「生前贈与」と「相続」の違いや使い分けについてまとめてみた

“その他”に関するねだんのこと

2019.03.19

相続に関する法律「相続法」は近年、順次改正されてきています。これによって現代の社会により適した相続が期待されることとなりました。


その中でも目を引くのは平成27年に行われた改正で、基礎控除額が大幅に引き下げられました。その結果、より多くの人に相続税が適用されることとなりました。平たく言うと「お金持ちの人にしかかかっていなかった相続税が、ちょっとお金持ちの人にもかかるようになった」といった感じです。影響力を強めた相続税は、以前より多くの人から注目を集めるようになりました。


同時に、相続時の節税対策として「生前贈与」へも関心も高まっています。この「生前贈与」をうまく利用することができれば、相続税をかなりの割合で抑えることができるのです。


相続と生前贈与の違いを知り、財産を賢く守る方法について見ていきたいと思います。

贈与と相続の違い

「贈与」と「相続」、この2つはどちらも「財産を誰かに与える」方法です。もっとも大きな違いは、「その財産を“いつ”与えるか」です。


誰かが亡くなられた場合、日本の法律では亡くなられた方の財産がご遺族などに引き継がれる「相続」が発生します。一方「贈与」は、財産を渡す人が存命の間に行われます。


財産を渡すタイミングによって「贈与」か「相続」のどちらかとなるのですが、渡す財産についてはそれぞれに「贈与税」「相続税」が課せられることとなります。また、「贈与」と「相続」には各々独自のルールがあり、利用することでメリットが生まれる局面も異なっています。


「生前贈与」はその言葉通り、「生きている間に贈与を行う」ことを指し、「贈与」と同義なのですが、相続税に注目が集まる昨今では、「相続税の節税対策として行われる贈与」の意味で用いられることが多いようです。


続いて、「贈与」と「相続」の細かな違いや、それぞれの税制面について見ていきましょう。

贈与税と相続税の仕組み

まず贈与税と相続税は、基礎控除額が違います。“基礎控除”は「税金のかからない範囲」のことで、逆の言い方をすると「ある一定の額を超えると(基礎控除額を超えると)課税対象となる(税金がかかる)」ということでもあります。贈与税と相続税は「税金がかかる金額のボーダーラインが違う」のです。


それぞれの基礎控除額は、

贈与税……1年間につき110万円

相続税…3,000万円 + 600万円×相続人数

となっています。


贈与税は、1年の間なら110万円までは非課税で財産を与えることができます。


一方相続税は上記の計算式に基づいて基礎控除額が算出されます。たとえば、配偶者と子ども2人の計3人に相続する場合は、

3,000万円 + 600万円×3人

となり、合計の4,800万円が基礎控除となるわけです。このケースで、もし1億円の財産を相続するのであれば、ここから4,800万円の基礎控除を引いた「5,200万円」に税金がかけられることになります。なお、この税金がかけられる対象となる額(ここでは5,200万円)を「課税遺産総額」と呼びます。



贈与と相続は、やり方・手続きの方法も違います。贈与は原則「双方の合意で成立」するので、口約束であっても可能です(※実際に贈与を行うのであればトラブル防止のために必ず贈与契約書を作成しましょう)。別の言い方をすると「贈与する側・される側双方の意思がなければ行われない」ともいえます。


対して、相続は誰かが亡くなった時点で法律に則って必ず発生します。贈与と比べるとこちらは「亡くなった人・相続する人双方の意思に関係なく」発生するものです。もちろん、「相続権の放棄」をすることによって相続しない選択肢もありますが、順序としては「相続の発生→相続権の放棄を選択」となるので、相続は一度発生しているという解釈になります。


また、相続は法律、及び亡くなった人の意思が明確に確認できる遺言書に基づいて進められます。もし遺言書に不備があると、相続が亡くなった方の希望通りに進められない可能性があります。意思を反映するために正確な遺言書が必要とされる相続に対して、贈与はいくらか手間が少なく「贈与したい相手に確実に、自分のタイミングで贈与する」ことができます。


