介護保険制度改正で何が変わる?利用できるサービス内容とは
“老後”に関するねだんのこと
2017.03.03
高齢者の総人口比が年々増加傾向にある今、介護は誰にとっても切実な問題。介護は長期にわたることも多いため、家族など周囲の人の力が大きく必要になる面も多くあり、介護をされる側にも、する側にも、大きな負担となってしまっているのが現状です。
特に介護における経済的な側面は、各家庭だけでなく、国家規模で見直しが必要とされている問題のひとつ。そのようななかで、介護利用者と家族の負担を軽減するために誕生したのが「介護保険制度」です。2000年からスタートした介護保険制度は、時代背景を鑑みて5年ごとの法改正と3年ごとの介護報酬の見直しが行われています。そこで今回は、介護保険制度の内容と改正点についてまとめてみました。
介護保険制度とは
介護の必要な高齢者を社会全体で支えていこうと、2000年4月に「介護保険制度」がスタートしました。40歳以上の国民が納める介護保険料と税金を財源とし、介護を必要とする人が、少ない自己負担額でサポートを受けられるように支援をする制度です。
65歳以上は「第1号被保険者」となり、要介護認定で認定された要介護または要支援の区分に沿った保障を受けることができます。40歳から64歳までは「第2号被保険者」で、末期がんや筋萎縮性側索硬化症(ALS)、初老期における認知症など、老化に起因する16種の特定疾病で介護が必要となった場合に限り、介護サービスを受けられます。
介護保険制度改正で変わったポイント
介護保険制度について、2015年の法改正で見直されたポイントと論点をまとめてみました。
2015年の法改正で見直された点と次期改正の論点
「20世紀最後の大事業」といわれて大々的にスタートした介護保険制度。しかし、増大する保険財政から、制度スタート当初から持続を危ぶむ指摘もされてきました。今の団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年が近づいてきたことも視野に入れ、2015年に行われた介護保険制度の改正では、サービス内容や利用者の負担額などが大きく変更されました。
改正では、「本当に必要なサービスを、必要としている人の元へ届ける」ことに重点を置き、地域の力を活用しながら在宅で介護をしていくことをテーマに掲げています。主な改正ポイントは以下の5つです。
(1)自己負担割合の増加
改正前は一律で1割としていた自己負担額が、所得の高い人は2割負担に。2割負担になるのは、所得が年間で160万円以上、かつ収入で280万円以上の場合が対象となります。
(2)特別養護老人ホームへの入居基準の変更
改正前は要介護1~5の人であれば利用できましたが、改正後の新規申し込みからは原則として要介護3以上に。
(3)補助制度の基準の見直し
介護保険施設で必要となる食費や居住費など全額自己負担のものに対し、改正前は利用者の所得のみを考慮して軽減されていたものが、改正後は資産の有無や配偶者の所得もふまえて検討されることになりました。
(4)要支援向けの介護予防サービスが、一部市町村の事業に
要支援の認定を受けた人が受けられる介護予防サービスにおいて、「予防訪問介護」と「予防通所介護」の2つが市町村の事業へ移行することに。
(5)低所得者の保険料の負担軽減
改正前も所得に応じた保険料の段階的な区分がされていたものが、改正後は所得の低い人がより軽い負担になるように変更されました。
利用者はもちろん、介護に従事する人にとっても厳しい内容になりましたが、厚生労働省によれば、さらなる是正のために2018年にも介護保険制度の見直しを予定しているといいます。地域の実情に応じたサービスの推進や、地域支援事業・介護予防の推進、医療と介護の連帯といった「地域での介護」へシフトすることを検討される予定なのだそう。また、軽度の介護者への支援を含めた給付のあり方、利用者負担の割合見直しや加入年齢の引き下げなど「財源確保」に向けた動きがメインとなりそうです。
介護保険で受けられるサービス
時世の流れに沿って見直されている介護保険制度。介護を必要とする人にとっては制度があることによるメリットは大きいものです。では、実際にどんなサービスが受けられるのでしょうか。
要介護1~5の場合、在宅で利用できるのが、訪問による「居宅療養管理指導」「訪問介護」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「訪問入浴介護」、日帰りで施設を利用する「デイサービス」、連続30日以内で入所する「ショートステイ」です。自宅での介護が難しい場合には、「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」への入所も可能です。
要支援1・2の場合は、介護予防支援となる訪問サービスや施設通所となります。要介護3以上であれば「特別養護老人ホーム」への入居もできます。
このほか、要介護区分による介護用品のレンタルや購入補助、自宅のバリアフリー改装への助成金というサポートも受けることができます。
介護保険制度があることで、自宅で過ごしながら必要に応じた介護サービスを利用したり、施設へ入居して全面的にサポートを受けたりと、個々の状況や事情に合わせて選択ができます。在宅での介護の場合、家族の負担を軽減する役割も担っています。ただし、今回ご紹介したとおり介護保険制度は定期的に改正されますので、近い将来の介護に向けてその改正点については常にチェックしておくとよいでしょう。