子どもがかかりやすい病気は?現役医師が原因と治療費を解説


子どもが突然病気になったときに、どう対処すればいいかわからないという方は多いのではないでしょうか。実は、子どもの年齢によって注意するべき病気の傾向は異なります。今回は、細部小児科クリニックの院長・細部千晴先生にインタビュー。「大人と同じ対処法でいいのか」「病気にかからないために気をつけることは」「年齢の違いによってどんな病気にかかる可能性があるんだろうか」そんな心配を解消できるよう、子どもの病気についてまとめました。


PROFILE
細部千晴 細部小児科クリニック院長
2008年、細部小児科クリニックとして細部医院より独立開業。東京保険医協会理事、一般社団法人Plus Action for Children理事として子育て環境を少しでもよくするための活動を行う。診療所併設の子育て支援広場を持ち、日々診療に携わるかたわら、ペリネイタルビジット(出産前・出産後小児保健活動)や、思春期外来等で地域の子育てを応援している。


「子ども」と「大人」、病気の特徴の違いは?

病気に関する、大人と子どもの特徴の違いとは何でしょうか?「1つ言えるのは、大人に比べて子どもの方が免疫力が弱いということです」と細部先生は語ります。


「生まれたての子どもはこの世界を初めて見て、初めて呼吸し、すべての体験が初めてです。ばい菌やウイルスも初めて出会うものばかりです。大人に成長するにつれて、いろいろな環境でばい菌やウイルスに対処していくことで体の中に抗体がつくられ、それが免疫となって病気に強い体にします。


しかし、子ども(なかでも乳幼児)は免疫力が弱く、大人と比べて、病気にかかりやすい傾向にあります。生まれてから3~5才くらいまでは、特に病気への意識は敏感でなければなりません」



子どもの医療費は地域により大きく異なる


子どもの医療費はどれくらいかかるものなのでしょう? 細部先生によると、「地域の自治体における医療費の助成状況による」とのこと。具体的に「いくらかかります」と、一概には言えないのが実情なのです。


たとえば東京都内でいえば、東京23区エリアは子ども医療費が非常に充実しており、ほとんどの地域で、一定の年齢までの間は無料で医療が受けられます。しかし、都内でも23区以外のエリアでは窓口で200円が必要な地域や、助成を受けるのに所得制限がある地域がまだ残っています。


「医療費助成が充実している市町村とそうではない市町村では、入院費、また外来費についても差があります」(細部先生)


都道府県によっても子どもの医療費助成の体制はまったく異なるのです。


どの地域がどの程度の医療費助成をしているのかは、下記のような厚生労働省の公開している資料で確認できます。自分の住んでいる地域はどの程度の助成が受けられるのかを調べることで、かかりそうな医療費を考慮して予め計画的に準備しておきましょう。


▼全国の市区町村における乳幼児等医療費援助の実施状況(厚生労働省ホームページ資料)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/0000213128.pdf

▼都道府県における乳幼児等医療費援助の実施状況(厚生労働省ホームページ資料)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/0000213127.pdf


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【年齢別】子どもがかかりやすい病気の傾向


ここからは、0才~12才までの子どもがかかりやすい病気や特徴、その対処法について紹介します。年齢によってどんな違いがあるのでしょうか?


0才~2才の子どもの病気と特徴

先ほど述べたとおり、生まれてすぐの子どもは免疫力が低い傾向にあります。0才の子どもは特に免疫力が弱く、ちょっとしたばい菌やはじめてのウイルス感染により病気にかかってしまいます。


また、保育園に通い出すと「集団生活」が始まり、関わる人(子どもや先生など)も増えます。外出する機会も増えるでしょう。すると周囲からいろいろなウイルスや、ばい菌をもらいやすくなるのです。この年代は集団生活での感染リスクが高く、自宅や外出先での衛生面など、環境には常に配慮しましょう。


「特にこの年代で病気の原因となる多くは、細菌やウイルスです」と細部先生は言います。


この年代でかかりやすい病気はいくつかありますが、「『ワクチンで予防できる病気』と『ワクチンで予防できない病気』があります」(細部先生)


■ワクチンで予防できる病気の例


  • 麻疹(はしか)
  • 風疹(三日ばしか)
  • 水疱瘡(みずぼうそう)
  • おたふくかぜ
  • 結核
  • 百日咳
  • 破傷風
  • A型肝炎 . B型肝炎
  • 髄膜炎菌感染症(肺炎球菌.ヒブ菌.髄膜炎菌など)
  • インフルエンザ
  • 日本脳炎 など

■ワクチンで予防できない病気の例


  • 手足口病
  • りんご病
  • かぜ症候群
  • 突発性発疹
  • プール熱
  • 溶連菌感染症
  • とびひ
  • ヘルパンギーナ など
  • RSウイルス感染症

実は、ワクチンには推奨される接種時期があります。


「種類によって期間は違いますが、たとえば、生まれて最初の2ヶ月間は接種時期として推奨されていません。打つことによって悪影響があるからではなく、ワクチンによっては打っても機能しないからです。