さらに「財産を与える相手」に関しても、贈与と相続では違ってきます。贈与は、贈与したい相手を自由に選ぶことができますが、相続は後述する「法定相続人」に財産を譲り受ける権利が与えられます。法定相続人は配偶者や子どもなどの親族で構成されるので、相続は基本的に親族を対象として財産を譲り渡すシステムです。遺言に則って親族以外に財産が譲渡されることもありますが、その場合は相続ではなく“遺贈”といいます。


生前贈与と相続、使い分けは?

最後に、それぞれの税率を参照しながら生前贈与と相続の使い分けについて見ていきましょう。


まずは相続税の税率から。相続の場合、基本的に財産は配偶者や子どもなどの法定相続人に受け継がれます。「法定相続人」とは、法で定められた「財産を相続する権利を持っている人」のことを指します。また、法定相続人が複数いる場合は、「法定相続分」という決められた割合に従って、財産が分けられます。ここでやっと、国税庁が公表している速算表を使って「相続税がいくらかかるか」を算出することができます。


国税庁の速算表は以下の通りです。


法定相続分に応ずる取得金額が、

1,000万円以下……税率10%、控除額は無し

3,000万円以下……税率15%、控除額は50万円

5,000万円以下……税率20%、控除額は200万円

1億円以下……税率30%、控除額は700万円

2億円以下……税率40%、控除額は1,700万円

3億円以下……税率45%、控除額は2,700万円

6億円以下……税率50%、控除額は4,200万円

6億円超……税率55%、控除額は7,200万円



この表に従って、「1億円の資産を妻と長男、長女の計3人で相続する場合」の具体例を見てみましょう。


1億円の資産に対する基礎控除額が、先ほど計算しました通り4,800万円です。1億円からこれを引いた5,200万円が課税遺産総額となります。

この5,200万円を、法定相続分に従って分配します。この相続の場合ですと、

妻が2分の1

長男が4分の1

長女が4分の1

という割合で定められていますので、

妻が2,600万円

長男が1,300万円

長女が1,300万円

となりました。


ここで先ほどの速算表の登場です。表に当てはめてそれぞれの相続税を求めてみましょう。

妻の場合……2,600万円×15%(税率)-50万円(控除額)=340万円

長男の場合……1,300万円×15%(税率)-50万円(控除額)=145万円

長男の場合……1,300万円×15%(税率)-50万円(控除額)=145万円

これで相続税がいくらかかるのか計算することができました。相続税の合計は「630万円」です。



次に贈与税の税率です。贈与税を算出する際、利用者は「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらかを選択することになります。


暦年課税は、基礎控除額110万円が用意されている、先ほどご紹介したものです。110万円を超える贈与には次の表に従った税が課せられます。


「一般贈与財産用」(一般税率)

基礎控除110万円を引いた後の金額が、

200万円以下……税率10%、控除額は無し

300万円以下……税率15%、控除額は10万円

400万円以下……税率20%、控除額は25万円

600万円以下……税率30%、控除額は65万円

1,000万円以下……税率40%、控除額は125万円

1,500万円以下……税率45%、控除額は175万円

3,000万円以下……税率50%、控除額は250万円

3,000万円超……税率55%、控除額は400万円



なお、祖父母・父母から、その年の1月1日で満20歳以上の子・孫に贈与する場合は、下記の「特例贈与財産用」(特例税率)の表に従って税率が決まります。上記の一般税率は「特例税率以外のもの」です。


「特例贈与財産用」(特例税率)

