労災保険の加入条件・加入手続きや納付方法を解説

労災保険の加入条件・加入手続きや納付方法を解説

労災保険は業務上や通勤によって労働者が負ったケガや病気、死亡などに対して補償が受けられる制度です。本記事では、労災保険の加入条件や給付の種類を踏まえ、加入手続きや保険料の納付方法を紹介するので、しっかり理解しておきましょう。


本内容は、令和5年7月の制度等に基づき、記載しています。

本記事に記載の内容・条件は保険会社によって異なる場合がございます。詳しくは保険・共済各社・各団体へお問い合わせください。


労災保険とは

労災保険とは、業務または通勤中に労働者がケガや病気、または死亡した場合に、労働者やその遺族に対して保険給付がおこなわれる制度です。


労働保険のひとつ

労災保険とは、労働保険の一種です。労災保険と雇用保険を合わせて「労”働”保険」と呼びます。労災保険が適用される災害には「業務災害」「複数業務要因災害」「通勤災害」の3つがあります。


業務災害とは、労働者が業務によって負ったケガや病気、障害または死亡のことを指します。業務災害と認められるためには、業務と傷病などとの間に一定の因果関係があることが必要です。


複数業務要因災害は、複数の事業所に雇われている労働者の、2つ以上の事業の業務を要因とする病気や障害のことを指します。脳・心臓疾患や精神障害などが対象です。


通勤災害は、労働者が通勤によって負ったケガや病気、障害または死亡のことです。労働者が合理的な経路と方法で住居と就業場所などの間を移動している場合に「通勤」とみなされます。


労働者が一人でもいれば適用される

労災保険は労働者を一人でも雇っている会社であれば、雇用形態に関わらず加入義務があります。加入手続きは勤務先の会社がおこないます。


特別加入制度について

労災保険は会社に雇われている労働者を保護するための保険です。そのため、事業主や役員、自営業者は原則加入できません。


ただし一定の要件を満たす中小事業主や個人事業主など、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められた場合に労災保険に加入できる「特別加入制度」というものがあります。特別加入制度には「中小事業主等」「一人親方その他の自営業者」「特定作業従事者」「海外派遣者」の4種類があります。


労災保険給付の種類

労災保険の主な給付には次の5つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。


遺族(補償)給付

労働者が業務上の事由または通勤により死亡した場合に遺族に対して支払われる給付です。遺族(補償)給付には、以下の2種類があります。


●遺族(補償)等年金

遺族(補償)等年金は、労働者の死亡した時点でその方の収入によって生計を維持していた配偶者など、一定の要件を満たした遺族に対して支払われます。


給付金額は対象の遺族数に応じて決まります。また遺族(補償)等年金に上乗せして、遺族特別支給金(一時金)と遺族特別年金も支払われます。


遺族数 遺族(補償)等年金 遺族特別支給金(一時金) 遺族特別年金
1人 給付基礎日額の153日分(55歳以上の妻または障害の状態にある妻は175日分) 一律300万円 算定基礎日額の153日分(55歳以上の妻または障害の状態にある妻は175日分)
2人 給付基礎日額の201日分 給付基礎日額の201日分
3人 〃の223日分 〃の223日分
4人以上 〃の245日分 〃の245日分

出典:厚生労働省「遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続」


●遺族(補償)等一時金

遺族(補償)等一時金は、遺族(補償)等年金の対象となる遺族がいない場合に、一定の要件を満たす遺族に一度だけ支払われるものです。


給付金額は給付基礎日額の1,000日分です。また、これに上乗せして遺族特別支給金と遺族特別一時金も支払われます。


遺族(補償)等一時金 遺族特別支給金 遺族特別一時金
給付基礎日額の1,000日分 300万円 算定基礎日額の1,000日分

出典:厚生労働省「遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続」


療養(補償)給付

療養(補償)給付は、業務または通勤が原因でケガや病気の療養が必要な場合に支払われます。給付には「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2種類があります。


療養の給付は、指定医療機関などで治療や薬剤の服用・投与を受ける際に無料で利用できるものです。現金給付ではなく、医療そのものが給付される「現物給付」です。


療養の費用の支給は、指定医療機関など以外の医療機関や薬局で療養を受けた場合には、その療養にかかった費用が現金給付されます。


給付の対象となる費用は治療費のほか、入院料、移送費など通常療養のために必要なものが含まれ、ケガや病気が治癒するまで給付が受けられます。


休業(補償)給付

労働者が業務上または通勤によってケガや病気にかかり、療養のために仕事を休んだ場合に受けられる給付です。休業により賃金の支払いを受けられない場合に、その4日以降に支給されます。


労働災害の種類によって受けられる給付の名称は下表のとおり異なります。また本給付に上乗せして、休業特別支給金も支払われます。


労働災害の種類 給付の種類 休業(補償)給付の金額 休業特別支給金
業務災害 休業補償給付 (給付基礎日額※の60%)× 休業日数 (給付基礎日額※の20%)× 休業日数
複数業務要因災害 複数事業労働者休業給付
通勤災害 休業給付

※複数事業労働者休業給付の給付基礎日額はそれぞれの勤務先の給付基礎日額を合算した金額

出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」


障害(補償)給付

業務または通勤が原因で負ったケガや病気が治り、一定の障害が残った場合には障害(補償)給付が受けられます。


給付金額は下表のとおりです。障害等級が第1級〜7級の場合は年金の支給、第8級〜14級は一時金の支給となることを覚えておきましょう。また、本給付に上乗せして障害特別支給金と、障害特別年金または障害特別一時金も支払われます。


