増える高齢者の運転事故。その原因や事故費用についてまとめてみた

近年、高齢者による車の運転事故が増えていると言われています。なぜ、高齢者の事故が増えているのでしょうか。今回は、高齢者が運転事故を起こしてしまう理由や、もし起こしてしまった場合に生じる費用などをまとめました。

増える高齢者の運転事故とその原因

警視庁交通総務課統計によると、交通事故の件数は、平成19年度68,603件から平成28年度32,412件と、10年間で半減しています。一方、そのなかで高齢運転者が関与した交通事故の割合は年々増えていて、平成19年度13.1%に対して平成28年度では22.3%となっています。


高齢運転者の事故の人的要因を見てみると、脇見や考え事をしていたことによる「発見の遅れ」が最も多く、次いで「判断の誤り等」「操作上の誤り等」が続いています。注意力や集中力、判断力の衰えによる事故が目立ちます。


どんなに注意して運転していても、加齢による身体機能や判断力、注意力の低下は避けられません。これまで無事故・無違反だから大丈夫と、自分の運転能力を過信してしまうのも危険です。若い頃と同じように運転をしているつもりでも、体がついてこない、判断に時間がかかるということもあるのです。いまの自分自身の状態をよく理解した上で安全運転を心がける必要があると言えるでしょう。

運転事故を起こしてしまった場合の賠償金

もし運転事故を起こしてしまったら、被害者に対してどのくらいの費用を支払う必要があるのでしょうか。


交通事故の賠償金には、複数の項目があり、事故によって相手に与えてしまった損害によって金額が変わります。大きく分けると、治療費や休業損害、逸失利益、自動車の修理費などの経済的損害や物的損害に対して支払う賠償金と、事故によって起きた人的損害や精神的損害に対して支払う賠償金(一般的に「慰謝料」と呼ばれるもの)の2つに分かれます。


賠償金の算出基準は、自賠責保険から支払われる保険金の計算基準である「自賠責保険基準」、任意保険会社による示談交渉で使われる「任意保険基準」、そして弁護士が示談交渉するときや裁判をするときに使用される「弁護士・裁判基準」の3つからなります。どの基準で算出されるかによって賠償金の金額は大きく変わります。なかでも「弁護士・裁判基準」による算出方法だと、ほかの算出方法と比較して何倍も高くなる可能性があるとされています。


なお、賠償金の金額は、加害者が高齢者だからといって減額されることはありません。

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運転免許の自主返納という選択肢も

高齢者の運転事故が増加するなかで、高齢者ドライバーのなかには「運転免許の自主返納」という選択肢を検討する人が増えているようです。運転経歴証明書の交付数は、平成27年度の交付数236,586に対し、平成28年度では295,523と、年々増加傾向にあります。


これは、自らの意思で有効期限の残っている運転免許証を返納することで、さまざまな特典を受けられるようになる制度のこと。運転免許証を返納した方には、希望した場合返納日から過去5年間の運転経歴を証明する「運転経歴証明書」が交付されます。ちなみに「運転経歴証明書」は運転免許証と同じように公的な身分証明書として使うことができます。


免許を返納することで、車の運転はできなくなりますが、さまざまな優遇を受けることができます。優遇内容は各自治体によって異なりますが、バスやタクシーの料金割引を受けられるといった、運転免許証を自主返納した高齢者が少ない負担で交通手段を利用できる優遇もあるようです。


運転免許の自主返納を選択した人たちのなかには、「自分の運転に自信がなくなったから」と自ら返納を決断したという人もいれば、「家族から運転を続けることを心配された」という人も少なくないようです。高齢者の運転事故を防ぐために運転免許の自主返納という選択肢があることは、ドライバー本人だけでなく、家族や周囲の人も知っておくべきですね。


【出典】
防ごう!高齢者の交通事故! 警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/koreijiko.html
交通事故の慰謝料~弁護士基準と金額相場、慰謝料を増額させるためのポイント | 交通事故弁護士相談広場
https://www.jicobengo.com/damages/traffic-accident-consolation-fee.html
運転免許統計(平成28年度版) 警察庁
https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/pdf/h28_main.pdf
運転免許の自主返納をサポート 警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/shomeisho/henno.html

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