休職したときの給料はどうなる?制度・サポート・注意点を解説
“就労”に関するねだんのこと
2022.09.21
今の会社は辞めたくないけど、病気やケガなどの事情があって一定期間休まなければならない。そんなとき、会社から給料はもらえるのでしょうか。生活を続けるためにはお金が必要になりますが、実は休職中の給料は支払われないことも少なくありません。そこで、もしものために政府の制度やサポートを確認しておきましょう。
本内容は、令和4年8月の制度等にもとづき、記載しています。
この記事を読むと分かること
- 休職時の流れ
- 休職中に受けられるサポート
- 休職中の注意点
見出し
休職とは
そもそも休職とは、中央労働委員会の定義によると「ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約そのものは維持させながら労務への従事を免除することまたは禁止すること」とのこと。
これは労使関係の話のため、労働法には定められていません。それぞれの企業の「就業規則」によって、休業の種類や制度が決められています。例えば、病気やケガによる「傷病休職」、勤務外の事故による「事故休職」、起訴されて判決が確定されるまでの「起訴休職」などがあるようです。
このようにさまざまな事情により休職をするケースがありますが、給料が支払われるかどうかについても「就業規則」で定められています。つまり、会社によって対応は異なるため、まずは自分の会社の制度を確認しておく必要があるでしょう。一定期間のみ満額や半額を支給される会社もありますが、一切支給がない会社もあります。
では、休職中に会社から給料がもらえない場合、どうすればよいのでしょうか。休職中に受けられる社会的なサポートを確認してみましょう。
休職する際の流れ
病気やケガにより休職する場合、一般的には以下のような流れになります。
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病院で診断書をもらう
病気やケガで働けない状態である場合には、医師の診断書が必要です。病院で診察を受け、診断書を発行してもらいましょう。
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会社に休職を申し出る
上司または人事担当者に休職を希望する旨を申し出ます。体調不良により出社が難しい場合には、電話で伝えてもかまいません。
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休職スケジュールを相談
病院での診断結果をもとに、いつからいつまで休職するかのスケジュールを決めます。休職可能な期間は、会社によって異なります。就業規則も確認しておきましょう。
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休職届を提出
休職開始日および復職予定日が決まったら、会社に休職届を提出します。会社で所定の書式がある場合はそれに記入し、なければ自分で書式を作成しましょう。休職届には、病院でもらった診断書も添付します。
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休職中の連絡方法や手続きを確認
休職期間が開始しても、会社から業務上の連絡が来たり、会社へ経過報告をおこなったりする必要があります。連絡方法や報告の頻度については、あらかじめ話し合っておきましょう。傷病手当金の申請や社会保険料の納付についても確認が必要です。
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仕事の引き継ぎ
休職すればどうしても職場の同僚に迷惑をかけてしまいます。仕事の引き継ぎはできる限り事前にしておきましょう。
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休職に必要な手続きは、就業規則で定められている場合が多くなっています。上記はあくまで一般的な休職の流れであり、会社によっては異なる場合もあります。そのため事前に就業規則を確認しておくと安心でしょう。
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休職中に受けられるサポート
休職中に受けられる公的サポートには「休業補償給付」と「傷病手当金」の二種類があります。それぞれの特徴と気になる支給額、受給するための条件・方法をまとめました。
休業補償給付
特徴:業務や通勤時の原因による休職、つまり労災にあたる場合に労災保険から受けられる給付制度。
支給要件:
- 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
- 労働することができていない
- 賃金を受けていない
支給額:
休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数
※休業の初日から第3日までを待機期間といい、この間は業務災害の場合は事業主が労働基準法の規定に基づいて休業補償をおこないます。
