失業保険の受給期間は何日?受給条件や金額の目安までご紹介
“就労”に関するねだんのこと
2023.09.29
労働者が失業して一定の要件を満たした際に給付金がもらえる「失業保険(雇用保険の基本手当)」。失業中の生活の安定と再就職を支援するための国の制度です。
本記事では失業保険の受給期間と所定給付日数、さらに受給条件や給付金額の算定方法について解説します。失業保険とは、どのような場合に、どの位の期間、いくら位受け取れるのか、基本を学んでいきましょう。
本内容は、令和5年7月の制度等に基づき、記載しています。
本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。
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失業保険の受給期間と所定給付日数
失業保険(雇用保険の基本手当)を実際に受け取れる期間(日数)を知るためには、「受給期間」と「所定給付日数」という2つの数字を理解する必要があります。
受給期間はその名のとおり失業保険を受け取れる期間のことで、原則として離職した日の翌日から1年間となります。一方で所定給付日数は、実際に失業保険を受け取れる日数のことで、離職した日の年齢、雇用保険に加入していた期間、離職理由などによって90日~360日の間で決まります。
受給期間を過ぎた場合、所定給付日分の受給が終わっていなかったとしても、それ以降の失業保険は受け取れません。例えば所定給付日数が240日で、受給開始日の時点で受給期間が残り180日の場合、受給期間を超えた60日分は受け取れません。
ただし、所定給付日数が330日または360日の場合、例外的に受給期間は以下のとおり延長されます。
●受給期間の例外
所定給付日数 | 受給期間 |
---|---|
330日 | 離職の日の翌日から1年間 + 30日 |
360日 | 離職の日の翌日から1年間 + 60日 |
なお、受給期間中に病気やケガ、出産・妊娠・育児などの理由で、連続して30日以上働くことができなくなった場合は、最長3年間、その日数分だけ受給期間を延長できます。
失業保険の所定給付日数
失業保険の所定給付日数は次の3つの離職理由によって決まり方が異なります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定受給資格者および特定理由離職者
特定受給資格者とは、主に倒産や解雇などの理由で離職した方で一定の要件を満たす方が該当します。労働条件の相違や賃金の未払い・低下、長時間労働、妊娠・出産・育児や介護中などの法令に違反した強制労働、上司や同僚からの嫌がらせなどの理由で離職を余儀なくされた方も対象です。
特定理由離職者とは、主に以下に該当する方のことです。
- 期間の定めのある労働契約が満了し、その労働契約の更新がないことで離職した方
- 以下の正当な理由により自己都合で離職した方
正当な理由には以下のようなものが挙げられます。
正当な理由の種類 | 例 |
---|---|
体や心の状態による理由 | ・病気やケガ、心身の障がい、体力の不足、妊娠 ・出産 ・育児など |
家庭の事情が急変した | ・父母の死亡・病気・ケガなどの理由で扶養するために離職を余儀なくされた ・常に看護が必要な親族の病気、ケガなどのために離職を余儀なくされた |
配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となった | ・経済的な理由から夫が単身赴任を続けることが難しくなり同居を余儀なくされたが、その場所からの通勤が難しい |
通勤不可能または困難となった | ・結婚にともなう住所の変更 ・育児にともなう保育所などの利用、または親族などへの保育の依頼 ・事業所の通勤困難な地への移転 ・自己の意思に反する住所または居所の移転 ・交通機関の廃止や運行時間の変更など ・事業主の命による転勤または出向にともなう別居の回避 ・配偶者の事業主の命による転勤や出向、配偶者の再就職にともなう別居の回避 |
希望退職者の募集に応じた離職 | ・企業整備による人員整理など |
これらの理由に該当する方の所定給付日数は以下のとおり、5つの年齢区分ごとに90日~330日の期間で定められています。
雇用保険の加入期間(被保険者であった期間) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | ||
区分 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 |
120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上 45歳未満 |
150日 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上 60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上 65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
就職困難者
就職困難者とは、以下に該当する方です。
- 身体障がい者
- 知的障がい者
- 精神障がい者
- 刑法等の規定により保護観察に付された方
- 社会的事情により就職が著しく阻害されている方など
一般的な方より就職の難易度が高くなることが予想されるため、下表のとおり他の離職理由より所定給付日数が多く定められています。
●就職困難者の所定給付日数
雇用保険の加入期間(被保険者であった期間) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | ||
区分 | 45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上65歳未満 | 360日 |
上記のいずれにも該当しない離職者
