妊婦さん必見!妊娠から出産までかかる費用を総ざらい
“子育て”に関するねだんのこと
2019.03.14
妊娠してから出産までの期間は、妊婦さんにとって長いような短いようなかけがえのない時間です。お腹の中で赤ちゃんを育て、約10ヶ月のマタニティライフを終え、赤ちゃんの誕生を迎えることは、大変な大仕事ではありますが、同時にとても幸せなことでもあります。できれば何も心配事を抱えることなく、無事出産を迎えたいですよね。
妊娠期間中から避けて通れないのがお金の問題です。妊婦さんは自分の体とお腹の中の赤ちゃんのケアをする必要があり、これには当然のことながら費用がかかってきます。出産時、出産後も同様です。
いくら妊娠・出産が幸せなこととはいえ、費用がかかることを不安に感じる方もいるかと思います。しかしその心配は漠然とした「出産はお金がかかる」という考えが原因かもしれません。誰でも、得体の知れないものは必要以上にこわく感じてしまうものです。
妊娠から出産までの間にどういった費用がどれだけかかるのか把握しておければ、心とお財布の準備が整っていきます。また、妊娠・出産をサポートする各種の補助金も用意されています。この記事では、妊娠から出産に至るまでのお金の流れをご紹介したいと思います。
本内容は、令和4年12月の制度等にもとづき、記載しています。
本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。
見出し
出産費用の内訳・平均は?
まず、妊娠を確認するために産婦人科などで受診をします。この時の初診料は大体1~2万円程度が相場とされています。
妊娠していることがわかると、いよいよ妊婦さんとしての生活がスタートします。それまで健康だった人でも妊娠中は体調や体質に変化が起こりやすくなります。自分の身体のこと、そして赤ちゃんの成長の様子を確認するために妊婦健診を受けるようにしましょう。なお、厚生労働省は、出産までに受ける妊婦健診の合計回数の目安を「約14回」と推奨しています。
妊婦健診は住んでいる自治体に妊娠届を出すことで受診できるようになります。妊婦健診が普通の健診と違うところは、「健康保険が使えない」代わりに「補助券が交付される」という点です。この補助券については、後ほど詳しく見ていきましょう。
一回の受診料は、検査の内容によって上下しますが、出産までの妊婦健診にかかる自己負担額の合計は5~7万円といわれています。
さて、いざ出産の際に妊婦さんは入院することになりますが、入院するためのグッズを揃える必要があります。入院生活に使う身の周り品なので、大方のものは自宅から持っていけば賄えるかと思いますが、産褥ショーツ、授乳用ブラ、母乳パッドなどはお産に特有のアイテムですので用意しておきましょう。これらは大体5,000円程度で揃えることができるかと思います。
分娩費・入院費ですが、国民健康保険中央会のデータ「正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)」によると、「妊婦合計負担額」は50万5,759円となっています。この数字は出産時の、病院・診療所・助産所にかかる金額の全国平均です。個室に入院する、無痛分娩を選択する、帝王切開になった……等の要素があれば、この平均額よりもやや高めになります。
<妊婦合計負担額の平均値、中央値>(病院、診療所、助産所の合計)
項目 | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
妊婦合計負担額 | 505,759円 | 493,400円 |
入院日数 | 6日 | 6日 |
入院料 | 112,726円 | 102,000円 |
室料差額 | 16,580円 | 0円 |
分娩料 | 254,180円 | 250,000円 |
新生児管理保育料 | 50,621円 | 51,500円 |
検査・薬剤料 | 13,124円 | 10,000円 |
処置・手当料 | 14,563円 | 5,560円 |
産科医療補償制度 | 15,881円 | 16,000円 |
その他 | 28,085円 | 18,440円 |
※正常分娩に係る、直接支払制度による平成28年度に各都道府県国保連に申請された件数は555,428件です。
※数値については、出産育児一時金の直接支払制度専用請求書を集計し算出しております。