乳幼児はお母さんの免疫をもらって生まれてきます。その免疫は生後6ヶ月ごろになくなってしまいます。そのため、免疫が弱まる前の早期に予防接種を完了することが大切なのです」(細部先生)


たとえば「麻疹(はしか)」の場合は、1才の誕生日を迎えたタイミングでMRワクチンという予防接種が推奨されています。「どのワクチンをいつ接種すればいいのか?」は種類によって異なるため、受けたい種類の推奨時期を調べて受けると良いでしょう。


いずれの病気も悪化するとかなりの重症になったり、入院しなければならなくなったりします。赤ちゃんの場合はとくに、症状の軽いうちに早めにかかりつけ医に診てもらっておくと安心です。


また医療費については、差額ベッド代だけでなく、親の通院費ならびに仕事を休むことによる給料減額リスクも考慮しなければいけません。すぐに治療できるよう、仕事のスケジュールや金銭面には余裕を持っておくと安心です。


3才~5才の子どもの病気と特徴

保育園や幼稚園で集団生活をすることは、ある側面から見れば「病気にかかりやすくなるので、気をつけなければならない」のですが、別の角度から見れば「周囲からウイルスや、ばい菌をもらいやすい分、免疫力が強化される」とも言えます。その結果、0~2才から集団生活をしてきた子どもは3才頃から風邪を引きにくくなります。とはいえ、気をつけなければいけない病気は、下記の例のように多くあります。


■3才~5才でかかりやすい病気の例


  • 熱中症
  • 虫刺症
  • 汗も
  • 便秘症
  • 咽頭炎
  • 気管支炎
  • 胃腸炎
  • 熱性けいれん
  • 気管支喘息
  • アトピー性皮膚炎
  • アレルギー性鼻炎(花粉症)
  • 百日咳 など

これらは0~2才の子どもがかかりやすい病気とも共通しています。中でも、入院や大病につながりやすいものは、熱中症、便秘症、気管支炎、胃腸炎といった病気が重症化した場合です。比較的軽い症状のうちに病院にかかるように注意しましょう。


さらに、「意外と気をつけなければいけないのは『便秘症』です」と細部先生は言います。


「便秘は軽い病気ではありません。便秘の疑いがあるときは、早めにかかりつけ医に相談をしてください。赤ちゃんのうちは便秘がわかればすぐに病院に連れてくる方が多いです。しかし、3才以降になってくると、『たかが便秘でしょ』と危機意識が薄れ、医療機関に連れてこない、もしくは医療機関に連れてくるまでの時間が延びる傾向にあります。


便秘は腸が詰まり、働きを悪くします。それだけでなく、便秘を放っておくと、毎日浣腸(かんちょう)を使わないと便が出せなくなることもあります。子どもが毎日排便できる環境を整えてあげてください」


また、3才から医療費がかかる自治体もありますので、医療費の負担増に備えることも大切です。


6才~12才の子どもの病気と特徴

6才にもなると、保育所や幼稚園などの集団生活を経て、ウイルスや、ばい菌をもらったり、いくつかの病気にかかったりすることで免疫力が高まり、3〜5才の時よりも風邪や病気にかかりにくい体になります。しかし油断はできません。


細部先生は次のように語ります。
「風邪や病気にかかりにくくなるとはいえ、6才~12才の子どもは免疫力が高まり風邪をひかなくなった分、『慢性疾患』を患う可能性があるため、十分注意しなければなりません。慢性疾患とは、喘息、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)といった、慢性的に症状の続く病気のこと。これは6才~12才の子どもに限った話ではなく、0〜5才の子どもでも発症する可能性も大いにあります。


ただし慢性疾患の種類によって好発年齢(発症しやすい年齢)が異なってきます。


たとえば、食物アレルギーは0~2才の頃から発症しやすい傾向にあります。卵、小麦、牛乳や魚介類など種類はさまざまですが、乳幼児の頃からあらゆる種類の食物を摂取しておくことで、成長するにつれて発症しにくくなるのです。そのため、食物アレルギーに関しては大人になるにつれて発症頻度が少なくなっていきます」


この他にも、眼ならアレルギー性結膜炎、鼻ならアレルギー性鼻炎などを発症する可能性は大いにあると言えます。


子どもの免疫力は大人に比べて弱いため、すぐに病気にかかってしまいます。子どものいつもと違う様子を感じとったらすぐにかかりつけ医に診てもらうことが、子どもの健康を守るために非常に重要になります。


さらに病院での入院、外来の医療費は、乳幼児等医療費助成の実施状況に差があることから、どちらも地域によって大きく異なってきます。そのため、お住いの自治体の医療費助成制度を確認するなど、事前に確認しておくのが良いでしょう。少しでも知識を身に着けて、子どもが病気になったときにも冷静に対処できるようにしておきましょう。



参考:
東京保険医協会 予防接種・子ども医療費助成データ(2018年12月)
https://www.hokeni.org/data-docs/2018121200016/

厚生労働省 全国の市区町村における乳幼児等医療費援助の実施状況
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/0000213127.pdf


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