不動産取得税の計算方法とは?軽減措置や特例、確定申告についても解説

不動産取得税の計算方法とは?軽減措置や特例、確定申告についても解説

不動産取得税は、不動産を購入する際に課される税金です。土地や建物の種類、新築・中古、適用できる特例の有無によって、税額や受けられる軽減措置は異なります。一見すると複雑に感じるかもしれませんが、基本を押さえておけば計算はそれほど難しくありません。


今回は、不動産取得税の仕組みや計算方法、軽減措置の内容、手続きの流れなどをわかりやすく解説します。


購入前に知っておくことで、資金計画を安心して進められるでしょう。


本内容は、令和7年10月の制度等に基づき、記載しています。不動産取得税の税率、軽減措置には適用期限や地域独自の要件があり、個別の状況によって税額が異なります。必ず不動産所在地の都道府県税事務所にご確認ください。




そもそも不動産取得税とは?

不動産取得税とは、土地や家屋を取得したときに課される都道府県税です。


売買や建築、贈与などの取得方法を問わず、所有権を得た方が納税の対象となります。しかし、相続による取得は原則として非課税です。


課税標準には固定資産税評価額が用いられ、地方税法に基づいて各都道府県が課税する仕組みです。


不動産取得税の税率は原則4%で、住宅や土地には一定の軽減措置が設けられています。取得の対象には土地や新築・中古の建物、増改築によって価値が高まった建物なども含まれ、登記の有無に関わらず取得の事実に基づいて課税されます。


不動産取得税は、購入代金とは別に必要となるため、資金計画を立てるうえでも、制度を理解しておくことが重要です。

不動産取得税の計算方法と計算ツール

不動産取得税の額は、基本的に「不動産の評価額 × 税率」で計算します。税率は本来4%ですが、土地や住宅用家屋は令和9年3月31日までの取得分に限り3%に軽減される点は留意しておきましょう。


課税標準には固定資産税評価額が使われ、土地と家屋はそれぞれ別に計算します。土地には、令和9年3月31日まで、課税標準を評価額の1/2にする特例もあり、土地の税額が軽減される仕組みです。なお、評価額は、実際の購入価格や建築工事費ではありません。


例えば、住宅用の土地と家屋を取得した場合は、以下のように計算します。


区分 課税標準 税率 計算方法
土地 評価額の1/2 3% (評価額 ÷ 2)× 3%
家屋 評価額 3% 評価額 × 3%
合計 土地と家屋の税額を合計

参照:国土交通省 土地の取得に係る税制の概要(参考)


東京都においては、東京都主税局の公式サイトに不動産取得税の概算を自動で計算できるツールがあります。多くの都道府県でも同様の概算ツールを提供しており、家屋や土地の価格、取得年月日などを入力すると目安額を確認できるため、資金計画にも役立つでしょう。


※算出される額は参考であるため、実際の税額とは異なることがあります。

不動産取得税の軽減措置とは?

不動産取得税には軽減制度があり、一定の条件を満たせば税額を抑えられます。新築や中古住宅の取得、土地の利用目的などによって控除額や適用内容が異なるため、事前の確認が重要です。

住宅用地の場合

住宅用地を取得した場合には、不動産取得税を軽くするための減額制度があります。土地はもともと評価額を1/2にして税額を計算する特例がありますが、さらに税額から一定の金額を差し引くことができるのです。


不動産取得税の土地にかかる税額から差し引かれる控除額は、下記の2種類を比較し、金額が多いほうが適用されます。


  • 150万円 × 税率(3%)
  • 土地1㎡あたりの価格 × 住宅の床面積の2倍(上限200㎡)× 税率(3%)

参照:総務省 不動産取得税


前者は一律で4万5,000円減額される定額方式、後者は土地価格と住宅の床面積をもとに計算する面積方式です。


土地の価格や床面積が大きい場合は面積方式のほうが控除額が大きくなる傾向があり、反対に土地の面積が小さい場合は定額方式のほうが有利になるケースもあります。


どちらの方式が適用されるかは、自治体が計算して決定します。

新築住宅の場合

新築住宅(一戸建て)を取得した際は、不動産取得税を大きく減らせる軽減措置があります。対象となるのは、床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅です。


この条件を満たすと、以下のような優遇が受けられる場合があります。


  • 固定資産税評価額から1,200万円が控除される
  • 控除後の金額に対して軽減税率3%が適用される
  • 認定長期優良住宅の場合は、控除額が1,300万円に拡大する

例えば、固定資産税評価額が2,000万円、床面積100㎡の新築住宅を取得したケースを見てみましょう。


2,000万円 – 1,200万円 = 800万円
800万円 × 3% = 24万円

軽減なしの場合と比べて、かなりの減額になります。


また、認定長期優良住宅の場合は控除額が1,300万円に拡大されるため、同じ条件で計算すると以下のようになり、さらに税額が抑えられます。


(2,000万円 − 1,300万円)× 3% = 21万円

新築住宅に対する軽減措置は大きな効果があるため、取得前に自分の住宅が対象となるか確認しておくことが重要です。

中古住宅の場合

中古住宅を取得した場合でも、一定の条件を満たせば不動産取得税の軽減措置を受けられます。新築とは異なり、中古住宅では築年数や耐震性能などに応じて、評価額から定められた金額が控除される仕組みです。


