健康寿命とは?平均寿命とのちがいや定義について調べてみた

これからは健康寿命が大事、ということを聞いたことがあるけれど、実際に健康寿命について「よくわからないなぁ」と感じている方も多いのではないでしょうか。これからの時代、健康寿命がなぜ大事と言われているのでしょうか。日本成人病予防協会専務理事の安村禮子(れいこ)さんに教えてもらいました。

そもそも健康寿命ってなに?

安村さんによると、健康寿命とは「介護を必要としない、健康で日常生活に制限がない期間」のことなのだそう。


「基本的に身の回りのことを自分でできているうちは問題ないです。ですが、自分でトイレに行けなくなったり、自分でごはんを食べられなくなったり、介護が必要になってきたらそれは日常生活に制限がない状態とは言えないですよね」(安村さん)


人間は誰しも人生の後半には、体が思うように動かなくなってしまったり、誰かの手助けが必要になったりします。つまり、健康寿命とは、そこに至るまでの健康的で自立した生活ができている期間のことを指すのです。


しかし、「健康寿命で大事なのは定義の理解ではない」と安村さんは言います。


「健康寿命は、なるべくお医者さんにかからないように、自分の生活は自分でできるようにしようと作られたものであって、きちっとした定義とか、ここからここまでが健康寿命です、ということではないと思うんです。大事なのは、ちゃんと健康で生きましょうということだと思います」(安村さん)


健康寿命が終わったあとの生活は、介護や医療を頼りにした生活になります。とはいえ、健康寿命が短い人ばかりの社会だと、自ずと医療費や介護費がかさんでしまうことに。社会保障を持続可能な制度とする視点として目指すべきは、なるべく健康寿命を延ばして、医者にかかる期間を短くし、医療費を下げることでしょう。しかし、それ以上に大切なのは、人々が「なるべく健康に生活したい」と思うこと。つまり健康寿命とは、なるべく医者にかからない自立した健康的な生活を意識させることで、「人々の健康意識の向上」をうながすための概念なのです。

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健康寿命と平均寿命はどうちがう?

健康寿命に似た言葉として「平均寿命」があります。平均寿命とは0歳時における平均余命のことを指します。健康寿命を考えるとき「平均寿命と健康寿命の差がとても重要になる」のだと安村さんは言います。


「平均寿命と健康寿命の差が詰まらないと、医療費や介護費の高騰を抑えることができません」(安村さん)


平均寿命と健康寿命の差は「生活に支障が出る期間」ということ。生活に支障が出る期間は、何かしら医療や介護のお世話になっている可能性が高い期間ということになります。


いま現在、この差は約10年あるそうです。果たして、差は縮まりつつあるのでしょうか?


「実はあまり変わっていないんです。健康寿命が微増しているのですが、平均寿命も少しずつ延びているので、差が縮まっているかと言うと……国が望んでいるほどの顕著な縮まりはまだないと思います」(安村さん)

健康寿命を延ばすために意識すること

安村さんいわく、健康寿命を延ばすためには「テクテク、カミカミ、ニコニコ、ドキドキ、ワクワク」が重要なのだそう。「『テクテク』が運動、『カミカミ』が食事、『ニコニコ、ドキドキ、ワクワク』は生きがいやゆとりなど、心の問題です」(安村さん)


一番重要なのは生きがいですが、健康寿命を延ばすための行動は習慣付けが大切なのだそう。運動であれば、どれくらい運動をしないと意味がない、という話ではなく、いまの現状「+どのくらいできるか」を考えるのだそうです。たとえば、「+10分歩いてみる」、「+10分ストレッチをする」など、簡単なものでいいので、いまの生活より「+α」の運動を習慣づけることが大切なのです。


また、栄養の偏りなどの食に関する問題が広がっている現代では、きちんと食べることも健康維持には大切な要素のひとつ。しかし、安村さんによると、食事の目的は栄養補給だけではないそうです。


「食事は栄養を補給するためだけではなく、本来は人との会話を楽しんだり、季節を感じたり、『わあ、おいしそう』と目や鼻で感じたり、そういうイベントですよね。それこそが生きがいにつながっていくんです。一緒に食べてくれる人がいるから、おいしいものを作ろうと頑張れる。でも、その意欲がなくなると、そこでバランスを崩して食が細くなる。栄養が足りてないから運動もできないし元気も出なくなっていくという悪循環に陥るのです」(安村さん)


つまり「無理のない適度な運動」、「それを実行するためのバランスのとれた食事」、「それらを結びつける心のゆとりや楽しみ」の良い循環を習慣づけることが大事だということ。とはいえ、習慣というのはなかなか変えられるものではありませんね。どうすればいいのでしょう。


「若いうちに意識して生活するに越したことはないです。でも、習慣を変えるために重要なのは『意識』と『知識』なんです」(安村さん)


多くの人は、身近な人や有名人が病気にかかったとき、病気や健康に興味を持つけれど、一時的な興味で終わってしまうことが多いそうです。でも普段から、病気や健康について知識や意識を持っていれば、自分の健康状態に合わせて食事のメニューを一品足すなど、行動に変化が出てきます。


「健康寿命は、高齢者ばかりではなくて、やはり若いうちから意識することが大事。本来なら、若い人たちに意識してもらうことが一番いろんな意味で効果があるんです」(安村さん)


将来的に長く健康に生活するための重要な指標となる健康寿命。自分がどういった老後を過ごしたいかをイメージしながら、健康について考えてみてはいかがでしょうか。


【取材協力】
安村 禮子 特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 専務理事
日本成人病予防協会の役員として、健康管理士一般指導員の指導・育成に携わるとともに、多くの団体が主催する健康講習会の講師として幅広く活躍している。生活習慣病の予防や生きがいづくり、女性のための健康講座、食育の講演については、予備知識のない方でも分かりやすいと好評を得ている。
日本成人病予防協会が主催する「健康管理能力検定」(https://kentei.healthcare/

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