生共済むてきプラス」を検討してみてはいかがでしょうか。


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参考・出典元:
国税庁 No.1145地震保険料控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm

国税庁 法第77条《地震保険料控除》関係
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/16/04.htm

東京都主税局 個人住民税
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_07

国税庁 令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2024bun_04.pdf

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