項目 | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
妊婦合計負担額 | 505,759円 | 493,400円 |
入院日数 | 6日 | 6日 |
入院料 | 112,726円 | 102,000円 |
室料差額 | 16,580円 | 0円 |
分娩料 | 254,180円 | 250,000円 |
新生児管理保育料 | 50,621円 | 51,500円 |
検査・薬剤料 | 13,124円 | 10,000円 |
処置・手当料 | 14,563円 | 5,560円 |
産科医療補償制度 | 15,881円 | 16,000円 |
その他 | 28,085円 | 18,440円 |
出産費用に関わる3つの要素
出産に関係する費用は「出産するタイミング」「出産する施設」「出産する都道府県」という3つの要素によっても変わってきます。特にどの施設で出産するのかによって、出産費用は大きく上下する可能性がありますので、出産希望の施設を複数ピックアップして出産費用を比較・検討しておきましょう。
出産するタイミング
出産のさまざまなタイミングなどにより、出産費用がやや変動する可能性があります。
出産予定日は決まっているものの、実際にいつ出産となるのかは赤ちゃん次第ですし、出産がどのように進むのかは予想できません。出産のタイミングが休日や祝日、年末年始といった長期休暇に重なったり、分娩が深夜となったりする場合には、割増料金がかかる施設が多いです。
出産する施設
出産ができる施設には公的病院・私的病院・診療所(助産所を含む)などがありますが、出産費用は以下のようにそれぞれ異なります。
出産費用の平均値(令和3年度、正常分娩) | |
---|---|
全施設 | 473,315円 |
公的病院(国公立病院等) | 454,994円 |
私的病院(私立大学病院、個人病院等) | 499,780円 |
診療所(医療法人診療所、助産所等) | 468,443円 |
上記には室料差額やお祝い膳などの費用が含まれていません。大部屋ではなく個室を選んだり、豪華なお祝い膳が出る施設を希望したりする場合には、さらに出産費用が上がります。
出産する都道府県
出産費用は地域によっても差があり、都市部は高く、地方は低い傾向にあります。令和3年度において、公的病院で正常分娩だった場合の出産費用(平均値)が一番高い都道府県は東京都で56万5,092円、一番低いのは鳥取県で35万7,443円です。費用を抑える方法として「里帰り出産」も選択肢の1つに入れておくとよいでしょう。
出産費用は出産方法で変わる
主な出産方法には「自然分娩」「帝王切開」「和痛出産・無痛分娩」があります。選択する出産方法によっては高額となる場合がありますので、それぞれの方法でかかる費用を事前に把握しておきましょう。
自然分娩の場合
自然分娩とは、麻酔などの処置をおこなわず、自然な陣痛発生によって赤ちゃんが産道(腟)を通り生まれる出産方法です。専門用語では正常分娩と呼ばれます。令和3年度における自然分娩の出産費用の全国平均は53万8,263円です。正常分娩の費用は健康保険の適用外となりますので、原則として全額自費で負担する必要があります。
帝王切開の場合
帝王切開とは、逆子などにより経腟分娩が難しいと診断された場合に、手術で出産する方法で、予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類があります。どちらの場合でも健康保険が適用されますので、手術費の自己負担額は約6万円~6万7,000円となります。
手術費用 | 自己負担額(3割) | |
---|---|---|
予定帝王切開 | 20万1,400円 | 60,420円 |
緊急帝王切開 | 22万2,000円 | 66,600円 |
無痛分娩・和痛出産の場合
和痛出産・無痛分娩とは、呼吸法や麻酔を用いて陣痛や分娩時の痛みを和らげ、出産する方法です。どちらの場合でも痛みがまったくなくなるわけではありませんが、母体への負担が減るのがメリットです。また、健康保険の適用外ですので、希望により和痛出産や無痛分娩を選択した場合には、出産費用は自然分娩よりも10万~20万円程度高額になるケースが多いようです。
場合によってはこんな費用も……?
