財形貯蓄とは?基礎知識やメリット・デメリットを解説

財形貯蓄とは?基礎知識やメリット・デメリットを解説

人生にはさまざまなライフイベントがあり、マイホーム購入資金や子どもの教育資金、老後の生活費など大きな資金が必要になります。これらのライフイベントに向けてまとまった資金を準備するための制度のひとつに「財形貯蓄」があります。財形貯蓄は、福利厚生の一環として会社に導入されている制度で、資産形成に際して有効な手段といえます。

財形貯蓄には3つの種類があり、それぞれに利用目的や特徴が異なります。そこで今回は、財形貯蓄の基本的な仕組みや3種類の特徴の違い、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。

本内容は、令和5年5月の制度等にもとづき、記載しています。

財形貯蓄とは

財形貯蓄とは、国と事業主が従業員の財産形成を支援する「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」のひとつであり、給与天引きにより積立ができる貯蓄制度です。制度を利用することで毎月の給与や賞与から一定額が天引きされるため、手間をかけずに自動的に先取り貯蓄が可能です。


天引きされたお金は、勤務先が提携する金融機関の商品から選んで積立されます。提携先の金融機関が銀行であれば定額預金・定期貯金など、保険会社であれば貯蓄性のある生命保険(共済)や損害保険(共済)など、証券会社であれば投資信託や国債などの商品があります。

一般財形貯蓄

「一般財形貯蓄」は積立金の用途が限定されていないため、お金を自由に使えます。例えば、車の購入費用や旅費、引越し費用、結婚資金や教育資金など幅広い目的に活用できます。原則3年以上積立を継続する必要がありますが、積立開始から1年が経過していればいつでも自由に払出しが可能です。


そのため、急な出費などにもフレキシブルに対応できます。契約時の年齢制限もなく、複数の金融機関と契約することも可能で、積立限度額も原則ありません。ただし、なかには制限を設けている金融商品もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。


自由度が比較的高い一方、一般財形貯蓄には税制上の優遇措置はありません。「財形年金貯蓄」や「財形住宅貯蓄」の場合、550万円までは利子などが非課税になりますが、一般財形貯蓄の場合は普通預金などと同様の扱いとなり、利子などに対して20.315%(国税15%、地方税5%、2037年まではさらに復興特別所得税0.315%が付加)が課税されます。

なお、一般財形貯蓄は、財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄との併用も可能です。


財形年金貯蓄

「財形年金貯蓄」は老後の資金づくりを目的に積み立てる貯蓄のことです。5年以上の積み立てが必要で、積み立てた資金を受け取れるのは原則として満60歳以降となります。一括で受け取れず、5年以上20年以内の期間にわたって年金形式で受け取ります。財形年金貯蓄を利用できるのは満55歳未満の従業員で、一人1契約までとされています。


一般財形貯蓄と異なり、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄には税制上の優遇措置があります。財形住宅貯蓄とあわせた貯蓄残高550万円までに対しては利子などに税金がかかりません。保険(共済)を利用した財形年金貯蓄のみで積み立てる場合は、払込額385万円までが非課税となります。


ただし、年金以外の目的で解約・払出しをする場合は非課税扱いとはならないため、注意が必要です。なお、災害や疾病などの理由によって払出しをする場合は、一定の条件を満たしていれば非課税となります。


財形住宅貯蓄

「財形住宅貯蓄」は、住宅の新築・購入・リフォームのための資金づくりを目的として積み立てる貯蓄です。購入する住宅は、戸建て・マンションともに対象です。住宅取得後に1回、または住宅取得前後に2回に分けて払出しが可能となります。その他、財形年金貯蓄と同様に満55歳未満の従業員が新規加入の対象で、一人1契約まで、そして積立期間は5年以上となっています。


前述のとおり、財形住宅貯蓄も非課税措置がとられており、財形年金貯蓄とあわせて貯蓄残高550万円までが非課税の対象です。ただし、マイホーム購入やリフォームの目的以外で払出しをする場合は、全額払出し・契約解除となって課税対象となってしまいます。なお、災害や疾病などの理由による払出しは、財形年金貯蓄と同様、一定の条件を満たしていれば非課税措置が適用されます。


 今までの3つの種類の財形貯蓄の説明を簡単にまとめると次表のとおりです。 


<財形貯蓄制度>

種類 目的 税制優遇措置
一般財形貯蓄 自由 なし
財形年金貯蓄(※) 年金として受取(満60歳以上) 財形住宅と合算して550万円まで利子非課税
財形住宅貯蓄(※) 住宅の取得・増改築の費用に充当 財形年金と合算して550万円まで利子非課税

