配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れたら?年金の種別変更手続きについて

配偶者の扶養になっている方は、第3号被保険者と呼ばれ保険料の納付は不要です。しかし、場合によってはその資格を失い、種別変更という手続きが必要になるケースがあることをご存じでしょうか?今回は現在配偶者の扶養にある方、また過去に扶養になっていた方に知ってほしい「年金」の手続きについてご紹介します。

本内容は、令和4年5月の制度等にもとづき、記載しています。

この記事を読むと分かること

  • 第3号被保険者から外れる場合
  • 種別変更の手続き方法
  • 種別変更の届け出を忘れたときの対応

第3号被保険者とは?

第3号被保険者とは?

国民年金の加入者は、以下のように3種類に分けられます。


被保険者の種類 主な加入要件
第1号被保険者 20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の方
第2号被保険者 国民年金の加入者のうち、民間会社員や公務員など厚生年金、共済に同時に加入する方
第3号被保険者 年収130万円未満で第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者の方
被保険者の種類 主な加入要件
第1号被保険者 20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の方
第2号被保険者 国民年金の加入者のうち、民間会社員や公務員など厚生年金、共済に同時に加入する方
第3号被保険者 年収130万円未満で第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者の方

第3号被保険者として年金に加入するためには、配偶者の勤務先に「健康保険被扶養者(異動)届」や「国民年金第3号被保険者関係届」をはじめとする各種書類の提出が必要です。令和2年度末現在、第3号被保険者の加入者は793万人となっています。


自分で保険料を支払っていない間も保険料納付済期間としてカウントされ、将来の年金額に反映されるのが、第3号被保険者になる大きなメリットです。


第1号被保険者の場合、毎月16,590円(令和4年度)の年金保険料の納付が必要です。第2号被保険者は標準報酬月額に応じた年金保険料を、事業主と折半して負担しなければなりません。


しかし、第3号被保険者になると、配偶者が加入する厚生年金や共済組合が一括して年金保険料を支払うため、自己負担は不要になります。仮に20歳から60歳まで第3号被保険者だった場合には、保険料は無料であるにも関わらず、年間777,792円の年金満額が受け取れるのです。


一方で、受け取れる年金額が少なくなる点には注意しなければなりません。第3号被保険者は国民年金しか受け取れないため、厚生年金が上乗せされて受け取れる第2号被保険者よりも、受給額は少なくなります。厚生年金に加入している方の平均的な年金月額は146,145円であるのに対して、国民年金のみ加入している場合は56,358円です。


また、毎月の年金保険料に上乗せして付加保険料を支払うことで国民年金の受給額を増やせる「付加年金制度」や、毎月一定の掛け金を積み立てることで国民年金に上乗せした年金を受け取れる「国民年金基金制度」などは利用できません。

第3号被保険者から外れる場合

所定の加入要件を満たさなくなった場合は、第3号被保険者から外れてしまいます。どのようなケースが考えられるのでしょうか。

年収が130万円を超えた

第3号被保険者となるためには「年収130万円以内」であることが必要です。年収が130万円を超えると、第3号被保険者から外れて、第1号被保険者または第2号被保険者となります。例えば専業主婦(夫)の方は、働いて収入がある場合でも年収130万円以内に収まっていれば、第3号被保険者です。


ただし、パートやアルバイトとして働いており、労働時間や収入額など一定の条件を満たしている方は、年収130万円以内であっても厚生年金の加入対象者、つまり第2号被保険者となる可能性があるため、注意しましょう。

第2号被保険者の夫(妻)と離婚した

第3号被保険者の要件の一つとして「配偶者であること」が挙げられます。離婚すると配偶者ではなくなるため、第3号被保険者としての権利を失います。

配偶者が第2号被保険者ではなくなった

第3号被保険者となるためには「第2号被保険者に扶養されている」ことが必要です。配偶者が以下にあげているような理由で第2号被保険者ではなくなった場合には、第3号被保険者から外れてしまいます。