健診や分娩費は確実にかかる費用ですが、妊娠期間中はそれ以外の出費もあります。
妊娠が進んでいくと、妊婦さんの体型や体調がどんどん変化していきます。妊娠期間中を健やかに過ごすためのマタニティグッズは、妊婦さんの大きな助けになるはずです。マタニティウェア、骨盤ベルト、抱き枕などを積極的に活用しましょう。
里帰り出産をするなら、行き帰りの交通費が発生します。生活の拠点を移すわけですからちょっとした引越しでもあり、キャリーケースで運べる程度の荷物なら費用はかかりませんが、荷物や家具を送るのであれば配送料がかかります。
また、戌の日に安産祈願のお参りをする妊婦さんも多いかと思います。神社でお祓い・祈祷をしてもらうのですが、この時“初穂料”という費用がかかります。初穂料は神社ごとに異なった金額が設定されていますが、大体3,000円、5,000円、1万円くらいが一般的なようです。
<妊娠期間中の出費>
項目 | 平均値 |
---|---|
マタニティウェア | 3,000~1万円 |
骨盤ベルト | 3,000~8,000円 |
抱き枕 | 4,000~1万円 |
里帰り費用(交通費) | 妊婦さんのお住まいにより様々 |
里帰り費用(配送料) | 妊婦さんのお住まいにより様々 |
初穂料(お祓い・祈祷) | 3,000~1万円 |
項目 | 平均値 |
---|---|
マタニティウェア | 3,000~1万円 |
骨盤ベルト | 3,000~8,000円 |
抱き枕 | 4,000~1万円 |
里帰り費用(交通費) | 妊婦さんのお住まいにより様々 |
里帰り費用(配送料) | 妊婦さんのお住まいにより様々 |
初穂料(お祓い・祈祷) | 3,000~1万円 |
赤ちゃんが産まれたら、今度は新生児用の育児グッズが必要となります。産後は体調が優れないので、妊娠中の安定期にある程度揃えておくとよいでしょう。新生児用グッズには以下のようなものがあります。
- 授乳用品……哺乳瓶(1,300〜1,500円程度)、粉ミルク(2,000〜3,000円程度)、哺乳瓶用洗剤(500円程度)、搾乳機(3,000〜4,000円程度)など
- ベビーウェア……短肌着(1,000〜2,000円程度)、長肌着(1,000〜2,000円程度)など
- 寝具……ベビーベッド(1〜2万円程度)、布団や枕(3,000円〜5,000円)など
- 衛生用品……ベビーローション(1,000円程度)、赤ちゃん用つめ切り(1,000円程度)、ベビーバス(1,500円〜2,000円程度)など
- おむつ用品……布おむつ・紙おむつ(1,500〜2,000円程度)、おしり拭き(2,000〜3,000円程度)など
- 外出用品……ベビーカー(2〜3万円程度)、チャイルドシート(2〜3万円程度)、抱っこ紐(1〜2万円程度)など
<新生児用育児グッズ>
項目 | 平均値 |
---|---|
哺乳瓶 | 1,300~1,500円程度 |
粉ミルク | 2,000~3,000円程度 |
哺乳瓶用洗剤 | 500円程度 |
授乳期 | 3,000~4,000円程度 |
ベビーウェア(短肌着) | 1,000~2,000円程度 |
ベビーウェア(長肌着) | 1,000~2,000円程度 |
ベビーベッド | 1~2万円程度 |
布団や枕 | 3,000~5,000円程度 |
ベビーローション | 1,000円程度 |
赤ちゃん用つめ切り | 1,000円程度 |
ベビーバス | 1,000~2,000円程度 |
布おむつ・紙おむつ | 1,500~2,000円程度 |
おしり拭き | 2,000~3,000円程度 |
ベビーカー | 2~3万円程度 |
チャイルドシート | 2~3万円程度 |
抱っこ紐 | 1~2万円程度 |
項目 | 平均値 |
---|---|
哺乳瓶 | 1,300~1,500円程度 |
粉ミルク | 2,000~3,000円程度 |
哺乳瓶用洗剤 | 500円程度 |
授乳期 | 3,000~4,000円程度 |
ベビーウェア(短肌着) | 1,000~2,000円程度 |
ベビーウェア(長肌着) | 1,000~2,000円程度 |
ベビーベッド | 1~2万円程度 |
布団や枕 | 3,000~5,000円程度 |
ベビーローション | 1,000円程度 |
赤ちゃん用つめ切り | 1,000円程度 |
ベビーバス | 1,000~2,000円程度 |
布おむつ・紙おむつ | 1,500~2,000円程度 |
おしり拭き | 2,000~3,000円程度 |
ベビーカー | 2~3万円程度 |
チャイルドシート | 2~3万円程度 |
抱っこ紐 | 1~2万円程度 |
これら全てを完璧に買い揃えるなら10万円以上は見積もっておいたほうが安心です。しかし新生児用グッズにかかる費用は工夫次第で大幅に節約できますし、「新生児に必要なものリスト」にオススメされているからといって、すべてを用意しておかなければならないというわけではありません。育児をしながら本当に必要なものが見えてくるはずですので、無駄な出費を抑えるためにも「最初に全部用意する」ではなく「順次買い足していく」方が賢明だと思います。
新生児用グッズの節約の例には以下のような方法があります。ぜひご参考ください。