200万円以下……税率10%、控除額は無し

400万円以下……税率15%、控除額は10万円

600万円以下……税率20%、控除額は30万円

1,000万円以下……税率30%、控除額は90万円

1,500万円以下……税率40%、控除額は190万円

3,000万円以下……税率45%、控除額は265万円

4,500万円以下……税率50%、控除額は415万円

4,500万円超……税率55%、控除額は640万円



ではこれに従って、先ほど相続税を計算する際に用いたケースに当てはめて贈与税を計算してみましょう。先の例は「資産1億円を、妻と長男、長女の3人に相続する」場合で、相続税の合計は630万円でした。なお長男、長女は贈与する年の1月1日時点で成人しており、資産の総額を「妻2分の1、子どもに4分の1ずつ」贈与するとします。


すると「妻5,000万円、長男と長女が2,500万円ずつ」で、ここから基礎控除額の110万円をそれぞれ引き、「妻4,890万円、長男と長女が2,390万円ずつ」となりました。この金額に課税がなされます。先ほどの表を使って税率を計算してみましょう。妻は「一般贈与財産用(一般税率)」を、長男と長女は成人しているので「特例贈与財産用(特例税率)」を用います。


妻……4,890万円×55%(税率)-400万円(控除額)=2,289.5万円

長男……2,390万円×45%(税率)-265万円(控除額)=810.5万円

長女……2,390万円×45%(税率)-265万円(控除額)=810.5万円



この式で求められた数字が贈与税の額です。合計は「3910.5万円」となりました。相続税に比べると圧倒的に大きな金額になっているのがわかります。税率としては相続税より贈与税のほうが高いのです。


しかし贈与税には暦年贈与の基礎控除額110万円の非課税枠があります。110万円を10年間に渡って贈与しておけば、理論上は合計1,100万円は税金をかけられることなく渡すことができます。また、生前に財産を減らしておけば相続時の税金を減らすことにもつながります。


贈与税の「相続時精算課税制度」では、2,500万円の特別控除が用意されていて、この金額内であれば非課税で贈与することができます。ただし贈与時には非課税ですが、この制度を利用して贈与された財産に対しては相続が発生した際に相続税がかけられます。また、2,500万円を超えた贈与分に対しては一律20%の課税がなされます。


相続時精算課税制度には「一度利用すると暦年課税を二度と利用できない」「小規模宅地等の特例が受けられなくなる」「不動産の贈与を行う場合、不動産取得税と登録取得税のかかり方が相続税に比べて高くなる」などのデメリットがありますが、よく検討して行うことで有効活用ができます。


~相続時精算課税制度を活用したほうが良いケース~

◆将来的に(相続時に)確実に値上がりを見込める財産がある

不動産や株式などが今後確実に値上がりしそうな財産はこの制度を活用しましょう。相続時に相続税が発生しますが、この税は「相続税発生時」でなく「贈与時」の時価に対してかけられて計算されます。1,000万円の土地を贈与して、この土地が相続時に2,000万円に値上がりしていた場合、相続税は1,000万円に対してかけられるのです。


◆家賃収入などの収益を上げられる財産がある

収益は所有者の手元に入ってきますので、早めに渡しておいた方が贈与した相手の手元にその収益をより多く入れさせることができます。たとえば毎年100万円の収益を生むアパートを贈与する場合、10年後にしたら「100万円×10年」で1,000万円が贈与する側の手元に残りますが(この1,000万円は相続税の課税対象となります)、今年贈与しておけば10年後にはその1,000万円を贈与される側の手元に残すことができる(相続税の課税対象から外すことができる)のです。


なお、同居している自宅などを贈与してしまうと、相続時の優遇措置が受けられる対象から外れ、節税対策としては不利です。


これらのことを踏まえ、状況を加味しながら贈与と相続、どちらが節税対策となるかを選択していきましょう。


参考:
中野相続手続センター 相続税の税額の計算方法
http://www.tokyo-intl.com/category/1614446.html

国税庁 相続税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

中野相続手続センター 法定相続人と法定相続分とは?
http://www.tokyo-intl.com/category/1586567.html

遺産弁護士相談広場 相続人の優先順位~法定相続人が兄弟・子ども・孫・祖父母などの順位パターン
https://www.souzokuhiroba.com/wakekata/heir-priority.html

国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

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