軽減を受けるためには、次のすべての条件を満たす必要があります。


条件 内容
居住要件 取得した住宅が自分の住まいであること(住宅以外の建物をリフォームして住む場合は、取得前にリフォームが完了している必要があります)
床面積要件(※1)(※2) 50㎡以上240㎡以下であること
耐震基準要件(※3) 以下のいずれかに該当すること
①昭和57年1月1日以降に新築された住宅
②昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、新耐震基準に適合していることが建築士などによって証明されている(証明の調査は取得日前2年以内に完了している必要があります)

(※1)現況の床面積をもとに判定。登記床面積と異なる場合があります。
(※2)マンションなどの共同住宅では、共用部分の床面積を持ち分に応じて按分した面積を自分の床面積に含めます。
(※3)固定資産課税台帳(固定資産評価証明書)の建築年をもとに判定します。

参照:東京都主税局 不動産取得税


これらの条件を満たす場合、住宅の新築年に応じて評価額から一定額が控除されます。


新築された日 控除額
平成9年4月1日以降 1,200万円
平成元年4月1日~平成9年3月31日 1,000万円
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 450万円
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 420万円
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 350万円
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 230万円
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 150万円
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 100万円

(※)昭和56年12月31日以前に建てられた住宅は、耐震基準を満たしていることの証明がなければ控除を受けられません。
(※)昭和29年6月30日以前に建てられた住宅は、条件を満たしていても控除の対象になりません。
(※)住宅の価格が控除額よりも少ない場合は、その価格が控除の上限となります。

引用:東京都主税局 不動産取得税


上記2つの表は、東京都の規定に基づいています。控除額や適用される築年月の区切りは、物件所在地の都道府県によって異なる場合があるため、必ず事前にご確認ください。

軽減措置の手続き方法

不動産取得税の軽減措置を受けるには、自動的に適用されるわけではなく、原則として申告手続きが必要です。適用を受けるための手続きは、各都道府県が定める所定の窓口でおこないます。


例えば東京都の場合、住宅用地や住宅を取得して軽減措置の対象になるときは、「不動産取得税申告書」を作成し、必要書類を所管の都税事務所や支庁に申告します。


書類をもとに、都道府県が軽減措置の適用可否を審査し、納税額が決定されます。必要書類や申告期限は自治体によって異なりますが、取得後速やかに申請することが望ましいでしょう。

不動産取得税が非課税となる場合

不動産取得税には、軽減措置による減額とは別に、最初から課税対象外となる「非課税」のケースがあります。相続や法人の合併など、通常の売買とは性質が異なる取得について、重複して税金がかからないようにするための制度です。


主な対象は次のような場合です。


  • 相続による取得
  • 包括遺贈(遺言で財産全体やその一部の割合を受け継がせる方法)や遺言で相続人に不動産を譲る場合
  • 法人の合併または政令で定める分割による不動産の取得

遺言による財産移転のうち、遺言で相続人以外に特定の不動産を譲る特定遺贈は、贈与と同等に扱われ、不動産取得税の課税対象となる点にご注意ください。


例えば、親から相続で自宅と土地を受け継いだ場合は、登記をしても不動産取得税はかかりません。


会社の合併や分割などでも、登記や名義変更はおこなわれますが、非課税として扱われます。

不動産取得税に関してよくある疑問

不動産取得税は、一生のうちに何度も経験するものではないため、手続きや納税時期などで迷う方もいるでしょう。ここからは、よくある疑問について解説します。

不動産を取得したら申告が必要?

不動産を取得した場合は、取得した方が不動産所在地の都道府県に対し、条例で定められた期間内に申告する必要があります。


例えば東京都の場合は、不動産を取得した日から30日以内に「不動産取得税申告書」を取得物件の所在地を管轄する都税事務所・支庁などへ提出します。


ただし、取得日から30日以内に登記申請をしたときは、原則として申告が不要です。
取得の事実や内容をきちんと申告することは、不動産取得税の適正な課税につながります。

不動産取得税はいつ払う?

地方税法に基づき、各都道府県が発行する納税通知書に記載された期限までに支払う必要があります。

不動産取得税の計算方法を知って正しく納税しよう

不動産取得税は、土地や建物を取得した際に一度だけ納める地方税です。新築か中古か、どのような特例が適用されるかによって控除額や軽減措置が異なるため、事前に正しい計算方法を理解しておきましょう。


ここまで、不動産取得時の税金について見てきました。さて、取得した建物を守るためには万一に備える保障も重要です。建物の火災や自然災害への備えとして、建物更生共済への加入を検討してみてはいかがでしょうか。


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参考・出典元:
総務省 不動産取得税
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_17.html

国土交通省 不動産取得税に係る特例措置
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000020.html?utm_source=chatgpt.com

国土交通省 土地の取得に係る税制の概要(参考)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000072.html?utm_source=chatgpt.com

東京都主税局 不動産取得税計算ツール
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/fudosan/syutokuzei

東京都主税局 不動産取得税
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/real_estate/f

国土交通省 認定長期優良住宅に対する税の特例
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001487864.pdf

東京都主税局 不動産取得税の軽減制度について
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/13-keigen_02

東京都主税局 事務処理フロー図
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/karte24

東京都主税局 知っておきたい税金のあらまし
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/fudosan2024_02

地方税法 第七十三条の四
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226#Mp-Ch_2-Se_4-Ss_1-At_73_4

地方税法 第七十三条の十八
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226#Mp-Ch_2-Se_4-Ss_3-At_73_18

地方税法 第七十三条の十六
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226#Mp-Ch_2-Se_4-Ss_3-At_73_16

東京都主税局 あなたと都税 
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/202304_1

国税庁 No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2215.htm


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