20代から要注意!? 気になる“女性特有のがん”の治療法・予防法・費用について聞いてみた

がんは、日本人が最も気を付けなければならない病気のひとつ。なかでも20~50代の女性が発症するがんの多くが、子宮頸がんや乳がんなどの女性特有のがんと言われています。男性よりも若いうちにがんを発症する可能性が高いため、早いうちからがんの知識を持っておくことが大切。そこで帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科准教授で医学博士の渡邊清高先生に、女性特有のがんのうち「子宮頸がん」と「乳がん」についてお話をうかがいました。

「子宮頸がん」は性交渉をきっかけにしたウイルス感染がリスクに

子宮頸がんは30代前半〜50代前半が罹患のピークと言われており、およそ70人に1人の割合で発症するとされています。他のがんとは異なり、発がんの危険因子について多くのことがわかっているがんといえます。


「子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる場所から発生します。子宮頸がんの発生には、『HPV(ヒトパピローマウイルス)』の感染が関与しています。性交渉を経験したことがある人ならば誰でも感染するリスクがあり、避妊をしていても、特定のパートナーのみの性交渉でも感染の可能性があります。HPV感染そのものは決してまれではなく、感染しても多くの場合免疫によって排除されるのですが、排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生すると考えられています。HPV以外に、喫煙も子宮頸がん発生のリスクを高めることがわかっています。HPVワクチンは、HPV感染を防ぐことによって子宮頸がんのリスクを下げる効果が期待されていますが、接種後の痛みなどの副作用に関する情報が十分提供できていない状況にあることから、現時点で日本では積極的な勧奨が差し控えられています」(渡邊先生)


子宮頸がんの予防や早期発見のためには「子宮頸がん検診を定期的に受けることが大事」と渡邊先生は言います。


「子宮頸がんは自覚症状が出にくいがんで、不正出血や生理の回数が多いなどの症状をきっかけに検査を受診し子宮頸がんと診断された場合にはすでに進行しているおそれがあります。だからこそ症状がないうちに検診を受けることが大切。忙しいとか恥ずかしいという理由で若い人の受診率が低いことが課題です。20歳になったら2年に1回定期的に検診を受けるようにしましょう」(渡邊先生)

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乳がんは40〜50歳代が発症のピーク、マンモグラフィによる検診が有効

乳がんは40〜50歳代が罹患のピーク。しかも12人に1人の割合で発症するとも言われており、女性特有のがんのなかでも最も発症する人が多いがんです。


普段から自分で定期的に乳房を触診する習慣をつけておきましょう。もし、乳房にしこりを触れたり、違和感があったりしたら医療機関を受診してください。ただし、症状がなくても40歳以上になったら定期的に検診に行くことが大切です。検査の方法には「マンモグラフィ」と「超音波検査」の2種類がありますが、その違いについて渡邊先生は次のように話します。


「マンモグラフィは、乳房を片方ずつ、台と透明な板で挟んで、乳房を平らにした状態でX線を当てて撮影する検査です。平らにするのは痛いのですが、より詳しく見ることができることと、厚さが薄くなることで被ばくの線量を減らすことができます。しこりを触れるなどの自覚症状がなくても、マンモグラフィによって、早期の段階でがんの可能性のある病変を見つけることができます。超音波検査は、乳房に超音波を当てて反射する信号を画像化することで、乳房の中の構造を調べる検査です。被ばくがないため乳腺組織の発達が盛んな若い女性の検査や妊娠中の検査として、あるいはマンモグラフィと組み合わせて行われることがあります。自治体で行われているがん検診として、40歳以上の女性は2年に1回症状がなくてもマンモグラフィによる乳がん検診を受けることが勧められています」(渡邊先生)


つまり、若い女性は超音波検査、年齢を重ねた人はマンモグラフィが適しているということなのでしょうか。


「そうとも言えますが、40歳未満の女性では乳腺密度が濃く、マンモグラフィで疑陽性と診断される割合が高いため、病気がなくても要精密検査と判定されることもあり、精密検査に伴う身体的・心理的負担などを考慮すると必ずしも積極的に検査を受けなくてもいいと考えられています。一方で、近親者の方に乳がんの方がいる場合などでは検査が勧められる場合もあります。わからない場合は検診機関や医療機関に相談してみましょう」(渡邊先生)

もしも、がんにかかってしまったら……

禁煙など日頃の生活習慣に気をつけていても、もしも乳がんや子宮頸がんなどのがんにかかってしまったら、どのような治療を受けることになるのでしょうか。


「子宮頸がんの場合、早期の段階であれば子宮頸部を円錐状に切除する手術『子宮頸部円錐切除術』が行われることがあります。この場合、子宮機能も温存できるので妊娠も可能です」(渡邊先生)


早期の段階であれば、妊娠出産ができる可能性があると聞くと、ますます検診が大切ということになりますね。しかし、どうしても気になるのが治療にかかる費用です。


「治療費には医療保険が適用され、実際の自己負担分は全体の医療費や年齢などによって大きく異なります。子宮頸部円錐切除術ではなく、医療費負担が大きくなる手術を受けることになった場合でも『高額療養費制度』が適用されることがあり、年齢や所得に応じて自己負担限度額が変わります」(渡邊先生)


高額療養費制度が適用される場合は、70歳未満で所得が年間約600万円以下であれば、自己負担限度額は8万100円+(総医療費—26万7,000円)✕1%となります。


乳がんの場合は、がんの進行度に合わせて手術や抗がん剤治療、ホルモン治療、放射線治療などの治療を組み合わせて行われます。場合によっては高額療養費制度が適用されることもあります。手続きや費用の相談は早めに医療機関の窓口に問い合わせてみましょう。


がんのつらさは治療そのもののつらさや金銭的な負担だけではありません。「心理的にも負担が大きい」と渡邊先生は言います。「副作用や後遺症に対する治療は日々進歩していますが、それでも耐えられない痛みや不安、心のつらさは声に出すことで初めて伝わります。つらいことはどんなことでもぜひ声に出して周りの人に伝えましょう。それが解決への第一歩だと思います」(渡邊先生)

対象年齢になったら必ず定期検診へ

社会に生きる1人として、キャリアを重ねたり、妻や母としての役割を担ったり、充実した日々を送るためにも、検診や治療のことについて正しい知識を身につけ、いざというときに慌てないことが大切です。


「多くのがんの罹患リスクは、年齢が上がるほど高くなります。適度な運動や禁煙、適切な体型を維持して健康を意識することとともに、何度も言うように定期検診を受けることも忘れずに。子宮頸がんなら20歳以上、乳がんなら40歳以上が検診を受ける対象年齢です。自覚症状が出てからでは、がんが進行している可能性もありますので、早期発見のためにも対象年齢に達したら2年に1回必ず受けてください」(渡邊先生)


万が一がんにかかってしまったら、不安になってしまう女性も多いはず。どのようにがんと向きあえばよいでしょうか。


「病気のことを正しく知り、自分と向き合うためには、相談できる窓口や本などからがんや治療についての“情報集め”をすること、医師との“よい関係”をつくることが大切。自分の病気のことを知り、治療についての情報を集め、担当医とコミュニケーションを密に取るようにしましょう。患者会など、病気や治療の体験を共有できる人たちとの交流の場が支えになることもあります」(渡邊先生)


がんのことを正しく知ることは、自分自身の命を守るだけでなく、大切な人を支えるときにも役に立ちます。2人に1人が一生のうちにがんにかかるという現代、検診を受けて早期発見を心掛けること、信頼できる情報源を知っておくこと、金銭面の不安がないように備えておくことが、もしもがんになったときの備えになります。

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