車両保険の免責とは?免責の意味や設定されている理由について
“家と車”に関するねだんのこと
2022.12.19
車両保険(共済)を調べたり見積もりをとったりする際に「免責」や「免責金額」という言葉を聞いたことはないでしょうか。保険における免責とは、損害が発生しても保険会社が保険金を支払う責任を免れることです。そして免責金額は、保険の加入者が自己負担する金額を指します。
ここでは、車両保険(共済)の免責の意味や設定されている理由を解説したうえで、保険料との関係や免責金額を設定する際の考え方について紹介します。車両保険(共済)の免責について疑問を持っている方はぜひ参考にしてみましょう。
本内容は、令和4年10月の制度等にもとづき、記載しています。
本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。
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車両保険の免責とは?
車両保険(共済)とは、事故や自然災害、盗難などで自動車が損害を受けた場合に補償が受けられるタイプの自動車保険(共済)のこと。免責は、その保険金が支払われる際に一定の金額まで自己負担することをいいます。車両保険(共済)に加入する際に、あらかじめ一定の免責金額を設定するのが一般的です。
例えば交通事故で自動車が壊れて30万円の修理費用がかかった場合、免責金額を10万円に設定していれば、20万円の保険金が支払われ、10万円は自己負担することになります。
免責金額は何のためにあるのか
車両保険(共済)の免責金額は何のためにあるのでしょうか?主な理由についてチェックしていきましょう。
不正の未然防止のため
車両保険(共済)の免責金額は、不正な保険請求などを防止する目的があります。そもそも車両保険(共済)は、交通事故や自然災害、盗難といったやむを得ない事情で損害を受けた場合に保険金が支払われるものです。しかし、残念ながら保険金目当てでわざと事故を起こして請求されるケースもあります。
不正な請求でないことを確認するために、相手のいない単独事故や自損事故では保険会社の調査が入ることが一般的です。そのため、不正な単独事故や自損事故が多いほど、保険会社は調査のための事務負担が増えてしまいます。免責金額があることで、車両保険(共済)の加入者は一定金額まで自己負担しなければいけないため、このような不正行為を未然に防ぐ効果があります。
保険料負担の軽減
車両保険(共済)の免責金額は、加入者の保険料負担を軽減する効果もあります。免責金額があると、保険会社はその分を保険金として支払わなくてよいため、一般的に保険料は安くなります。
車両保険(共済)は、事故相手や自分のケガなどを補償するタイプの自動車保険(対人賠償保険、人身傷害保険など)と異なり、加入するかどうかの意見がわかれやすいものです。修理費用などの補償は受けたいものの、その分保険料が高くなるため車両保険(共済)に加入しない方もいます。
しかし免責金額を設定することでその分保険料を抑えられるので、車両保険(共済)に加入するハードルが下がる方もいるでしょう。免責金額は加入者の保険料負担を減らして、車両保険(共済)に入りやすくする仕組みでもあるのです。
免責金額の設定パターン
車両保険(共済)の免責金額を設定するパターンとして、「増額方式」と「定額方式」があります。増額方式は、1回目より2回目以降の事故で免責金額が増えるタイプです。一方定額方式では、事故の回数に関わらず免責金額が変わりません。
それぞれの方式で、免責金額の設定例を見ていきましょう。
設定パターン | 免責金額(自己負担額)の設定例 | 保険料の目安 | |
---|---|---|---|
1回目 | 2回目以降 | ||
増額方式 | 0円 | 10万円 | 高い 安い |
5万円(車対車免ゼロ特約あり) | 10万円 | ||
5万円(車対車免ゼロ特約なし) | 10万円 | ||
定額方式 | 0円 | 高い 安い |
|
5万円 | |||
10万円 | |||
15万円 | |||
20万円 |
設定パターン | 免責金額(自己負担額)の設定例 | 保険料の目安 | |
---|---|---|---|
1回目 | 2回目以降 | ||
増額方式 | 0円 | 10万円 | 高い 安い |
5万円(車対車免ゼロ特約あり) | 10万円 | ||
5万円(車対車免ゼロ特約なし) | 10万円 | ||
定額方式 | 0円 | 高い 安い |
|
5万円 | |||
10万円 | |||
15万円 | |||
20万円 |
増額方式では、このように1回目と2回目以降の免責金額をそれぞれ設定します。ここではわかりやすいように表にしていますが、「0-10万円」「5-10万円」というように1回目の事故の免責金額を前半に、2回目以降を後半に表記することが一般的です。
また表中にある「車対車免ゼロ特約」とは、1回目の事故で、他の自動車との衝突・接触事故である場合に免責金額なしで保険金が支払われる特約のことです。相手方の自動車の登録番号等がわかることが条件となります。同じ免責金額の設定パターンであれば、この特約があるほうが保険料は高くなります。
定額方式は1回目と2回目以降の免責金額が変わらないため、単純に選択肢のなかから金額を選びます。
