借り換えで住宅ローンがおトクになるって本当!? マイナス金利について知りたい!
“家と車”に関するねだんのこと
2016.10.06
新聞やTVでたびたび目にする「マイナス金利」の文字。2016年1月に実施が決定した当初、各種ニュースで大きく取り上げられました。「住宅ローンの金利が下がるので、借り換えるとおトクになる」なんて話も聞きますが、実際はどうなのでしょうか。不動産購入に詳しいファイナンシャルプランナーの有田美津子さんに、マイナス金利と住宅ローンの関係を聞いてみました。
消費を促して経済を回すのがマイナス金利の目的
通常、民間の銀行は私たちから預かったお金の何%かを「法定準備金」として、日本銀行の当座預金に預ける義務があります。今までは法定準備金を超える金額を日本銀行に預けておくと、少額ですが金利がついていました。そのため、民間銀行は貸し出しきれない余剰分のお金を日本銀行に預けておけば何をしなくても金利がついていた、というのが今までの流れでした。では、マイナス金利になったらどうなったのでしょうか。
「この法定準備金以上の金額を預けると、逆に民間銀行が日本銀行に利子を払わなければいけなくなったんです。そうなると、多く預けたら民間銀行は損をしてしまいますよね。そのため、日本銀行にお金を預けずに運用する必要があります。民間銀行からお金をどんどん貸し出し、私たちには設備投資や住宅ローンなどにあてて消費をたくさんしてもらい、最終的に景気を良くしようというのが、日本銀行ひいては日本政府の狙いです」(有田さん)
住宅ローンの借り換えはしっかりシミュレーションをして判断を
私たちの生活の範囲で、最もわかりやすく影響が出ているのが住宅ローンです。各民間銀行はとにかくお金を借りてほしい、ローンを組んでほしいと考えているので、貸し出しの際の金利を下げて、ローンの成約率を上げようとしています。そのため借入主は、今よりも返済額が安く済む金融機関を探して、借り換えを行うという選択肢が広がりました。とはいえ、借入先を変えれば必ずおトクになるというわけではありません。
「借り換えはまずシミュレーションをしてみて、今借りているところよりも諸費用を含めた総返済額がお得になるようであればやる価値はあります。ただし、借り換え先の金融機関を選ぶ際には、目先の金利だけにとらわれてはいけません。住宅ローンの返済プランは『全期間固定金利型(フラット35等)』、『当初固定金利型』、『変動金利型』に大別されますが、当初5年や10年固定で最初だけすごく金利が低くても、その後金利の優遇幅がどれくらい変わるのかをチェックする必要があります。10年後、子どもの教育費が上がって毎月の返済額が上がってしまうタイミングと住宅ローンの金利が上がるタイミングが重なったら大変。そういうご家庭の場合は全期間固定金利の方がいいということもあるので、さまざまな返済プランの中からいかに自分に最適なものを選ぶかが重要になります」(有田さん)
金利が低くても手数料や諸費用で総返済額が高くなるパターンも
金融機関によって、返済額にはどれくらいの差があるのでしょうか?一例として、同じ金額で借り入れた場合、3つの金融機関で違いを比較してみましょう。
条件:元本4,000万円を全期間固定金利のフラット35で借り入れ
A金融機関:金利1.08%、手数料0.8%、諸費用304万円 ★総返済額:5,109万円
B金融機関:金利1.08%、手数料2.1%、諸費用356万円 ★総返済額:5,161万円
C金融機関:金利1.3%、手数料32,400円 諸費用278万円 ★総返済額:5,259万円
※諸費用は融資手数料、機構団信特約制度特約料を含みます。この他、実際に借入する際には、印紙税、抵当権設定のための費用等が掛かります。
A金融機関は金利も手数料も低いので総返済額が一番安くなることがわかります。B金融機関の金利はA金融機関と変わらないものの、手数料や諸費用が高く、総返済額はA金融機関より高くなっています。そしてC金融機関は、手数料は高くないものの、金利が他機関より高いため3機関の中では最も総返済額が高くなります。このように、金融機関を選ぶ際は金利だけでなく手数料やその他の費用をトータルで見る必要があります。もし今借り入れている金融機関の金利が変動金利なのに1%を超えている場合は、借り換えを検討してみてもいいかもしれません。また、金利差のメリットが出なくても、現在の低金利を活かして将来も金利が上がる心配がない全期間固定金利等に借り換えるという考え方もあります。
「もちろん、いくら借り換えるか、どれくらいの返済期間が残っているのかによっても返済額は変わりますので、個々にシミュレーションをして借り換えのメリットがあるかないかを見極める必要があります。自分で判断するのは難しいという場合、プロのファイナンシャルプランナーにシミュレーションをお願いすればより確実です」(有田さん)
そして忘れてはいけないのは、今はマイナス金利でも、これがいつまでも続くという保証はないということ。日本銀行の金融政策が変わった場合は、急に金利が上がるという可能性もゼロではありません。借り換えをするにしてもしないにしても、より良い選択ができるよう慎重な判断を心がけましょう。