  • 退職して無職になった
  • 自営業になった
  • 亡くなった
  • 65歳以上となり、老齢基礎年金の受給資格を満たした

就職した

厚生年金の加入要件にあてはまる方は、第3号被保険者には該当しません。就職したときには、勤務先の厚生年金に加入することになるため、第2号被保険者への変更が必要です

海外に移住した

令和2年4月1日から、第3号被保険者の認定要件に「日本国内の居住」が追加されました。ただし、以下のような条件にあてはまる場合は「海外特例」に該当するため、届出をすれば引き続き第3号被保険者として年金に加入できます。


  1. 外国において留学をする学生
  2. 外国に赴任する第2号被保険者に同行する方
  3. 観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的での一時的な海外渡航者
  4. 第2号被保険者の海外赴任期間に当該被保険者との身分関係が生じた方で、2と同等と認められる方
  5. 1〜4のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる方

知っておきたい種別変更の手続き方法

知っておきたい種別変更の手続き方法

第3号被保険者がその資格を失った場合、種別変更の手続きをおこないます。「種別変更」によって、第1号被保険者、または第2号被保険者への切り替えが必要になります。

配偶者の扶養からはずれた場合

まず第3号被保険者から第1号被保険者になる方全員に必須なのが、最寄りの年金事務所で本人が「国民年金第3号被保険者関係届」を出すこと。これは資格を失った日(配偶者の退職日など)から14日以内におこなってください。また、配偶者と離婚した方、収入が130万円の基準額を超えた方の場合は夫(または妻)の勤務先に「被扶養配偶者非該当届」という届け出を提出します。これも本人がおこなう必要があります。


<必要なもの>

  • 印鑑
  • 本人の年金手帳(または基礎年金番号通知書)
  • 喪失年月日のわかるもの(会社からの証明)
  • 雇用保険受給者証(第1回目の支払日記載のもの)

<届け出先>
市役所の「保険年金課」または各振興事務所の「振興課」

就職した場合

就職などで勤め先の厚生年金制度などに加入した場合は、第2号被保険者となります。この場合は雇用先が日本年金機構へ届け出をおこなうため、本人がおこなう手続きはありません。ただし、保険料を自動引き落としにしている方は、自分で金融機関に口座振替停止の手続きをおこなう必要があります。

種別変更の届け出を忘れたら?

種別変更の届け出を忘れたら?

不整合記録問題とは?

では、届け出を出さないとどうなるのでしょうか。


本来届出をすべき期限から2年以上経過すると、保険料の納付が受け付けられなくなり「未納期間」が生じます。その結果、将来受け取る年金額が少なくなったり、場合によっては受給資格期間を満たさず年金が受給できなくなったりする恐れがあります。


それが昨今、ニュースなどで話題となっている、「第3号被保険者の不整合記録問題」。資格を失った際に必要な届出をおこなわなかったため、記録上は第3号被保険者のままになってしまうのです。


しかし平成25年より法律が改正され、切り替えの届出が2年以上遅れてしまっている方も「時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届」を出すことで、未納期間も年金の受給資格期間に算入できるようになりました。もしも自分の年金記録に「不整合記録」が見つかった場合は、すぐに最寄りの年金事務所でご相談ください。


第3号被保険者の場合、年金の自己負担がないため、資格を失っていても気付かないケースが多いようです。年金はいずれ誰もがお世話になる制度。将来のためにも仕組みを理解して、手続きに不備のないようにしたいですね。

「時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届」を出そう

年金を受給するためには、保険料納付期間や加入者であった期間などの合計が一定年数以上、必要となります。老齢年金の場合、受給するために必要な加入期間(受給資格期間)は10年です。


万が一、不整合記録がある場合には「時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届」を提出することにより、未納期間を「受給資格期間」に算入できます。ただし、受給できる年金額に反映されないため、未納分がある場合には年金を満額受け取れない可能性がある点には注意しましょう。

まとめ

保険料の納付が不要となる「第3号被保険者」の資格を失う条件には、さまざまなものがあります。

万が一、第3号被保険者から外れたにも関わらず、種別変更手続きをしていないと「不整合期間」が生じてしまいます。十分な額の年金が受給できなくなる可能性があるため、注意しましょう。

第3号被保険者から外れることになったときには、制度内容をよく理解したうえで、すぐに手続きができるよう準備しておくことが大切です。


参考:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/5.html

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