- お下がりやフリーマーケットを利用する
- ベビーベッドは購入せず、レンタルする
- ベビーウェアは必要に応じて買い足していく
- ロッキングチェアはまだ使うかどうかわからないので買わない
- 沐浴はベビーバスでなく、普通の浴槽で代用する
- 授乳クッションは、普通のクッションで代用してみる
また、無事出産を終えたら親戚や知り合い、職場の上司から出産祝いをいただくことがあると思います。出産祝いをいただいたら出産内祝い(お返し)をしましょう。出産内祝いの相場は受け取った金額(品物であればその値段)の3分の1~半分とされています。
おすすめコンテンツ
出産費用を抑えられる制度
大きな出費がハードルとなる妊娠・出産ですが、補助金を活用すれば負担を相当減らすことができます。
妊婦健診で触れた補助券ですが、これは受診料を無料にできる、または大幅に安く抑えることができるものです。妊婦健診用の回数券のようなものと考えればわかりやすいかもしれません。補助券の内容や総額は自治体によって異なるので確認しておくとよいでしょう。
また、出産費用を抑えられる制度には次の4つがあります。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 高額療養費制度
- 出産費貸付制度
出産育児一時金
出産育児一時金は、国民健康保険や勤務先の健康保険など公的健康保険の加入者または被扶養者が妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した場合に、一定の金額が支給される制度です。令和4年時点では、赤ちゃん1人につき原則42万円(妊娠週数22週未満での出産など産科医療補償制度の対象外となる場合は40.8万円)が支給されます。
こちらの助成金は、医療機関などが保険者へ直接請求・受取をおこなってくれるケースがほとんどです。直接支払制度や受取代理制度を採用している医療機関で出産した場合には、退院時に妊婦さんは、出産育児一時金を差し引いた費用を窓口で支払います。
出産手当金
出産手当金は、勤務先の健康保険や共済保険に加入している女性が産休中の生活保障として受け取れるお金です。正社員に限らず、健康保険に加入していれば支給されます。支給される期間は「出産日以前42日~出産日後56日までの間(約98日間)」となっていて、1日あたり受け取れる金額は「直近12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」です。
たとえば標準報酬月額が30万円の方の場合では以下のようになります。
- 30万円÷30日×2/3=6,667円(1日あたり受け取れる金額)
- 6,667円×98日間=65万3,366円
つまり、総額で約65万円が支給される計算となります。
出産手当金の支給条件は、原則として「被保険者期間が1年以上の方」です。1年未満の場合には次のどちらか低い額を計算に使用します。
- 支給開始前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
- 標準報酬月額の平均額
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関等の窓口での自己負担額が1ヶ月あたりの限度額を超えた場合、申請することでその超過分が戻ってくるという制度です。上限額は所得や年齢によって決まっていて、たとえば平均的な所得(約370万~770万円)の会社員の世帯では、1ヶ月の医療費(健康保険適用分のみ)の自己負担額が約8万円におさまるようになっています。
帝王切開などでの入院料や手術料は健康保険が適用されますので、その自己負担額が上限額を超えた場合には高額療養費の支給対象となります。
出産費貸付制度
出産費貸付制度は、国民健康保険や勤務先の健康保険など公的健康保険の加入者が、出産育児一時金の直接支払制度・受取代理制度を利用せずに出産する場合、出産費用の準備金を無利子で借りられる制度です。貸付金の返済分は、のちほど支給される出産育児一時金より差し引かれます。
貸付条件は以下のとおりです。
- 出産予定日まで1ヶ月以内の方
- 出産育児一時金の支給が見込まれる方
- 貸付金額は出産育児一時金の8割までなど
まとめ
妊娠期間中の出費として約12万円、新生児用育児グッズをすべて新品で揃える場合には約10万円、出産費用として約53万円と、合計でかなりのお金がかかります。この中の出産費用については、ご紹介したような制度を利用することで大きく抑えることができますので、申請が必要なものについては忘れないようにしてください。赤ちゃんが生まれると、次はおむつ代やミルク代、洋服代、学費などさまざまな費用がかかってくることになります。こういった費用に備えて、赤ちゃんが産まれたタイミングで子供向けの共済・保険を検討してみてはいかがでしょうか。共済・保険で学資金や万一の怪我などに備えておけば、安心して子育てをしていけるはずです。たとえば、JA共済のこども共済「学資応援隊」は、教育資金を計画的に準備でき、万一のときにも備えられます。
補助金や共済・保険を活用してお金の心配を減らし、心おきなくかわいい赤ちゃんを迎えましょう。