ここまで紹介したいずれの理由にも該当しない離職者(正当な理由がない自己都合退職者など)の所定給付日数は以下のとおりです。他の離職理由と異なり、年齢による区分はなく、所定給付日数も少なくなっています。
●その他の離職者の所定給付日数
雇用保険の加入期間(被保険者であった期間) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | ||
区分 | 全年齢 | - | 90日 | 120日 | 150日 |
離職理由の判断方法
前述のとおり、離職理由により所定給付日数が決まりますが、これは以下の手続きの流れで判断されます。
●離職理由の判断手続きの流れ
離職票は失業保険を受給するために必要な書類です。通常、退職後10日前後で退職した会社から退職者に渡されます。離職証明書はハローワークが離職票を交付するために必要な書類で、従業員の退職が決まると事業主から事業所を管轄するハローワークに提出されるものです。
離職者は退職した会社から受け取った離職票に離職理由などの必要事項を記入したうえで、居住地を管轄するハローワーク(または地方運輸局)に提出します。ハローワークは提出された離職票に基づいて離職理由の判断が下されると、失業保険の受給資格が決定します。
その後、雇用保険説明会への参加、待期期間の満了を経て失業が認定されると失業保険が受け取れます。待期期間は原則、離職票の提出と求職の申込みをした日(受給資格決定日)から通算して7日間です。ただし、正当な理由がない自己都合による退職者は、待期期間の満了後からさらに原則2ヵ月の給付制限期間が設けられています。失業の認定は原則として4週間に1回おこなわれ、就労の有無や求職活動の実績などをもとに認定されます。
失業保険の受給要件と給付金額
ここでは失業保険の受給要件と給付金額の算定方法についてチェックしていきましょう。
受給要件は就労意思と保険期間のふたつ
失業保険は以下の2つの要件をいずれも満たすことで受給できます。
〇失業保険の受給要件
ハローワークに来所し、求職の申込みをおこない、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにも関わらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
離職の日以前2年間に、被保険者期間※が通算して12ヵ月以上あること。
※雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1ヵ月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月を1ヵ月と計算する。
1つ目の受給要件は労働の意思に関するものです。求職の申込みをおこない、就職しようとする意志のある方が就職できない状態が要件となるため、以下のようなケースは失業保険を受給できません。
〇失業保険を受けられないケース
- 病気やケガのため、すぐに就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐに就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職できないとき
失業保険は原則「現状働ける状態にある」方が受給できる保険制度です。そのため、自己都合で離職したあとに病気・ケガなどを負った場合は受給できません。
ただし、離職理由そのものが上記のような病気・ケガ・妊娠などやむを得ない理由である場合は、「特定理由離職者」として失業保険を受給できます。その際は証明が必要になるため、医療機関を受診し診断書を準備しておくとよいでしょう。
2つ目の受給要件は雇用保険の被保険者期間(加入していた期間)に関するものです。失業保険を受け取るためには、原則として離職前の2年間に雇用保険の被保険者であった期間が通算12ヵ月以上必要です。ただし、離職理由が特定受給資格者または特定理由離職者の方は、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あれば受け取れます。
給付金額の算定方法
失業保険の1日あたりの給付金額を「基本手当日額」といいます。基本手当日額は賃金日額のおよそ50~80%(60歳~64歳の方は45~80%)で、賃金の低い方ほどその割合は高くなります。賃金日額は原則として離職した日の直近6ヵ月に毎月きまって支払われた賃金(賞与などは除く)の合計を180で割って算出した金額です。
なお、基本手当日額には年齢区分ごとに以下のとおり上限額が設けられています。
●基本手当日額の上限額
年齢区分 | 上限額 |
---|---|
30歳未満 | 6,835円 |
30歳以上45歳未満 | 7,595円 |
45歳以上60歳未満 | 8,355円 |
60歳以上65歳未満 | 7,177円 |
それでは、上記のルールをふまえて30歳の方で5年間勤めていた会社を病気のため退職した場合の雇用保険の給付金額を計算してみましょう。
本ケースでは、約120万円の失業保険をもらえる結果となりました。
失業保険の給付金額は、離職時の年齢や離職理由、雇用保険の加入期間、直近6ヵ月の賃金、残りの受給期間などによって異なります。給付金額をシミュレーションする際は、ご自身がどの条件に当てはまるか見極めたうえで計算しましょう。
まとめ
失業保険は離職中の生活を安定させ、再就職しやすくするための制度です。会社を退職してすぐに再就職できない場合の支えとなりますが、あくまで失業時の生活保障という目的で支給されるため、もらえる金額が不十分な可能性もあります。そのため、病気やケガで離職せざるを得ない場合などに備えて、民間の保険(共済)に加入しておくと安心です。
誰しもやむを得ず失業してしまう可能性はゼロではありません。ご自身のもしもに備えて、失業保険について理解を深めるとともに、不足しそうな分は民間の保険(共済)でカバーすることをおすすめします。