※契約時に55歳未満である勤労者が加入できます

出典:厚生労働省ホームページより

財形貯蓄のメリット

では、財形貯蓄を利用するメリットとして、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、財形貯蓄の3つのメリットについて紹介します。

確実に資産形成ができる

財形貯蓄は、毎月の給与から一定額が自動的に天引きされるため、半強制的に積み立てられます。上手な資産形成をおこなうポイントは、給与から最初に一定額を貯蓄にまわして、残ったお金で生活する先取り貯蓄をおこなうことです。先取り貯蓄が自動的に可能となるのが財形貯蓄であり、財形貯蓄の大きな魅力の一つであるといえます。節約や貯金が苦手な方でも、確実に資産形成が可能です。


税の優遇措置がある

財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、それぞれの制度で認められた目的のために積立金を利用するのであれば、税の優遇措置が受けられます。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて550万円までの積立金にかかる利子などは課税されません。預貯金の利息には、本来20.315%の税金がかかるため、財形貯蓄制度を利用することで効率的に資産形成が可能となります。ただし、一般財形貯蓄については非課税の優遇措置はありません。


企業によっては給付金を受け取れるケースも

財形貯蓄制度を導入する企業のなかには、福利厚生制度のひとつとして「財形給付金制度」や「財形基金制度」をあわせて取り入れ、従業員の資産形成を援助促進してくれる企業もあります。この制度は従業員の貯蓄奨励策として、財形貯蓄をしている従業員に対して毎年定期的に給付金を支給してくれる制度です。これにより、従業員は資産形成をスピードアップできるため、大きな魅力のひとつとなります。

財形貯蓄のデメリット

メリットだけを認識して安易に始めるのではなく、デメリットについても理解しておくことが重要です。財形貯蓄における主なデメリットを3つ解説していきます。


種類の切り替えは途中でできない

一度契約して積み立てを開始したら、「一般財形貯蓄から財形住宅貯蓄に」などのように用途を途中で変えられません。この場合は、一般財形貯蓄を一度解約して財形住宅貯蓄に加入し直す、もしくは、3種類の財形貯蓄は同時加入が可能なため、財形住宅貯蓄を別途新規で契約することになります。


また、財形貯蓄では、会社が提携する金融機関によってさまざまな財形商品があります。しかし、一度契約すると他の財形商品への変更ができないケースもあるため注意が必要です。


一般財形貯蓄の場合、3年以上財形貯蓄を保有していれば別の金融機関の財形商品に預け替えが可能です。一方で、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の場合は、保有期間を問わず、別の金融機関の財形商品に変更はできません。


会社が財形貯蓄制度を採用していないと使えない

財形貯蓄制度を利用できるのは、制度を採用している会社の従業員である必要があります。つまり、制度を採用していない会社の従業員、そして自営業者や会社役員も利用できません。


また、退職時や転職時には注意が必要です。転職先が制度を採用していない場合も、一定期間を超えたのちに強制解約となります。非課税措置が受けられるはずの財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、目的外の引き出しに該当するため、払出し時に課税されて税制メリットがなくなります。


ただし、退職後2年以内であれば引き継ぎの手続きが可能です。


元本割れする可能性がある

財形貯蓄で積み立てる商品のうち、保険(共済)や投資信託などの商品は元本保証がありません。保険(共済)の場合は積み立てを始めてから早期に解約したとき、投資信託の場合は運用がうまくいっていないときなどに元本割れする可能性が高くなります。財形貯蓄で選べる商品は、勤務先が提携する金融機関によって異なりますが、定期預金以外の金融商品を選ぶ際には元本割れのリスクに注意が必要です。

まとめ

財形貯蓄制度は、国と事業主が従業員の財産形成を支援する制度のひとつです。自動的に給与から積み立てされていくため、確実に資産を蓄えていくために有効です。


また、財形貯蓄を利用する以外にも、貯蓄性のある積立保険(共済)などを活用して資産形成する方法もあります。一度契約すれば自動的に保険料が払い込まれるため、財形貯蓄と同様に知らないうちに貯められる仕組みをつくれます。

積立保険(共済)は一般的に死亡保障がついているため、万が一の際の保障を用意すると同時に将来に向けての貯蓄が可能です。貯蓄だけでなく、リスクに対しても備えておきたいという方は、保険(共済)加入も選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。


参考:
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/index.html


勤労者財産形成事業本部
https://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/


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