野菜嫌いは克服しないとヤバイ!?大人も子どもも克服すべき理由と方法とは
“子育て”に関するねだんのこと
2018.03.06
子どもを持つ家庭の悩みとしてよく挙げられる「子どもの野菜嫌い」問題。「子どもに野菜をどうやって食べさせればいいのか」と悩んでいる保護者の方も多いのではないでしょうか。そんな悩みを多くの家庭と共有しているのが、小学校で栄養士をしている松丸奨(すすむ)さん。自身も野菜嫌いな子どもだったという松丸さんに、野菜嫌いの克服法を聞きました。
野菜嫌いになる理由とは
子どものときの給食を振り返ってみると、野菜嫌いの子もいれば、野菜が食べられる子もいましたよね。なぜ「野菜が食べられない子」と「野菜が食べられる子」に分かれてしまうのでしょうか。それは「舌の経験値の差」なのだと松丸さんは言います。
「原始時代、人は野や山にあるものを何でも食べていました。毒があるものや腐っているものは、酸味・苦味・無味であることが多かったため、人間は本能的にそれらの味が苦手な傾向にあります。なので、基本的にはじめから野菜を好き嫌いせず食べられる子どもは珍しいですね。食べ続けているうちに、それらの味が毒でもなく腐っているわけではないと脳で理解し、舌が経験することで食べられるようになっていくのです」(松丸さん)
つまり、子どもが野菜を苦手なのは当たり前ということ。いろんな味を知って舌の経験値を積み重ねることで、野菜を食べられるようになるということなのですね。
「だからこそ、はじめは野菜が苦手でいいと思うんです。大事なのは、そこからどうやって野菜を好きになるかを考えること。大人がそれを理解していくことが大切なんです」(松丸さん)
野菜嫌いが及ぼす影響
野菜を食べない食生活を送ると、健康上どのような問題があるのでしょうか。
「野菜に含まれる栄養素、ビタミン、ミネラルは、人間に必要なものばかりです。人間の体は、食べたものでできています。栄養素が体に入ってこないと、風邪を引きやすくなったり、頭やお腹が痛くなったりといった体の不調につながるのは当たり前。成長期は筋肉や骨など身体の基礎を作る時期です。正しく栄養を摂らないと、背が大きくならないのはもちろん、見えるところで言うと肌や髪の毛にも栄養が行き渡らなかったりといった問題も生じます」(松丸さん)
さらに、それだけではないと松丸さんは続けます。
「体だけではなく、脳も成長しているんです。脳が成長しないと、記憶力や集中力などに弊害が出てきます。野菜を食べてない子は体力もなく、集中力も続かない傾向にあります。栄養が足りていないから体が疲れてすぐに眠くなるんです。逆に小さい頃から野菜をよく食べていた子は、集中できる力があるので、勉強するくせがつきやすい。そういった意味でも、小さい頃から食べるというのは大事なんです」(松丸さん)
松丸さんは、小学校で保護者の方々に食育を教える機会があるそうですが、食事が集中力や記憶力にも関係していることまで意識できている人は少ないそうです。体の内と外の健康を守るために野菜が栄養源であるということを、大人も理解する必要があります。
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野菜嫌いの克服のための第一歩
野菜を食べないことが、健康だけでなく集中力や記憶力にも影響があることがわかりましたが、だからといって野菜嫌いは簡単に克服できることではありません。野菜が苦手な子どもが、野菜を食べられるようにするには、どんなことから始めればいいのでしょうか。
「まずは『野菜単体で食べさせないこと』を意識しましょう。サラダを食べられる人でも、いきなりキュウリだけを食べることになったら、おいしく思わない人が多いんですよ。そこで重要なのが組み合わせです。たとえば、サラダにツナが入っているだけで一気においしくなるじゃないですか。たんぱく質と野菜はとても相性がいいので、野菜だけで食べさせようとせず、たんぱく質と組み合わせて食べさせるようにすることが大事だと思います」(松丸さん)
野菜をおいしく食べられる組み合わせにするためには、「野菜の切り方」もポイントなのだそう。どんなに組み合わせが良くても食べられない大きさのままでは意味がないので、子どもの口に入る大きさに切ってあげましょう。
さらに効果的なのが「親のフォロー」なのだそうです。子どもが野菜を食べる前や食べているときに、すかさず「ほら、この野菜甘くておいしいよ」などとフォローをすることで、味に対する先入観やイメージのコントロールができるのだとか。
「野菜を食べているときに、保護者の方から『わたし、これ嫌いなんだよね』『よく食べられるね』なんて言われたら、子どもは悪い味のイメージに引っ張られてしまいます。子どもにとってはおいしい味だったとしても、保護者の一言で『本当はおいしくないのかもしれない』と悪い方向に考えてしまうことも。だからこそ、子どもが野菜を食べるときは常にフォローすることが大事です」(松丸さん)
心理的側面からの野菜嫌い克服法
もう一つ大切なのが、心理的なアプローチ方法。子どもが食事を楽しみにするための方法として、「食事の準備を手伝ってもらうこと」が効果的なのだそうです。
「小さいお子さんだったら『お箸を食卓に並べてもらう』とか、大きなお子さんだったら『フライパンで炒めてもらう』とか、『味見をしてもらう』とかもいいと思います。とにかく、食事の準備に関わらせることで、『今日はこれを食べるんだ』という楽しみを持ってもらうといいですね。自分がかかわった食事には子どもたちも食欲が出るんです」(松丸さん)
子どもは「責任感」と「決定権」を得られると、とても喜ぶのだそうです。食事の準備を手伝うことで、食に対する向き合い方が変わっていくそうです。
大人の野菜嫌い克服方法
野菜嫌いは、子どもだけの問題ではありません。最近は野菜を食べない大人も少なくないため、大人の野菜嫌いも問題視されています。
「大人の場合、長年の好き嫌いで頑固になってしまっていると思われがちですが、実は大人の野菜嫌いは直しやすいんです。子どもの頃と比べて、新鮮なものを見る目や舌のレベルが上がっているので、食わず嫌いをせずに挑戦してみてほしいです。たとえば、地方に旅行に行ったときに道の駅や直売所などに立ち寄って新鮮な野菜を買ってみるのもおすすめ。本当に新鮮でおいしい野菜は苦味や酸味などがないことに気づくはずです。苦手な野菜こそあえてとびきりいいものを食べてみると、これまでの意識が変わると思います」(松丸さん)
しかし、それでも長年根付いた苦手意識は、なかなか変えるのは難しいと思う方は少なくないはず。そういうときは、「〇〇なら食べられる」という形から始めてもいいと松丸さんは言います。
「『酸味が少なくて甘みが強いトマトなら食べられる』『こういう調理をされていれば食べられる』でもいいのです。それらを食べているうちに、もっと違うものにも挑戦したくなったら、たとえばピーマンならチンジャオロース、キャベツならロールキャベツなど、その野菜が入っているからこそおいしい料理を食べてみてください。そうやって段階を踏みながら、少しずつ苦手な野菜を克服していくようにしましょう」(松丸さん)
子どもにも大人にも共通するのは、食事を楽しむことが野菜嫌い克服の近道ということ。どんなに嫌いな野菜でも、好きになるチャンスがあるということを、ぜひ知っておきたいですね。