老後は保険を活用すべし!老後資金をバランスよく確保する方法

「老後破産」や「下流老人」など、定年を迎えてから生活が困窮する高齢者が社会問題となっています。高齢者が総人口の4分の1を占め、今後もさらに増え続けると言われている中、「年金暮らしで悠々自適」は、もはや昔の話。いざそのときを迎えて困らないためにも、今のうちから備えておきたいものです。とはいえ、ただ闇雲に貯めるだけでは、見込み違いの結果を招いてしまうことも起こり得ます。そこで、フィナンシャルプランナーの伊藤亮太さんに、老後資金をバランスよく確保する方法について伺いました。

老後に必要な金額を把握することが、老後資金確保への第一歩

老後資金を確保するうえで、まず確認しておきたいのが「いくら蓄えておけば安心か」という指標です。
総務省「家計調査年報(平成27年)」によると、2人以上の高齢者無職世帯における毎月の実収入平均は、社会保障給付19万4874円を含む21万3379円。対して、毎月の支出額は27万5706円で、月の収支が6万2327円不足しています。
仮に65歳から90歳の25年で考えると、「6万2327円×12カ月×25年」で、約1870万円もの赤字という計算に。つまり、定年後に夫婦ふたりで生活するためには、あらかじめ1870万円ほど蓄えておく必要があるということになります。


ただ、これはあくまでも平均値の話。伊藤さん曰く、「ゆとりある生活を望むのであれば、月に35~37万円必要というデータもあります」とのこと。月37万円でシミュレーションすると、次のようになります。


※65歳から90歳の25年間で、毎月の収入21万3379円、毎月の支出37万円とした場合


収入:21万3379円×12カ月×25年=6401万3700円

支出:37万円×12カ月×25年=1億1100万円

不足:4698万6300円


「定年退職後も一定水準の生活を維持するには、少なくとも毎月25~30万円は必要です。そのため、老後は最低でも1870万円ほど、ゆとりある生活を送ろうと思うのであれば約4700万円の蓄えが必要ということになります」(伊藤さん)


1500万~1700万円ほどであれば、退職金や計画的な貯蓄でまかなえる可能性はありますが、退職金が減額される恐れがないとは言い切れません。また、年金自体もいくらもらえるのかわからない将来、場合によっては老後の生活費のほとんどを準備しなければならないことも想定されます。そのため、「必要とされる金額以上の資金をいくら準備できるかで、老後の楽しみや生活は大きく変わります」と、伊藤さんは警鐘を鳴らします。

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老後資金の確保におすすめな“資産形成”

では、老後に必要となる資金をバランスよく確保していくには、どうすればいいのでしょうか?


「そこで注目したいのが、資産形成です。老後資金の資産形成を図る場合には、貯蓄型保険、NISAや確定拠出年金などをうまく利用することを検討してみましょう」と伊藤さん。


貯蓄型保険においては、低解約返戻金型終身保険や養老保険などいくつかのタイプがあるため、目的に合わせて選ぶことが大切となります。なかでも、老後資金を目的とした「個人年金保険」には、「定額個人年金保険」と「変額個人年金保険」の2種類があり、確実性か、運用で増やしたいかで、選び方は異なります。


払い込んだ保険料が積み立てられ、決まった年齢になると年金として受け取れる「定額個人年金保険」であれば、保険料の支払い時に将来の年金額を確定することができます。そのため、将来設計がしやすいというメリットがありますが、インフレに対応していないため、大幅な物価上昇が起こった際に、実質的な資産価値が目減りする可能性があります。
一方で、株式や債券などで資産を運用する「変額個人年金保険」は、運用結果によって年金額が異なるものの、インフレ対応が可能となります。


また、少額投資非課税制度の「NISA」では、年間で120万円までの投資に対し、最長で5年間運用益が非課税となり、「確定拠出年金」は、運用時の利益には課税されずに、老後に運用資金を受け取れます。そのため、通常の資産運用よりもメリットが大きいといえます。ただ、一般的にリスクが高い商品ほどリターン(利益)も高くなり、リスクが低い商品ほどリターンは小さくなるため、毎年どれぐらいの利益を得たいのか、将来どのぐらいの資産を構築したいのかで、どの金融商品の配分を多くしていくのかを見極める必要があります。


「確実に行くなら個人年金保険がおすすめです。ただ、将来のことは誰もわからないものの、日本銀行の『2%の物価安定目標』が続くこと、人件費の上昇や輸入物価の上昇などが将来的にインフレへと導く可能性は否定できないことを考慮すれば、投資型年金による運用も一理あると考えることができます」(伊藤さん)


老後に備える貯蓄型保険は、特徴を理解して選ぼう

「個人年金保険」以外の貯蓄型保険においても、それぞれの特徴やメリットデメリットをしっかりと把握し、目的に合わせて選ぶことが大切となります。主な特徴は次の通りです。


【低解約返戻金型終身保険】

終身保険の一種。一生涯の保障や死亡保障がついているうえ、支払った保険料の一部が積み立てられていく。払込み完了後は返戻率が高くなるため、長期的な資産運用に適している。ただ、保険料の払い込みが完了する前に解約すると、返戻率が低くなる。そのぶん保険料はほかの終身保険より安い。


【養老保険】

生命保険の一種。保険期間中に死亡した場合、死亡保障が受け取れる。また、満期に達した際は、死亡保障金と同額の保険金が受け取れる。死亡保障と老後資金を同時に確保したい人におすすめ。


【変額保険】

保険会社の運用実績によって解約返戻金などの金額が変化する、投資性のある保険。不利益が生じた際でも、保険会社の定める最低の保険金は受け取れる。投資信託などに比べると投資性は弱いが、保険がメインの上で投資もしたいという人には向いている。


伊藤先生によれば、「保険は強制的に貯められるので、気づいたら老後資金が確保できている点がメリット」とのこと。着実に貯めたい人や、元本割れをしたくない人には「貯蓄型」、着実に積み立てていきたい人は「個人年金保険」、資産を増やしたい人であれば「投資型」や「NISA」などが向いているそうです。


「老後資金を着実に貯めていくには、こうした資産形成方法をうまく利用し、長期投資を心掛けることです。できる限り早めに始めることが、老後資金への不安を解消できる近道といえます」(伊藤先生)


参考:
保険コネクト

取材協力:
ファイナンシャルプランナー 伊藤亮太
慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。その後証券会社にて、営業、経営企画部門等を経て、独立系FP会社「スキラージャパン株式会社」設立。現在はスキラージャパン株式会社では法人の資産運用などのアドバイスを、伊藤亮太FP事務所代表としては、富裕層の資産運用や資産管理、個人の資産設計などに携わっている。執筆・講演も金融機関をはじめ多岐に渡る。

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