認知症の初期症状とは?チェック内容や原因と予防策を解説
“病気”に関するねだんのこと
2023.07.27
ご自身や家族が認知症になることに不安を感じている方は少なくないでしょう。認知症の初期症状を知ることは、早期発見や症状の進行を遅らせるために有効です。本記事では認知症の概要と初期症状を解説したうえで、その原因や予防策などにも触れていきます。ご自身やご家族のもしもに備えて、認知症のことを学んでみましょう。
本内容は、令和5年5月の制度等にもとづき、記載しています。
本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。
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認知症とは
そもそも認知症とはどのような病気なのでしょうか?実は認知症は病名ではなく、脳神経細胞の働きが脳の病気によって徐々に低下し、記憶力や判断力が落ちることで、社会生活が難しくなった状態のことをいいます。
日本では高齢化にともない認知症の方の割合も増えており、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予想されています。
認知症の初期症状をチェック
認知症は早期発見することが大切です。ここでは認知症に早めに気付けるよう、主な初期症状をチェックしていきましょう。
認知症の初期症状
認知症の代表的な初期症状は以下の7つです。それぞれの症状の特徴について解説します。
記憶力の低下
認知症の初期症状でよく見られるのが記憶力の低下です。物の置き忘れが増える、同じことを何度も聞く、約束を忘れる、といった症状があります。
加齢によるもの忘れとの違いは、体験したことそのものを忘れる点です。例えば単なるもの忘れの場合、朝何を食べたか忘れることはありますが、朝ご飯を食べたことは覚えています。認知症による記憶力低下では、朝ご飯を食べたこと自体を忘れてしまうのです。そのため、本人にもの忘れの自覚がないケースが多いです。
理解力・判断力・集中力の低下
理解力や判断力が低下したり、集中力が落ちたりするのも認知症の初期症状です。預金の引き出しができなくなる、車などの運転ミスが増える、家電の操作が難しくなるという症状があります。また、手芸や料理など集中力のいる作業が続かなくなるという症状が見られることもあります。
実行能力の低下
お金の管理ができなくなる、計画どおりに物事をすすめられなくなる、など以前はできていた行動や作業が難しくなるのも認知症の初期症状の一つです。また、複数の作業を同時に進められなくなるという症状も見られます。例えば、複数の料理を同時に作れなくなった、電話で話しながらメモを取れなくなった、などです。
場所・時間が理解できない
場所や時間が理解できなくなるのも認知症の特徴です。認知症がある程度進んでから現れることが多いですが、初期段階でも見られることがあるので注意しましょう。例えば、今日が何曜日かわからなくなる、近所なのに道に迷ってしまう、起きたことの前後関係がわからなくなる、といった症状があります。
性格の変化
認知症によって性格が変わるケースもあります。怒りっぽくなる、頑固になる、人との付き合いが悪くなる、細かいことに気が回らなくなる、など周りから見て「性格が悪くなった」「キツくなった」と感じる変化が多いようです。
性格の変化は自分では気付きにくいため、ご家族や周囲の方に指摘された場合は注意しましょう。
感情の変化
感情の起伏が激しくなったり、コントロールできなくなったりするのも認知症の代表的な初期症状の一つです。感情を抑える働きを持つ前頭葉の萎縮などで起こります。また、前述した記憶力や実行能力の低下など、認知症により物事がうまくいかなくなった不安から起こっている可能性もあります。このような感情の変化が原因で暴言・暴力につながる場合もあるため、早めの気付きが大切です。
逆に、憂うつで塞ぎこむような変化もあります。このようなうつ状態は、認知症に起因するものと、心の状態変化からくるものとの区別が難しいものです。これらの症状が見られたら、「5.認知症かもしれないと思ったら」でも紹介しているもの忘れ外来を受診するようにしましょう。
意欲の低下
認知症には、趣味や好きなことに興味を示さなくなる、何事も億劫になる、といった意欲の低下も見られます。こちらも認知症に起因するものなのか、心の状態変化によるものなのか見極めが難しいため、もの忘れ外来で診てもらいましょう。
認知症は早期発見することが重要
認知症は早期に発見して予防策を取ることが重要です。認知症ほど日常生活に支障をきたす症状はないものの、今回紹介したような初期症状がある状態を「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」といいます。