障害等級 給付の種類 給付金額 障害特別支給金(一時金) 障害特別年金 障害特別一時金
第1級~7級 障害(補償)等年金 障害等級に応じて給付基礎日額の313日~131日分 障害等級に応じて342万円~8万円 障害等級に応じて算定基礎日額の313日~131日分
第8級~14級 障害(補償)等一時金 障害等級に応じて給付基礎日額の503日~56日分 障害等級に応じて算定基礎日額の503日~56日分

出典:厚生労働省「障害(補償)等給付の請求手続」


介護(補償)給付

障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金を受けている方のうち、一定の障害の状態に該当する方で介護を受けている場合に支給されます。障害等級・傷病等級が第1級の方と、第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している方が対象です。


介護の種類 給付金額
常時介護 1.親族または友人・知人の介護を受けていない場合 介護の費用として支出した額
(上限:17万2,550円)
2.親族または友人・知人の介護を受けている場合 ・介護の費用を支出していない場合・介護の費用を支出しており、その額が7万7,890円を下回る場合 一律7万7,890円
・介護の費用を支出しており、その額が7万7,890円を上回る場合 支出した金額
(上限:17万2,550円)
随時介護 1.親族または友人・知人の介護を受けていない場合 介護の費用として支出した額
(上限:8万6,280円)
2.親族または友人・知人の介護を受けている場合 ・介護の費用を支出していない場合・介護の費用を支出しており、その額が3万8,900円を下回る場合 一律3万8,900円
・介護の費用を支出しており、その額が3万8,900円を上回る場合 支出した金額
(上限:8万6,280円)

出典:厚生労働省「介護(補償)等給付の請求手続」


労災保険の加入手続き

基本的に労災保険の加入手続きは事業主がおこなうものですが、どのような手続きが必要か知っておきましょう。


所轄の施設に届け出・申告する

労災保険に加入する際には「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」という書類を提出しなければなりません。保険関係成立届は、労働保険の適用事業となったとき、つまり労働者を一人でも雇ったときに提出する書類です。概算保険料申告書は、労働保険の適用事業となった年度分の労働保険料の概算保険料を申告・納付する際に提出します。


●労災保険の提出書類と期限・提出先


提出書類 提出期限 提出先
保険関係成立届 保険関係が成立した日※の翌日から起算して10日以内 所轄の労働基準監督署
概算保険料申告書 保険関係が成立した日※の翌日から起算して50日以内 以下のいずれか・所轄の労働基準監督署・所轄の都道府県労働局・日本銀行(代理店、歳入代理店でも可)

※保険関係が成立した日=労働者を一人でも雇用した日

出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」


一元適用事業と二元適用事業で異なる

労働保険の対象となる事業には「一元適用事業」と「二元適用事業」の2つがあります。


一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付などを両保険一本としておこなう事業のことで、多くの業種がこれに当てはまります。一元適用事業は、労災保険と雇用保険の保険関係成立届と概算保険料申告書を一括りで提出でき、保険料もまとめて納められます。


一方、二元適用事業は、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要がある事業のことです。農林漁業・建設業などがこれに該当し、労働保険と雇用保険の手続きおよび保険料の納付を個別におこなわなければなりません。


労災保険料の算定と納付について

労災保険料は全額事業主が負担します。そのため労働者は労災保険料について意識する機会は少ないかもしれませんが、労災保険の給付をおこなうための大切な原資です。ここでは労災保険料の算定方法と納付方法について解説します。


労働保険料の算定方法

労働保険料には労災保険料と雇用保険料の2つがあり、それぞれ料率が設定されています。労災保険料率は業種によって異なり、労働災害の発生率をもとに0.25%〜8.8%の範囲で定められています。


労災保険料は労働者に支払う1年間(4月1日〜翌年3月31日)の賃金総額に労災保険率をかけて計算します。食料品製造業で1年間の賃金総額が400万円の方の労災保険料を計算してみましょう。


労災保険料

=1年間の賃金総額×労災保険率

=400万円×0.6%

=2万4,000円


本ケースでは、2万4,000円が労災保険料の金額となりました。


労働保険料の納付方法

労働保険料は労災保険料と雇用保険料を合わせて事業主が納付します。年度当初に概算額を申告・納付し、翌年度の当初に確定申告で実際の金額との差額を精算する仕組みです。これを「年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間に手続きする必要があります。


労働保険料の納付方法には以下のものがあります。


納付の種類 納付方法
現金納付 労働基準監督署・労働局または銀行などのいずれかに出向いて、申告書とともに保険料(現金)を納付
口座振替納付 口座振替による納付。この場合、申告書の提出は労働基準監督署・労働局に出向く方法、労働基準監督署・労働局に郵送する方法、電子申請による方法のいずれでも可
電子納付 インターネットバンキングまたはATMによる納付
労働保険事務組合に委託 申告書の作成・提出と保険料の納付を労働保険事務組合に委託する

出典:厚生労働省「宮城労働局」


まとめ

会社勤めの方は雇用形態に関わらず労災保険が適用されますが、その加入手続きは事業主がおこない、保険料も事業主が負担します。そのため身近に感じにくい制度かもしれませんが、業務や通勤に起因するケガや病気に備えるための大切な制度です。


しかしケガや病気のリスクは業務中や通勤に限った話ではなく、日常的なケガや病気に個人で備えておくことも大切です。より安心して生活を送るために、民間の保険(共済)への加入も検討してみましょう。


参考:
厚生労働省 「遺族(補償)等給付葬祭料等(葬祭給付)の請求手続き」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-7.pdf

厚生労働省 「労災保険率表」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/dl/rousaihokenritu_h30.pdf

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