支給期間:上記の支給要件をみたしている限り制限なし
※ケガや病気が治るなどして支給要件を満たさなくなれば、それ以降は休業補償を受けることができなくなるため、注意が必要です。
申請方法:「休業補償給付支給請求書」または「休業給付支給請求書」を提出します。以下の手順によって給付を受けることができます。
- 事業主・医療機関が請求書に証明
- 被災労働者が請求書を労働基準監督署に提出
- 労働基準監督署から支給決定通知が来る
- 厚生労働本省を通じて支払いを受ける
傷病手当金
特徴:業務や通勤時に原因がなく労災に当たらない場合に、加入している健康保険から給付される手当金で、被保険者とその家族の生活を保障するために定められた制度。
支給要件:
- 業務外の事由による病気やケガの療養のため
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
- 賃金を受けていない
支給額:
1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×3分の2
支給期間:1年6ヵ月
申請方法:「健康保険傷病手当金支給申請書」を記入し、医師・事業主にも証明書をもらい、加入している健康保険の窓口へ提出します。
休職中に注意しなければならないこと
休職中にも公的サポートが受けられることは分かりましたが、そこで安心していてはいけません。休職中に注意しておくべきことを3点お伝えします。
休職中に給料が支払われない場合でも社会保険料は免除にならない
休職とは一定期間会社を休むことなので、会社との契約はそのまま続いています。つまり、社会保険を受ける権利は存続していて、社会保険料も支払い続けなければいけません。会社で働いている間は月々の給料から控除されることが多いかと思いますが、休職中は会社から直接社会保険料を徴収されることになります。
サポートの申請には会社側の承認が必要
休職補償給付、傷病手当金どちらを申請する際にも、事業主の証明が必要になります。そのため、休職に入る前に会社に書類を提出しておくことを忘れないようにしましょう。また更新の際にも郵送などで書類のやり取りをする必要があります。
実際に支給を受けるまでには時間がかかる
支給を受けるために、休業補償給付では労災認定を受けて書類を揃える必要がありますし、傷病手当金でも医師と事業主両方に証明をしてもらう必要があります。そのため、一つ一つに時間がかかり場合によっては数ヵ月かかることもあるそうです。
会社を休職している間の給料が支払われるかどうかは、会社の規定によって変わります。また、公的サポートを受けるにしても時間がかかる場合もあるので、万が一に備えて民間のサポートを検討するなど、もしものことがあった場合には早めに申請を進めることをおすすめします。
休職期間の満了
休職期間満了時の扱いについて、就業規則で確認しておく必要があります。休職に関しては法律による規定はなく、休職期間についても各会社が自由に定められます。休職期間は短いところで3ヵ月程度、長くても3年程度です。
復職するためには、以前のように職務をおこなえる健康状態に回復していなければなりません。病気やケガの状態によっては、会社が定めている休職期間内に回復しない可能性もあります。休職期間は延長できる場合もあるため、規定の期間内での復職が難しそうな場合は、会社に相談してみるのがおすすめです。
休職期間満了までに復職できない場合、退職または解雇の扱いとする旨が就業規則に定められている会社が多くなっています。もし休職期間中に回復せず、休職期間の延長もできない場合には、会社を辞めざるを得ません。回復の状況をみながら今後のことを考えましょう。
会社を退職・解雇になったあとも、以下の表に示すような条件を満たしていれば、継続して休業補償給付や傷病手当金の受給が可能です。受けられるサポートは最大限活用しましょう。
退職後に受け取る条件 | 受給できる期間 | |
---|---|---|
休業補償給付 |
|
制限なし |
傷病手当金 |
|
支給開始日から1年6ヵ月 |
退職後に受け取る条件 | 受給できる期間 | |
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休業補償給付 |
|
制限なし |
傷病手当金 |
|
支給開始日から 1年6ヵ月 |
まとめ
病気やケガで休職している期間中は、会社から給料は支払われないのが一般的です。ただし、給料のかわりに、労災保険からの休業補償給付や加入している健康保険からの傷病手当金が受け取れる可能性があります。こうした公的サポートの申請には会社の承認が必要です。休職期間に入る前に会社に手続きや書類の確認をしておきましょう。
休職できる期間には限度があります。期間満了までに復職できなかったら、会社を辞めなければなりません。会社を辞めたあとも、病気やケガなどで仕事に就くことが難しい場合などの支給要件を満たせば公的サポートを継続して受けられる場合もあるため、制度を活用しながら再就職に備えましょう。