増額方式は事故への不安が大きい方や、1回目の事故の免責金額を少なくしたい方に向いている方式です。免責金額は0円にもできますが、その分保険料は高くなります。一方、定額方式は、免責金額を大きくすれば増額方式より保険料を抑えやすいという特徴があります。ただし契約期間中に何回も事故があると自己負担も増えるため、注意が必要です。
このような特徴をふまえて、自分に合った免責金額の設定パターンを選びましょう。
免責金額設定の考え方
免責金額を設定する理由はわかったものの、どのくらいの金額を設定したらよいか迷う方もいるでしょう。ここでは免責金額を設定する際に、どのようなことに考慮すればよいか考え方の基準を紹介します。
どの程度の修理費用なら許容できるか
どの程度の修理費用なら支払えるかというのは、車両保険(共済)の免責金額を設定するうえで目安となる考え方です。このくらいの修理費用なら問題なく支払えそうだ、という金額を見極めてその範囲内で免責金額を設定すれば、万が一の際にも無理のない自己負担となるでしょう。
許容できる修理費用は、収入や支出、貯蓄の状況など人によって異なります。保険料を抑えるために免責金額を高くしすぎて、修理費用を自己負担する際に生活の支障にならないよう気を付けなければなりません。
例えば貯蓄が100万円あり、そのうち10万円程度なら修理費用として支払っても問題ないのであれば、その範囲内で免責金額を設定するのも一案です。自分の家計の状況を把握したうえで、無理のない免責金額を設定することをおすすめします。
等級が下がることによる保険料の増加
前述のとおり、車両保険(共済)を使うことで保険料が上がる場合があります。これは通常、車両保険(共済)の保険金を受け取ることで翌年以降の等級が下がるためです。
等級(ノンフリート等級)とは、自動車保険(共済)の保険料の割引率を決めるための区分のこと。1~20等級まであり、数字が増えるほど保険料が安くなる仕組みです。そのため車両保険(共済)を使うことで等級が下がれば、車両保険(共済)の保険料は上がってしまいます。
車両保険(共済)を使うことで上がる保険料と、修理費用などの自己負担額を比較して、適切な免責金額を設定することをおすすめします。保険会社のシミュレーション機能を活用して「〇万円までなら自己負担で修理費用を支払ったほうが安い」というように、免責金額と翌年以降の保険料とのバランスを考えてみましょう。
自己負担が発生しないケース
車両保険(共済)の保険金が支払われる場合に自己負担が発生しないケースもあります。代表的なケースを見てみましょう。
事故の相手方から賠償金を受ける場合
事故で自動車に損害を受けた場合、責任割合によっては相手方から賠償金が支払われることもあるでしょう。その際、賠償金が車両保険(共済)の免責金額以上であれば自己負担なく保険金を受け取れます。
車両保険(共済)の免責金額を10万円に設定しているケースで考えてみましょう。
【前提条件】
事故の責任割合:自分40%、相手方60%
自分の自動車修理費用:30万円
受け取れる賠償金:18万円<修理費用(30万円)×相手方の責任割合(60%)>
上記の前提では、まず賠償金のうち10万円が免責金額に充当され、残りの8万円が保険会社に回収されます。受け取った賠償金は優先的に免責金額(自己負担額)に充当されるため、賠償金が免責金額を超えている今回のケースでは、自己負担は発生しません。
一方、賠償金が免責金額より少ない場合、自己負担額は免責金額から賠償金を差し引いた金額となります。
全損となった場合
自動車が全損した場合も、自己負担が発生しない代表的なケースです。全損とは自動車が修理できない状態まで壊れること(物理的全損)、もしくは損害を受けた自動車の時価より修理費用が高いこと(経済的全損)をいいます。また、盗難などで自動車が見つからず現実的に修理できない場合も全損とみなされます。
全損の場合、免責金額は保険金から差し引かれません。つまり自己負担なく保険金が受け取れるのです。ただし修理費用が車両保険(共済)の保険金額(契約金額)を超える場合、自己負担が発生することがあります。通常このようなケースでは、契約している保険金額に上乗せして「臨時費用保険金」が支払われますが、保険金額の10%(上限20万円)が限度となるのが一般的です。
また地震や噴火、これらによる津波で全損した場合も、通常は車両保険(共済)の保険金は支払われません。なぜなら、これらの災害では被害額が高額になりやすく、保険会社の負担が大きいためです。ただしこれらによる損害をカバーする特約を付けることで、補償を受けられる場合があります。車両保険(共済)の加入を検討している保険会社の特約を確認してみましょう。
まとめ
車両保険(共済)の免責金額とは自己負担額のことで、加入時に設定した金額が保険金から差し引かれます。免責金額を設定することで保険料の軽減につながるため、車両保険(共済)への加入を考えている方は今回紹介した「免責金額設定の考え方」を参考に、自分に合った金額を決めましょう。
車両保険(共済)は、自分の自動車が損害を受けた場合に補償が受けられる自動車保険(共済)です。事故の相手方から賠償金を受け取れる場合でも、その金額は過失の割合に応じて決まるため、修理費用のすべてを補えるわけではありません。このようなリスクに備えて、車両保険(共済)への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
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