【インタビュー】広がるがん治療 ベストな選択をするために
“病気”に関するねだんのこと
2026.10.16
長野県にある佐久医療センターでは、がん診療連携拠点病院として、専門的な医療を提供しています。
今回は、腫瘍内科医であるN医師、がん性疼痛(とうつう)看護認定看護師のOさん、医療ソーシャルワーカーのIさんにお話を伺いました。聞き手は、地元のJA女性会の役員のみなさん。がん治療の「今」について学びを深めます。
本内容は、令和8年8月時点の制度・法令等に基づき、記載しています。最新の情報や詳細については、それぞれの関係機関へご確認ください。
抗がん剤治療の現在地
― がん治療において、腫瘍内科とは、なんの専門家なのでしょうか?
がんの治療法は大きく分けて「手術」「放射線療法」「薬物療法」の三つがあります。腫瘍内科は、主として薬物療法を担う診療科です。わかりやすく言うと、「抗がん剤」をはじめとする薬物療法の専門家ですね。
― N医師からみた、「抗がん剤治療」の現在地を教えてください。
ここ30 年で、抗がん剤の進歩は目覚ましいものがあります。私が大学を出た平成7年当時では、大腸がんやすい臓がんは治療が難しい病気でした。でも今は、抗がん剤が進歩し、進行にブレーキをかけることができるようになってきています。
― 抗がん剤はつらい副作用が出るイメージがあります。
テレビドラマなどの影響もあり、そうしたイメージを持つ人も多いですね。もちろん治療に伴う副作用はゼロではありませんが、今の医療では副作用を抑えたり、苦痛を和らげたりするための薬なども飛躍的に進化しています。
― がん治療において選択肢が増えた分、医療費が高額になることもあると聞きます。
私たち医師は、最善な治療法や薬を提案し、とにかく「ベストを尽くす」ことにすべての神経を集中させています。日本には高額療養費制度があるので、外国のように自己破産するような心配はありませんが、再発や転移が原因で治療が長期化する場合や、公的医療保険の対象外になる先進医療を選択される場合については、自己負担が大きくなる傾向にあります。納得のいく治療を選択し続けるためにも、共済などへの加入など「備え」をしっかりと検討されることをおすすめします。
厚生労働省ホームページを参考に試算(令和8年8月改正後)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
― 私たちが普段からしておくべきことはありますか?
しっかりと健康診断を受けてください。健診も万能ではありませんが、早く見つかる可能性は上がります。そして、日々進化している現代医療を信頼していただきたいと思います。
がん情報サービスより引用
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/annual.html
がん治療に伴う「痛みの緩和」の専門家
― 「がん性疼痛」とはなんですか?
先ほどN医師からもお話しがあったように、がん治療には抗がん剤による頭痛や吐き気などの副作用があることも。そうした症状に加えて、がん細胞自体が骨や内臓を圧迫することで生じる痛み、長期間寝たきりになることで起きる腰痛などがんに関連して生じる心身の痛みを総称して「がん性疼痛」と呼びます。
― 「認定看護師」とはどのような資格でしょうか?
特定の看護分野において、専門的な知識や技術をもった看護師のことです。現在は約20 の分野があり、5年以上の実務経験と、認定看護師になるための学校に通う必要があります。
― がん性疼痛を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。
看護師になって初めての異動のときに、血液内科に配属になりました。そこで、「治す」だけでなく、「痛みを和らげる」という治療があることを知り、興味を持つようになりました。
― がん患者さんとの関わり方を教えてください。
最近のがん治療は、外来による通院治療の割合が圧倒的に増えています。その場合は、基本的には医師とお話しをしてその日にお帰りになります。限られた時間で最適な関わり方ができるように問診票を記入してもらっていますが、痛みに関する記載があれば、私も診察に同席したり、直接声掛けをしたりしてサポートするような形をとっています。
お金や心の課題に寄り添う医療ソーシャルワーカーの役割
― 医療ソーシャルワーカーとはどんな仕事ですか?
社会福祉士の資格をもち、患者さんや家族の生活・お金・仕事などの心配ごとを一緒に整理し、使える制度や支援につなぐ専門職です。気持ちのつらさに寄り添いながら、がん治療と普段の生活が続けられるよう支えます。
― 具体的にはどんな相談を受けますか?
お金の悩みについてはもちろん、仕事や介護、子育てとの両立に悩まれる方、治療の後どのように社会復帰するかなど、人によってさまざまです。医師や看護師には相談しにくいセカンドオピニオンに関する相談を受けることも少なくありません。
― 仕事をしながら治療をする方も多いのでしょうか?
最近は、がんになったからと言って、仕事を辞めずに治療を続けることをおすすめするケースが多いです。しかし、罹患前と同じようには働けず、収入が減ることもあります。

※がん罹患経験者へのアンケート調査(JA 共済連実施)より作成
― その中でも、特に多い悩みはなんですか?
やはり医療費や生活費などお金に関することです。最近は治療期間が長くなっているので、その分、金銭的な負担が増える傾向にあります。治療の選択肢があるにも関わらず、お金の事情で治療を諦める方もいらっしゃいます。私たちは、患者さんの状況に応じて最適な方法を一緒に考えます。みなさんも、自分ががんになったら、最善の治療を受けたいと思うはずです。備えがあれば選択肢が広がりますのでしっかりと検討してください。自分や家族を守れる可能性が広がります。
※厚生労働省「令和2 年患者調査」より作成
笹山真琴=文
参考・出典元:
「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/annual.html
「令和2年(2020)患者調査の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/index.html

