軽度認知障害の方の約半数が5年以内に認知症に移行するといわれており、この段階から対策することで進行を遅らせたり症状を軽くできたりする可能性があるのです。
今回紹介した認知症の初期症状を下表にまとめたので、ぜひ早期発見のためのチェックリストとして活用してみてください。
認知症の初期症状 | 症状の例 |
---|---|
1.記憶力の低下 | ・物の置き忘れが増える ・同じことを何度も聞く ・約束を忘れる |
2.理解力・判断力・集中力の低下 | ・預金の引き出しができなくなる ・車などの運転ミスが増える ・家電の操作が難しくなる |
3.実行能力の低下 | ・お金の管理ができなくなる ・計画どおりに物事をすすめられなくなる ・複数の作業を同時に進められなくなる |
4.場所・時間が理解できない | ・今日が何曜日かわからなくなる ・近所なのに道に迷ってしまう ・起きたことの前後関係がわからなくなる |
5.性格の変化 | ・怒りっぽくなる ・頑固になる ・人との付き合いが悪くなる ・気遣いができなくなる |
6.感情の変化 | ・感情の起伏が激しくなる ・感情のコントロールできなくなる ・抑うつ |
7.意欲の低下 | ・趣味や好きなことに興味を示さなくなる ・何事も億劫になる |
認知症の治療法
認知症の治療法には薬物療法と非薬物療法があり、通常はこの2つを組み合わせておこないます。それぞれどのような治療法なのかチェックしていきましょう。
薬物療法
アルツハイマー型認知症の中核症状(記憶力や理解力・判断力の低下、時間・場所がわからなくなるなどの症状)には「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体拮抗薬」の2つが使われます。またレビー小体型認知症では、塩酸ドネペジルが使われています。どちらも根本的な治療は難しいものの、認知症の進行を抑えるのに有効とされています。
非薬物療法
怒りっぽくなる、抑うつなど、認知症にともなう行動・心理症状(BPSD)には、周辺環境の調整やリハビリテーションなどの方法が優先して取られます。
周辺環境の調整では、デイサービスなど介護サービスの利用や、自宅などで認知症の方が安心して暮らせる環境を整える(使い慣れた物を置く、室内の段差をなくすなど)という方法があります。リハビリテーションでは脳に刺激を与えるために、さまざまな方法が用いられます。例えばウォーキングや体操などの「運動療法」、自分の思い出を人に話す「回想法」、音楽を聴いたり簡単な楽器演奏をしたりする「音楽療法」などがあります。
認知症かもしれないと思ったら
先述したような初期症状があり「自分は認知症かもしれない」と不安に感じた場合は、早めに次の場所に相談しましょう。
もの忘れ外来を受診
もの忘れ外来とは、「認知症かも?」と思っている症状が本当に認知症によるものなのか、それ以外の病気なのかを診断するための医療機関です。「認知症外来」「認知症疾患センター」と呼ばれることもあります。
公益社団法人 認知症の人と家族の会「全国もの忘れ外来一覧」のWebサイトで全国のもの忘れ外来を探せるので、ご自宅から通いやすい医療機関を選びましょう。
かかりつけ医に相談
かかりつけ医がいるなら、まずはそこに相談するのも一案です。普段から身体や病気の相談をしている医師のほうが話しやすい方もいるでしょう。認知症の専門でなくても、提携先の病院を紹介してもらえる可能性もあります。
地域包括支援センターに相談
地域包括支援センターとは、地域住民の健康の維持や生活の安定、保健・福祉・医療の向上などの支援をおこなう機関です。もちろん認知症の相談も受け付けているので、どこに相談したらよいかわからない場合はこちらを利用してみましょう。
本センターは市町村が主体となっており、全国各地に設置されています。お住まいの自治体のWebサイトで場所や連絡先を調べられます。
電話相談
近くに上記の相談先がない場合や、相談場所に行くのが難しい方は電話相談という方法もあります。代表的なものは「認知症の人と家族の会」が受け付けている無料(携帯電話・スマートフォンからは有料通話)の電話相談です。認知症に関する幅広い相談に答えてくれるので、認知症の知識について尋ねたい、認知症の不安を誰かに話したいという方にもおすすめです。
まとめ
認知症は脳の病気によって脳の機能が低下し、社会生活が難しくなった状態のことです。早期発見により進行を遅らせられる可能性があるので、初期症状を知ってご自身や家族の変化をチェックできるようにしましょう。
認知症の多くは根本的な治療が難しく、金銭面でも精神面でも負担の大きいもの。認知症や軽度認知障害(MCI)になった場合に治療費や介護費用の負担を減らせるよう、認知症保険(共済)への加入を検討してみるとよいでしょう。